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2019.10.1
冴えない男子が飛び込んだ厳しくも魅力的な芸事の世界。『いのち短し、踊れよ男子』
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日舞の名取でもある著者がリアルに描く、恋と友情の花道青春小説!
陰キャの非モテ男子・駿介はある日、西浅草にある生涯学習センターで、日本人形のような美少女・清香に声をかけられる。
これから二階のホールで日本舞踊の発表会をやるから見ていかないかという。
俊介は日舞がなんなのかよくわからなかったが、清香のあまりのかわいさに惹かれ、会場に向かった。
演目は「吉野山」。
静御前役・早川清香(18歳)、佐藤忠信役・椿吉樹(19歳)。
‹‹最初は清香ちゃんのことばかり見ていたのに、何故だか椿吉樹のこともチラチラと気になってしまった。自分でも気持ち悪いが、時折こいつの些細な動きや目線がドキッとするくらい色っぽく見えるのだ。それは清香ちゃんとは全く別の、男の色気だった。端的に言えば「格好良い」。男が男の役を演じているはずなのに、つい見惚れてしまう。見れば見るほどに、徐々に椿吉樹の方に目線が移ってしまいそうだった。››
華やかな舞台で堂々と踊る吉樹に比べて、まるで冴えない自分・・・・・・。
やはり、清香のような高嶺の花は、容姿端麗で精彩を放つ男を選ぶのだろう。
清香に「私は、自分より踊りの上手い人が好きなんです」と言われた駿介は、微かな望みに賭け、二人がいる日舞教室に入門することを決意する。
‹‹「じゃあ、今日から一緒に頑張りましょうね。最初は分からないことだらけだとは思いますが、早く上達できるように私も全力で教えていきますから」
「は、はい・・・・・・」
先生の横で、清香ちゃんが嬉しそうに俺を見ている。姉弟子と、一口に言っても経験年数は十年近く違う。彼女に認められるレベルになるまで、一体どれほどかかるだろう。
清香ちゃんの隣では、先生の実の息子――吉樹が刺すような目線で俺を見ていた。氷のような目だ。瞳の奥は透き通っているようでいて、しかし屈折しているようにも見える。俺に対してどういう感情を抱いているのか、さっぱり分からない。最初に見た時から狐みたいな奴だと思っていたが、その印象は二ヶ月近く経った今も変わらない。
――こんなお坊ちゃんに負けてたまるか。››
下心たっぷりの稽古通いを始めた駿介に、容赦なく欠点を指摘する吉樹。
駿介は吉樹の姉・瑛利香に頼んで猛特訓を開始。
めきめきと腕を上げ、吉樹と二人で踊る「二人猩々(ににんしょうじょう)」に取りかかる・・・・・・。
次第に、厳しくも魅力的な芸事の世界に魅せられていく駿介――。
はたして、駿介は清香のハートを射止めることができるのか?
藤間流・日舞の名取でもある著者がリアルに描く、恋と友情の花道青春小説!
著/安倍雄太郎
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