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2021.8.26

才能がないものにとって、今の世はディストピア。橘玲著『無理ゲー社会』

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キーワード: 政治 ディストピア 君の名は。 天気の子 格差社会 経済

才能がないものにとって、今の世はディストピア。橘玲著『無理ゲー社会』

あなたが生きづらいのはあなたのせいじゃない。

「年収は200万に届かないくらいです。家賃、光熱費、食費で手一杯で、住民税や国保、年金が払えません。早く自分なんて消えてしまいたいけど親がいるうちの自死は親がかわいそう」(千葉県・30代)

「非正規雇用労働者、いわゆる派遣社員です。月収手取り14万~15万円で、30代後半です。日々生きるのがやっとの収入のなか、自身も病気をし、両親も歳をとってきました。未来に希望をもてない」(静岡県・30代)

「母親になりたいとは思っても、生んで育てて大学まで出すという資産のイメージがどうやっても立ちません。真面目に勉強して卒業して就職したら報われる時代の親に育てられたので、現代はそうはいかないんだよ。も通じません」(東京都・30代)

現代社会に生きづらさを感じている人は多い。

それは、あなたに問題があるのではなく、参加させられているゲームの難易度が極端に高いだけなのかもしれない。

 13万部を超えるベストセラー『上級国民/下級国民』(小学館新書)で現代社会のリアルな分断の構図を描いた作家の橘玲氏は、この理不尽な社会を「無理ゲー」(攻略がきわめて困難なゲーム)にたとえた。

わたしたちは今、「無理ゲー社会」に放り込まれている状態なのか?

橘氏は多くの人たちが生きづらさを感じるようになったのは、「リベラル化の必然」と看破する。

 

«本書で述べたのは、とてもシンプルなことだ。あなたがいまの生活に満足しているとしたら素晴らしいことだが、その幸運は「自分らしく生きる」特権を奪われたひとたちの犠牲のうえに成り立っている。ひとびとが「自分らしく」生きたいと思い、ばらばらになっていけば、あちこちで利害が衝突し、社会はとてつもなく複雑になっていく。これによって政治は渋滞し、利害調整で行政システムが巨大化し、ひとびとを抑圧する。

「リベラル」を自称するひとたちには受け入れがたいだろうが、リベラル化が引き起こした問題をリベラルな政策によって解決することはできない。すべての“不都合な真実”は、「リベラルな社会を目指せば目指すほど生きづらさが増していく」ことを示している。

ヒトの認知能力には限りがあるので、私たちは複雑なものを複雑なまま理解することができない。こうして「なにか邪悪なものが世界を支配している」と考えるようになる。この陰謀思考の標的は、右派では「ディープステイト」、左派では「資本主義」が最近の流行のようだ。

だがどれほどワラ人形に呪詛の言葉を投げつけても、この巨大な潮流をせき止めることはもちろん、流れを変えることすらできないだろう。

それに加えて日本の若者たちは、人類史上未曾有の超高齢社会のなか、増えつづける高齢者を支えるという、“罰ゲーム”を課せられ、さらには1世紀(100年)を超えるかもしれない自らの人生をまっとうしなければならない。この状況で「絶望するな」というのは難しいだろう。

それにもかかわらず、きらびやかな世界のなかで、「社会的・経済的に成功し、評判と性愛を獲得する」という困難なゲーム(無理ゲー)を、たった一人で攻略しなければならない。これが「自分らしく生きる」リベラルな社会のルールだ。»

(本書「あとがき」より)

 

こちらは本書の内容の一部です。

■ 「夢の洪水」に溺れかけている若者たち

■ 「愛されることも、愛することもない」敗残者

■ サンデルが告発するメリトクラシー社会

■ 日本人の3分の1は日本語が読めない

■ 遺伝なのか、環境なのか

■ 非大卒は大卒より2倍も死んでいる

■ 「苦しまずに自殺する権利」を求める理由

■ 結婚に失敗すると社会の最底辺に突き落とされる社会

■ コロナでわかった「日本の敗戦」

 

 誰もが「自分らしく」生きられる社会で「自分らしく生きられない」人はどうなるのか?

発売即重版されるなど反響轟々。

ベストセラー作家が現代社会で起こっている諸問題の根源を解き明かす衝撃の話題作。

 

〈目次〉

はじめに 「苦しまずに自殺する権利」を求める若者たち

PART1 「自分らしく生きる」という呪い

 1 『君の名は。』と特攻

 2 「自分さがし」という新たな世界宗教

PART2 知能格差社会

 3 メリトクラシーのディストピア

 4 遺伝ガチャで人生が決まるのか?

PART3 経済格差と性愛格差

 5 絶望から陰謀が生まれるとき

 6 「神」になった「非モテ」のテロリスト

PART4 ユートピアを探して

 7 「資本主義」は夢を実現するシステム

 8 「よりよい世界」をつくる方法

エピローグ 「評判格差社会」という無理ゲー

あとがき 才能ある者にとってはユートピア、それ以外にとってはディストピア

 

小学館新書

『無理ゲー社会』

著/橘 玲

 

【著者プロフィール】

橘 玲(たちばな・あきら)

1959年生まれ。国際金融小説『マネーロンダリング』『タックスヘイヴン』などのほか。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『幸福の「資本」論』など金融・人生設計に関する著作も多数。『言ってはいけない 残酷すぎる真実』で2017新書大賞受賞。近著に『上級国民/下級国民』、『スピリチュアルズ「わたしの謎」』など。

 

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