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2018.11.24
女の人生は、惚れた男で決まる。桜木紫乃著・小学館文庫『霧(ウラル)』
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北海道・根室海峡。
三姉妹の愛と憎しみの華が咲く。
昭和35年。
戦後復興の熱気に満ちた北海道最東端の町・根室。
地元最大手の水産加工会社・河之辺水産の次女として生まれた河之辺珠生(たまき)は、中学を卒業するや、家を出て花街に飛び込んだ。
親に頼らず、芸ひとつで、20歳という若齢にもかかわらず、料亭「喜楽桜」のお座敷を任されている。
‹‹生家の河之辺家は珠生にとって世間体大事の面倒な家だった。姉と妹に挟まれた自分の居場所は自分で見つけるしかない。生きる理由も自分で考える。言われたとおりになどしないしできない。理屈に長けた口も両親を困らせた。けれど、理由を欲することのなにがいけないのかがわからなかった。
珠生の欲していたのは、きれいな服より磨かれた靴より、自分の意思だったと今ならばわかる。本名の珠生で座敷に上がるのは、どんなに名前を変えようと、河之辺という姓からは逃れられないと思うからだ。十五で家を出た珠生の存在は、曾祖父の時代から続いた家業を守る父の、目に見える分かりやすい傷だった。バチにこめる力は変わらない。誰もが見たいように珠生を見る。父親の膝元で芸者になるのはただの反抗だと言われれば、そうかもしれない。››
珠生の姉・智鶴は政界を目指す大旗運輸の御曹司に嫁ぎ、妹・早苗は金貸しの杉原家の次男を養子にして実家の家業を継ぐことになっている。
珠生はいつしか店の常連客で三浦の秘書を務める相羽重之に心惹かれようになり、芸者から足を洗った。
やがて、相羽が「組」を立ち上げたことで、期せずして珠生は組長の妻となる。
「霧の向こうに何があるのか、鬼にならねば分からない」。
ヤクザの「姐」としての〝使命〟が珠生の人生を大きく変えていく・・・・・・。
北海道・根室海峡を舞台にした覇権争い。
政治家、極道、金貸しの妻――。
表立って戦うのは男たちだが、その屋台骨を支えるのはまぎれもなく女たち。
三姉妹の愛と憎しみの華が咲く。
直木賞作家が贈る波瀾万丈エンタメ!
著/桜木紫乃
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