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2017.10.17
日本は米中に胃袋をつかまれ身動きが取れなくなる!? 『侵略する豚』
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キーワード: ノンフィクション グルメ 貿易 国際 アメリカ 中国 食料危機
伊勢湾台風の翌年、豚の支援計画の裏に隠された米国の策略とは・・・?
食の「安全保障」をめぐる日本の危機的状況をえぐり出した問題作「食料植民地ニッポン」!
本書『侵略する豚』はその続編です。
前作で輸入食〝日本侵略の秘密〟を世界各地で徹底取材した著者・青沼陽一郎氏が、今回は「豚肉」を追いかけて、幕末の日本を皮切りに、アメリカへ、中国へ。
緻密な資料調査と丹念な取材で、時空をまたぐ壮大な計画が明らかになりました。
特に、1960年代、アメリカの種豚が援助の名の下に日本に35匹、空輸されたエピソードは圧巻です!
この日本の畜産に大きな変化をもたらす35頭の豚を送った仕掛け人は、リチャード・S・トーマスという男。
‹‹きっかけは、台風だった。
この前年の1959年、日本は大型台風の当たり年だった。なかでも、和歌山県塩岬から本州に上陸した台風15号は、犠牲者5098人を出し、紀伊半島や東海地方を中心として全国各地に大きな傷跡を残していった。後世に言う「伊勢湾台風」である。
この台風被害は山梨県にも及んだ。その直前にも、やはり大型の台風7号が襲ったことで、被害は甚大を極めた。農業、それも多くの農家が兼業的に小規模に肥育していた養豚場に壊滅的な打撃を与えた。
その惨状に心を痛めたのが、ワシントン米軍司令部に勤務していたリチャード・S・トーマス曹長だった。彼は終戦後の日本に駐留していた経験がある。大型台風が襲う前年には山梨にいた。そのときに見た、日本の風景。人々の生活。それが破壊された。戦争ではなく、自然災害によって、人々が苦しんでいる。救いの手を差し伸べることはできないだろうか。なにか、できることはないか。››
トーマス曹長の生まれはアイオワ州。
アイオワ州といえば、豚の産地で現在では全米で生産される4分の1を占めています。
彼は故郷に頼り、豚の支援計画が実現。
35匹の豚が空からやってくることになりました。
それと同時に、米国から農業指導員と1500トンのトウモロコシがやってきます。
‹‹それまでの日本の養豚といえば、農家が副業的に豚を1頭から数頭を飼い、せいぜい大根や人参がご馳走であると信じていたように、家の残飯を与えて育てることが主流だった。それこそ農耕の〝ついで〟のようなもので、母豚から子豚が生まれれば、それを売って収入を得た。不作の年には飼い豚を食料の足しにもした。
そこに種豚といっしょにやってきた農業指導員が、トウモロコシを与えて育てる、新しい養豚を伝授する。養豚業が集約化していく。1500トンのトウモロコシは、そのためにあった。近代の養豚を日本に持ち込んだのは米国だった。米国の戦略によるものだった。そして米国型の養豚が定着していく。とにかく、飼料穀物を売る。››
日本が「見舞い」や「贈り物」程度にしか見ていなかった豚は、飼料穀物を売るための策略だったのです。
いま、日本はトウモロコシの輸入の9割を米国に依存しています。
「このままでは、食料自給率がどんどん下がり、日本は米中に胃袋をつかまれ身動きが取れなくなるのではないか?」。
綿密な取材に基づく「ホッグ・リフト」の事例を筆頭に、著者はそう警鐘を鳴らします。
トランプ政権はTPP離脱を決め、それに代わる日米交渉はさらに厳しくなると予想されています。
また、「中国国家主席の習近平は米国と接近し、食料戦略で足並みをそろえようとしている」と著者は予測!
その米中の意図と日本が抱えるリスクを、豚肉を題材に徹底取材しました。
本書は食をめぐる本格ノンフィクションであり、同時に日米の貿易問題を理解する解説書です。
著/青沼陽一郎
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