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2016.9.9

将来、日本で『魚が食べられなくなる日』も近い!? 日本の漁業が抱える大問題とは?

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キーワード: 漁業 勝川俊雄 グルメ 食

将来、日本で『魚が食べられなくなる日』も近い!? 日本の漁業が抱える大問題とは?

激減する漁獲量と漁業者

 

 脂がのった大きなホッケ、以前は居酒屋の定番メニューだったのに、最近、見なくなったと思いませんか? それもそのはず、

 

ホッケの漁獲量はなんと、最盛期の9割減、

 

サバは7割減、

 

クロマグロやウナギは絶滅危惧種。

  

漁業者の数も、ピーク時の200万人から1 6.7万人に減少、

 

平均年齢は601歳に。

 

 日本は世界第6位の広大な排他的経済水域をもつ漁業大国だったはずなのに、なぜこうなってしまったのでしょうか。中国漁船の乱獲? 地球温暖化の影響? いいえ、違います。原因は日本の漁業が抱える大問題にあるのです!

日本の漁業を持続可能な産業に再生するために提言を続けている気鋭の水産学者・勝川俊雄氏は、本書のなかで漁業資源が減った理由について、こう述べています。

 

  ‹‹原因は、日本漁船による過剰な漁獲であり、水産資源の「元本」を減らし続けたために「残高」が底をつきかけているのです。その結果として、漁業の衰退が起こったと考えるのが自然です››

 

漁業生産量がマイナス成長なのは日本だけ?

 

 魚が減っているのは世界的な傾向で、漁業が衰退しているのは、日本だけじゃないのでは? そう考える人もいるかもしれません。しかし、世界の多くの国で、漁業は利益を生む成長産業になっています。2013年に世界銀行が、「2030年までの漁業と養殖業の見通し」についてのレポートを公開しました。それによると、2010年から2030年の間に漁業生産量は、世界全体では23.6%増加。北米、南米、中国、東南アジア、インド、中東・北アフリカ・・・それぞれの国や地域によって増加の割合は異なっていますが、マイナス成長の国と地域は日本(マイナス9.0%)のみです。このことからも、日本漁業の衰退は、世界のなかでも特異的であるということがわかります。

 

 けれども、勝川氏は「日本の漁業はこれからでも十分に巻き返し可能なポテンシャルを秘めている」といいます。そのためには、ノルウェー、ニュージーランド、アイスランドなど漁業国のトップランナーたちが1980年代からやってきた、漁業規制を導入する必要があるのです。

 

  ‹‹日本では、厳しい漁業規制は漁業者を苦しめると考える人が多いのですが、そうではありません。日本では漁業規制が不十分なために、魚が減り、結果として漁業者が苦しんでいるのです››

‹‹すでに構造的に破綻している、「場当たり的に獲って、安売りする漁業」を延命するために努力をしています。必要な変化に反対し、規則がない状態を続けようとしています。破綻した現状を取り繕って問題の先送りをしている間に、すっかり漁業を衰退させてしまいました››

 

 では、日本の漁業規制は、どうしたら進むのでしょう。それには、漁業関係者だけでなく、国民の協力や消費者の意識改革が必要不可欠と、勝川氏は力説します。「おいしい魚が食べられない」そんな日が来ないためにも、本書を読んで、この問題について考えてみてください。

 

小学館新書

『魚が食べられなくなる日』

著/勝川俊雄

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