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2021.2.10

歌川国芳の娘が打ち明ける〈国芳の孫〉と江戸っ子たちの〈なれの果て〉『ニッポンチ!』

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キーワード: 小説 時代小説 歌川国芳 河鍋暁斎 月岡芳年 落合芳幾 歌川芳藤 三遊亭圓朝 浮世絵 国芳一門

歌川国芳の娘が打ち明ける〈国芳の孫〉と江戸っ子たちの〈なれの果て〉『ニッポンチ!』

威勢はいいのに、どこか物悲しい。

「国芳一門浮世絵草紙」シリーズ待望の最新作!

「がいなもん 松浦武四郎一代」で中山義秀文学賞と舟橋聖一文学賞を受賞した著者の受賞後第一作は、歌川国芳の弟子たちと、ふたりの娘の物語。

国芳には、早世した美しい娘・登鯉(とり)と、その陰に隠れていた次女のお芳という娘がいた。

 

«「姉娘の登鯉ちゃんは師匠の奔走(ほんぞ)っ子だったが・・・・・・そういえば、下にもなんか可愛げのねぇ、くすんだ娘がいたっけ・・・・・・」

「孫娘のお芳ちゃんは、絵は上手かったよ。絵の腕前だけでいえば、登鯉ちゃんより上じゃなかったかねぇ。たしか三枚続きの大錦なども書いていたはずだ」»

(本文より)

 

明治六年、歌川国芳の十三回忌回忌追善書画会。

顔を揃えたのは、国芳一門の河鍋暁斎、月岡芳年、落合芳幾、歌川芳藤、そして三遊亭圓朝などの弟子だった。

皆の心の中には、いつも師匠の国芳がいる。

新しい時代を模索する彼らの中でも暁斎は、仮名垣魯文と絵新聞を始めると意気盛んだ。

のちに日本の漫画雑誌の嚆矢となるこの雑誌は、その名も「日本地(ニッポンチ)」。

そんな弟子たちの生きざまを実見していたのは、昭和まで生きたという芳女(お芳)だった。

彼女も絵を描いているが、名を残した作品は今のところ三枚続きの錦絵があるだけだ。

主に春画や刺青の下絵、皮絵などを描いていたらしい。

 

時は変わり昭和三年、自身も日露戦争時に「日ポン地」なる雑誌を出していた新聞記者の鶯亭金升(おうていきんしょう)は、芳女(お芳)の家に通いつめていた。

世間で幕末~江戸を回顧する機運が高まるなか、当時の話を聞くためだ。

 

«「だいたいの絵を仕上げて、最後に父が手を入れて〈国芳〉の名で出すんです。もともと浮世絵は、絵師が絵を描き、それを彫師が板の上に刻んでいくものですから、彫師がよければ生き生きとした線の絵が出来上がります。趣向は絵師の才覚にかかっていますけれど、あとはいい彫師摺師がいれば相応のものが出来上がるようになっているんです」»

(本文より)

 

晩年の国芳を語るお芳。

そこで、金升は思いもかけない〈国芳の孫〉の存在を知る。

誰かに愛されたくても愛されなかった次女が最後まで愛を求めたのは・・・・・・?

誰からも愛された長女の登鯉が、最後に選んだものは?

 

有名絵師たちの知られざるエピソードや、一門のバカバカしすぎるほどの江戸っ子らしさ、次女から見た国芳像・・・・・・

明治開花の世を生きた人々を、瑞々しく描き出す。

「国芳一門浮世絵草紙」シリーズの後日譚。

 

«私が、『国芳一門浮世絵草紙』シリーズを小学館文庫で書き始めたのは、二〇〇七年・・・・・・ちょうど日本映画監督協会の退職を決めた直後のことでした。ところが長年勤めた職を辞したその翌年、思いがけなく夫に先立たれてしまい、とにかく筆一本で食べていかなくてはならなくなった私は、その後、国芳のシリーズを書くことで、どうにか自分を奮い立たせながら不安と寂しさをしのいだように思います。最終巻を描いていたときは登場人物たちと別れがたくて、「いつか、明治になってからの国芳の弟子たちの続編を書こう」と思ったものでした。»

(本書「あとがき」より)

 

『ニッポンチ! 国芳一門明治浮世絵草紙』

著/河治和香

 

【著者プロフィール】

河治和香(かわじ・わか)

東京都葛飾区柴又生まれ。日本大学芸術学部卒。CBSソニー、日本映画監督協会に勤務。2003年、『秋の金魚』で小学館文庫小説賞を受賞してデビュー。2018年刊行の『がいなもん 松浦武四郎一代』が、北海道ゆかりの本大賞、中山義秀文学賞と舟橋聖一文学賞を受賞。他に「国芳一門浮世絵草子」シリーズ(全五巻)、『鍼師おしゃあ』 『遊戯神通 伊藤若冲』など。

 

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