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2019.1.12
「鴨川食堂」の次は、ぜひ当館へお越しください!『海近(うみちか)旅館』
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人情てんこ盛りでおもてなし!
若女将が旅館に新たな風を吹き込む
海野美咲は都内の大学を卒業後、静岡県伊東市にある実家の旅館を継いでほしいと母・房子に頼まれたが断った。
それから3年後、美咲は『海近旅館』の若女将になった。
名女将だった母が亡くなったこともあるが、会社勤めやひとり暮らしに疲れたことも一因だ。
家族と一緒に『海近旅館』を立て直したいと意気込んでいた美咲だが、お盆休みのピーク期でも満室にならない体たらくが続いていた。
海は近いが、温泉なし、設備古しで、繁盛旅館とは程遠い。
父も兄も頼りにならない。
名女将だった母の人柄だけが、唯一のよりどころだった。
幼なじみで「はりま荘」の若主人でもある明彦に愚痴をこぼしていると――
‹‹お盆休みのさなかとあって、子どもの歓声が海風に乗って聞こえてくる。風に飛ばされたビーチボールが、美咲の足元に転がってきた。受け留めて周りを見回すと、水着姿の女の子が駆け寄ってきた。
「はい」
美咲が手渡した。
「ありがとう。あ、ぼろ旅館のおばちゃんだ」
美咲の顔を見て、女の子がかん高い声を出した。
女の子の顔をよく見ると、昨夜『海近旅館』に泊まった子どもだ。
「おいおい、ぼろ旅館っていう言い方はないだろう」
明彦が身体をおこした。
「いいの、いいの。うちはたしかにぼろ旅館なんだから。でも、おばちゃんは嫌だな。おねえちゃんって言ってほしかったな」
美咲が女の子の頭を撫でた。
「じゃあ、ぼろ旅館のおねえちゃん」
女の子は人懐っこい笑顔を見せた。
「行くわよ」
布団が薄すぎるとか、ご飯が硬いとか、風呂がぬるいとか、さんざん文句を言った母親が、女の子の手を無理やり引っ張っていった。
「感じ悪いな」
ピンクの水着の背中を見送って、明彦が眉をひそめた。
「ゆうべうちに泊まった家族連れだけど、ずっと文句言われっぱなしだった」
美咲が砂浜の上にすわりなおした。››
ひよっこ若女将に、世間の風は冷たい。
それでも宿を一生懸命切り盛りする美咲。
経営難を乗り越えることができるのか?
「お客さまはけっして神さまではありません。
でも、ときどき神さまがお客さまになってお越しになることはあります」
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「鴨川食堂」著者が贈る、ハートフルストーリー!
あなたの明日を後押しする〝おもてなし〟小説です。
著/柏井 壽
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