お知らせ
2019.8.24
板前の父と探偵の娘が、優しさと温かい料理でお迎えします。『鴨川食堂まんぷく』
この記事は掲載から10か月が経過しています。記事中の発売日、イベント日程等には十分ご注意ください。
思い出の「味」、探します。京都発!おいしいミステリー最新作。
京都の不思議に触れる新シリーズも登場!!
亡き妻・掬子(きくこ)に見守られながら、娘のこいしと食堂を営む鴨川流(かもがわ・ながれ)。
京都にあるこの看板のない食堂は、食専門の探偵業もやっている。
訪問客が探しているのは、忘れられない思い出の味。
今日もまた、彼らのもとに迷い人がやってきた――――。
‹‹「探していただきたいのは、このスパゲティなんです」
写真を指さして馨(かおる)が高い声をあげた。
「たらこスパゲティですか。家内の好物やったんで、よう作りましたわ」
「このかたが奥さまですか?」
馨は、スパゲティを前にしてにっこりと微笑む掬子の写真に目を向けた。
「亡くなる二年ほど前の写真ですわ。まだこのころはふっくらしとったな」
流が目を細めた。
「こんなにお若いのに、お亡くなりになったんですか」
驚いた顔を馨が流に向けた。
「人の生き死には、よう分からんもんです。あなたもわしも、明日死ぬかもしれんし、百まで生きるかもしれん。そう思うて生きてんとあかんということですやろな」
そう言って、流はまた奥に向かって廊下を歩きはじめた。
流れがつぶやいた言葉を胸のなかで繰り返した馨は、しばらく立ちすくんでいたが、慌てて流のあとを追った。
突き当たりのドアを流がノックすると、すぐにドアが開いて、こいしが顔を出した。
「どうぞお入りください」
「あとはこいしにまかせますんで」
くるりと向きを変えて、流が戻っていった。››
第一話 幼馴染が成人式に作ってくれた「たらこスパゲティ」・・・・・・アイドルのもう一つの顔
第二話 罪の意識と引き離せない「焼きおにぎり」・・・・・・若き日の過ちと向き合う
第三話 いつも励まされた糟糠の妻の「じゃがたま」・・・・・・別のソースは使わんでええ
第四話 学校で問題を起こす息子が愛する祖母の「かやくご飯」・・・・・・おばあちゃんのごほうび
第五話 過去、泣きながら食べた「カツ弁」・・・・・・列車の中で流した涙
第六話 家族を捨てた父が最後に作った「お好み焼き」・・・・・・どうして置いていったの
連続ドラマ化もされた〝おいしい小説〟第六弾!
心の奥にしまっていた後悔を、再現された料理とおもてなしで解きほぐします。
看板のない食堂の扉を、そっと開けてみてください。
帯コメントは女優の忽那汐里さん。
「とても心があたたかくなり、母の肉じゃがが食べたくなりました」
著/柏井 壽
☆ 『鴨川食堂』著者が贈る新シリーズ開幕!
京都にまつわる不思議な体験、してみませんか?
英国人ミステリー作家のカール・エビスは、京都の名門・京洛大学に招かれ、日本文学の教鞭を執っている。
その傍ら、次回作執筆の取材と称して、助手を務める九条葵と京都の街を練り歩く毎日だ。
日本通だと思っていたカールだが、京都では驚いてばかりいる。
あとをつけていた女性が突然消えてしまったり、〈六道の辻〉の案内人である年齢不詳の老婆と出会ったり。
英国人ミステリー作家と貴族のお嬢様が、千年の都で冥界散歩!
著/柏井 壽
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