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2019.1.27
直木賞作家が「落語の人情世界」を小説化した小学館文庫『落語小説集 芝浜』が今、売れています!
この記事は掲載から10か月が経過しています。記事中の発売日、イベント日程等には十分ご注意ください。
落語を、読む。
古典落語の人気演目を本邦初のノベライズ!
2002年「あかね雲」で第126回直木賞を受賞した時代小説の第一人者・山本一力(いちりき)が、巧緻な筆致で綴る新しいエンターテインメントの登場です。
表題の「芝浜」の主人公は、魚屋の勝治郎とその女房おしの。
子宝に恵まれず、すっかり仕事にやる気をなくしてしまった勝治郎。
信用をなくし、酒におぼれたあげく、借金も背負い人生どん底。
ところがある日、勝治郎は芝浜で大金を拾います。
人生一発逆転!
喜びいさむ勝治郎の姿をみて、おしのはある策を考え・・・・・・。
‹‹財布も二分金も夢だったてえのか。
勝治郎が戸惑いを見せ始めたのを受けて、おしのが口を開いた。
「あたしが大事に大事に思ってきた勝っつあんというひとは、拾ったお足で飲み食いしたり、掛けを払おうなどと、さもしいことを考えたりはしないひとだわ」
おしのは背筋を伸ばして両目に力を込めた。
「お酒や蒲焼を振舞うことになっためでたいことっていうのが、財布を拾った夢がもとだっただなんて、情けなくて哀しすぎるわよ、勝治郎さん」
そんなひととは、これ以上一緒に苦労なんかできない。
「今日を限りで離縁してもらいます」
おしのが離縁を口にしたとき、境内に届いていた西日が失せた。
勝治郎は定まらぬ瞳でおしのを見ていた››
おしのの大きな愛に、勝治郎はどうこたえるのか?
夫婦の愛情をあたたかく描いた屈指の人情噺です。
このほかにも、以下4席を収録。
・登場人物がすべて実直な善人で、明るい人情噺として人気の高い「井戸の茶碗」
・船場の商家を舞台にした大ネタ「百年目」
・一文無しの絵描きが宿代の代わりに描いた絵から意外な展開となる「抜け雀」
・江戸時代末期の名脇役だった三世仲蔵の自伝的髄筆をもとに作られた「中村仲蔵」
いずれも人情味あふれる、落語ファンに人気の演目です。
高座芸である落語を小説という形で表現する、新しい試み。
ときに独創を加え、ときに人生訓を交え、見事に調理してみせます。
元ネタを知る人も知らない人も楽しめる、落語小説集!!
解説は落語家の柳家三三(やなぎや・さんざ)さんです。
「山本さんのつむぎ出す物語の主人公は、みなその体の真ん中に太い芯が一本、びしりととおっているかのような人達です。
人としてのありようが純粋で、しかとした矜持がある、ご自身の理想でもあるのでしょう。だからこそ一度はくじけてもまた前を見て歩きはじめる、その姿が清々しく、大勢の読み手を魅了してやまないのだと思います。
ひるがえって落語の登場人物は・・・・・・ねぇ? 能天気で楽して暮らしたくて、大晦日の借金だって返すことより言い逃れることに必死。けれど心の底から性根の曲がった悪党はまずいません。どこか純粋で可愛げがあります。
そんな連中があたふたしている落語が、山本さんの美学の世界に受け入れてもらえるのかしらという心配は、まったくの杞憂でした。背筋のしゃんと伸びた人々が、落語家の演じる噺とは、ひと味もふた味も違う、かくも魅力的な姿を見せてくれたことは、全篇を読み終えた皆さんに私から申し上げるまでもないことでしょう。
ただしですよ、この本で初めて落語に興味を持ってくれたかたがおいでだとしたら。寄席で演じられる噺の登場人物、何と怠惰で頼りないことと思われやしないかと・・・・・・。
弱りましたねぇ」
著/山本一力
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