お知らせ

2019.3.5

大ヒット上映中!『映画ドラえもん のび太の月面探査記』の脚本を担当した辻村深月さんインタビュー全5回を公開!

この記事は掲載から10か月が経過しています。記事中の発売日、イベント日程等には十分ご注意ください。

大ヒット上映中!『映画ドラえもん のび太の月面探査記』の脚本を担当した辻村深月さんインタビュー全5回を公開!

大ヒット上映中の『映画ドラえもん のび太の月面探査記』の脚本を担当した辻村深月さんが、自らの手で映画のノベライズに挑戦しました。『かがみの孤城』で2018年本屋大賞を受賞後、初の書き下ろしとなる長編冒険小説です。大の『ドラえもん』ファンとして知られる辻村さんは、いったいどんな思いで物語を紡ぎ、キャラクターに命を吹き込んでいったのでしょう? 全5回でご紹介します。

 

【第5回】

小説にすることで、初めてわかったこと。

小説を書いていて、「あ、ここが自分の本領発揮だ」と思えた場面がいくつかあるんです。とくに各章をつなぐインタールード(芝居の幕間、音楽の間奏曲の意味)は、本当に自分がノって書いているなって。インタールードのある一場面では、ルカがどういう子なのか、より深く知ってもらえる内容になっています。それは文章で綴る小説だから書けた場面だと思っています。

 

小説にすることで、初めて言葉にできたキャラクターの気持ちや事情がいくつもあるんです。普段の小説でも、書きながら登場人物の気持ちがわかることがよくあるんですが、今回のように完成させた脚本があっても同じことが起きるというのは、自分にとって発見でした。

 

おそらくそれは、ルカたちが私だけで作ったキャラクターではなく、スタッフのみなさんと一緒に作ったキャラクターだったからかもしれません。もともとの設定に厚みや奥行きがあったからこそ、自分の筆で書いてみたとき、よりふくらませていくことができたんでしょうね。

 

『ドラえもん』の映画に参加できた幸せ。

『ドラえもん』がこれだけ長く愛されているのは、きっとみんなのものだから。そして、ずっといまのものだからではないでしょうか。先日、息子が「大魔境のDVDを見たい」っていうので「昔のやつ? いまのやつ?」と聞いたんです。1982年の「のび太の大魔境」と、2014年のリメイク版のどっち? という意味で。そしたら息子が「昔のってどういうこと?」って。私が説明しようとしたら、「両方いまのだよ」と言うんです。昔のとか、いまのとか、リニューアル前とか、リニューアル後とかって、私たち大人はつい口にしてしまいますけど、子どもたちにとってはどの作品も並列して、みんな「いまのドラえもん」なんです。

 

みんな等しくシリーズの1本ですから、どの作品が『ドラえもん』との出会いであってもいいんですよね。今年の映画が最初の出会いになる人がいるかもしれないし、過去の作品がそうなるかもしれない。決して特別なものではない、シリーズの39分の1作品として、『ドラえもん』の映画に参加することができたことをすごく幸せに感じています。

 

感動には、大人も子どももありません。中高生や大学生はもちろん、私と同年代くらいの大人世代や、私くらいの娘がいるそれより上の世代の人たちだって、みんな心に残る『ドラえもん』の思い出があるはずです。今回の映画や小説をきっかけにそれぞれの思い出と再会し、「あのときに見た映画をもう一度見てみようかな」「コミックスを読み返そうかな」と思ってくれる人がいたら、こんなにうれしいことはありません。

[今回で終了です。ご愛読ありがとうございました。]

 

小学館特設サイトで全5回をインタビュー動画付きで読むことができます。

本文ためし読み

特設サイト

   

『小説 映画ドラえもん のび太の月面探査記』

原作:藤子・F・不二雄 著:辻村深月

四六判上製単行本 定価:本体1,800円+税

ジュニア文庫版 定価:本体800円+税

第1回 第2回 第3回 第4回