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2019.7.14
現役鉄道マンで北海道フリークの著者が紡ぎ出す、終着駅の奇跡!『途中下車はできません』
この記事は掲載から10か月が経過しています。記事中の発売日、イベント日程等には十分ご注意ください。
北海道の五つの駅をめぐる、出会いと別れと謎解きと。
北海道の各地を結ぶ鉄道のローカル駅。
そこには、思いがけないな運命の糸が張り巡らされていた――。
<富良野線・美馬牛駅>
オープンしたての紅茶専門カフェ「びぼうし茶房」。
シンプルな名前が気に入った里恵は店のドアに向かった。
オーナーの美和は美人だが、どこかワケありの雰囲気である。
‹‹美和は、大きく伸びをした。札幌と比べると、就寝は一時間ほど早くなっている。夜更かししようにも開いている店はないし、一番近いコンビニへも、車で十五分かかる。娯楽といえばテレビかネットぐらいなので、自然と早寝になった。店は午前十時から午後6時までで、それほど早起きする必要はないが、晴れた朝の六時頃、ぴんと張りつめた爽やかな空気の中を散歩するのは、何にもまして気持ちよかった。
(札幌での私とは、全然違う。何から何まで)
美和は思う。ここに来ることを決断して、本当に良かったと。››
近くの民宿「ドゥマン」に集う人々は、カフェの美人オーナーについて推理をめぐらすが、そこには誰も知らない黒歴史があった・・・。
<釧網本線・北浜駅>
大学生の康生は行方不明になった祖母を探し、わずかな手がかりからこの地を訪れた。
駅舎のカフェに入りコーヒーを飲んでいると、妙な気配を感じた。
‹‹康生は、ふと落ち着かなくなった。ボックス席の男の視線が、背中に感じられたのだ。何気ない様子を装い、振り向いてみた。男は、さっと視線を逸らせた。
妙だな、と康生は思った。一応は観光地であり、余所者が珍しいような土地ではないはずだ。自分のどこが気になるのだろう。さっきマスターと交わした祖母に関する話が、聞こえていたのだろうか。心当たりがある、というなら声をかけてきそうなものだが、その様子はない。
何となく薄気味悪くなった康生は、コーヒーを飲み干すと代金を置いて、席を立った。››
康生はいわれのないトラブルに巻き込まれていく・・・。
<宗谷本線・音威子府駅>
札幌の建築会社で四千万円の横領事件が発生。
社長命令を受けた課長の尾崎は、「音威子府の蕎麦屋で働いている」という目撃情報を頼りに、犯人の酒井を訪ねる。
‹‹「おい、酒井! 捜したぞ」
店主に聞こえないよう気遣い、控え目な声で言った。酒井は目を瞬いた。
「尾崎課長・・・・・・」
尾崎は酒井に近寄ると腕を取り、食堂から少し離れた。
「お前、何でこんなことしたんだ。持ち逃げなんて、人生棒に振る気か」
酒井は煙草をくわえたまま俯き、返事をしなかった。
「本気で蕎麦屋をやるつもりなのか。何が不満だった」
尾崎がさらに畳みかけると、酒井はおずおずと口を開いた。››
酒井はなぜ横領したのか? 蕎麦屋で働いていた理由とは・・・?
<根室本線・落石駅>
罠に嵌まり、振り込め詐欺グループに追われている荒川は、偽装自殺を企て、落石岬の崖っぷちをさまよっていた。
だが次々と邪魔が入って・・・・・・。
‹‹ああ畜生、どうしてこうなったんだ。実に良くできた計画だと思ったのに。緻密に頭でシミュレーションしたつもりが、いざ実行してみると、想定外のことが畳みかけるように起きてしまった。鉄道マニアに女のカメラマン、大阪の騒がしい夫婦に中国人の団体、揚句にエゾシカときたもんだ。こんなことになるなんて、誰が予想できる? 天の神様は、俺に恨みでもあるのか。ふざけやがって・・・・・・。››
<函館本線・札幌駅>
ライラック36号に乗る康生、そして尾崎と酒井。
スーパーおおぞら8号に乗る荒川、そして里恵。
地下鉄南北線でやってきた美和。
多くの乗客が旅立ち、帰郷し、あるいは通り過ぎてゆく札幌駅のコンコースで、一瞬の交錯が起こる。
終着駅で人生大逆転!?
「八丁堀のおゆう」シリーズ、「阪堺電車177号の追憶」が大ヒットした、現役鉄道マンで北海道フリークの著者が紡ぎ出す、人生大逆転ミステリー。
有栖川有栖さん大満足!
「旅するように読み進み、終着駅(ラスト)までページをめくる手が止まりませんでした」
著/山本巧次
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