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2021.7.20

「君が今、生きてここにいてくれたら」大切な人の自死を経た著者が贈る長編エッセイ『逝ってしまった君へ』

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キーワード: ノンフィクション エッセイ 自死

「君が今、生きてここにいてくれたら」大切な人の自死を経た著者が贈る長編エッセイ『逝ってしまった君へ』

それでもあなたがこの世界にいてほしい理由。

2019年1月。

私は、古い友人のひとりを失った。

友人は突然、自らの意思で死を選んだのだ。

彼は私の大切な友人でもあり、私のはじめての恋人でもあった――

 

作家として声優として活躍中のあさのますみ氏。

2020年3月、自らの意志で死を選んだ友人についてのエッセイを「note」に掲載し大反響を呼びました(「cakesクリエイターコンテスト2020」受賞)。

「大切な人の自死」「遺された人々の想い」を綴った当作は、「鬱」「自死」といった昨今の深刻な社会問題を扱いながらも、「それでも君がこの世界に必要な理由」を切実に訴えるものでした。

この度、当作を大幅に加筆しまとめた長編エッセイ『逝ってしまった君へ』を書籍化!

«私の職業は、声優。人気商売です。誰かに選ばれれば仕事があるし、誰にも選ばれなければ、その日の仕事はなし、収入もゼロ。そんな仕事です。

〔中略〕

声優になって二十年、自分で自分を活躍していると思ったことは、ただの一度もありません。私の周りには、常に私より選ばれて、忙しそうにスタジオを飛び回っている人がいる。対して私は、いつでもフル稼働、というわけでは決してない。

そういう自分を、たまらなく不甲斐なく思うこともあります。選ばれない日が続くと、「どこがいけないんだろう」と足りない部分ばかり数えて、自分じゃない誰かを眩しく感じることもあります。もしも仕事がなくなってしまったら、今私の周りにいる人たちは、きっと全員いなくなってしまう――そう想像して、人生の軸を奪われるような恐怖に襲われることもあります。自分がなんの価値もない存在に思えて、恥ずかしく、情けなく、涙が出てしまったこともありました。

でも。君を失って私は、本当にギリギリのところで、こう思えるようになりました。「いや、そうじゃないんだ」と。

君が遺したメモには、仕事に関する不安が、たくさん書いてあったでしょ。「今の仕事を失ったらなにもない」「この会社でしか働けない」「周りの人たちが離れていく」――それはまさに、私がいつも思うことで、だからこそ、そうじゃないのに、と叫びたくなりました。全然そんなことない、そもそも君の素敵なところは、そんなことではちっとも測れないのに。

私は、何度も、何度も、何度も、何度も――数えきれないくらいたくさん、時には涙を流しながら「君が今、生きてここにいてくれたら」と思いました。そうしたら、君が「もうわかったよ」と言うまで、言葉を尽くして、そうじゃないってことを伝えるのに。

どんなに願ってもそれが叶わなくなってしまった今、私は代わりに自分自身に、こう言い聞かせます。

「たった一つのものさしで自分を測ることに、意味なんてない」

あまりにありふれた言葉で、陳腐に感じるかもしれません。でも私は、君に伝えたかったと心の底から思ったとき、この言葉が生まれてはじめて、実感をともなって腹に落ちました。そしてそのことで、ともすると見失いがちだった自分自身を、取り戻すことができました。私はそれを、君を失ったことで得た「強さ」だと思っています。»

(本文より)

 

あさの氏が体験した、恋人の「自死」。

大切な人を失って初めてわかる、大きな悲しみと日々の「気づき」。

遺書にあった自らに向けたメッセージ、告別式、初めての「遺品整理ハイ」・・・そして「君」を失った悲しみの中で見つけた一つの光。

あまりにも突然で悲しい出来事を経た「遺(のこ)された人々」のその想いを、逝ってしまった「君」への手紙の形で綴る。

日々悲しみの中にいるあなたにこそ読んでほしい、大切な人へ向けた祈りに満ちた随想録。

 

『逝ってしまった君へ』

著/あさのますみ

【著者プロフィール】

秋田県出身。國學院大学卒業後、声優に。趣味はカメラ。2007年、はじめて書いた創作物が小学館で大賞を受賞。それをきっかけに、声優業は『浅野真澄』として、文筆業は『あさのますみ』として、名義を分けて仕事をするように。現在、猫や鳥と暮らしながら、二足の草鞋で活動中。

 

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