お知らせ
2019.6.24
鈴木光司が生命の根源を問う渾身の海洋小説!小学館文庫『ブルーアウト』
この記事は掲載から10か月が経過しています。記事中の発売日、イベント日程等には十分ご注意ください。
1世紀の時空を超えて、絡み合う宿命。
和歌山県串本町のダイビングショップ「串本ダイビングステーション」で、ガイドとして働く女性ダイバー高畑水輝。
元々は東京のコンサルタント会社に就職したが、訳あって故郷に戻ってきた。
水輝の四世代前の先祖・勇吉は、日本における潜水士の草分け的存在だった。
勇吉が海に潜ることになった理由は、「エルトゥールル号の遭難事故」だと祖父・勇三が聞かせてくれた。
これ以来、高畑家とダイビングは切っても切れない関係になった。
水輝が潜るようになったのも、ダイビングショップを営んでいた父・祐介の影響だった。
‹‹小路を抜けて国道四十二号線に合流し、白浜方面に車を走らせると、左手には枯木灘につながる湾が見えてくる。
このあたり一帯の海は、日本有数のダイビングスポットであり、道路沿いにはダイビングショップが点在する。水輝がインストラクターを務めるダイビングショップも、その中のひとつだ。
沖合に浮かぶ岩礁にうねりが当たって白い飛沫が舞っていた。
水輝は、岩場付近の海面を見ただけで、風向や風力を予測することができた。風は弱く、西寄りだった。昼前にやってくるはずの客は、湖畔の半島を挟んで東に位置する大島の沖合で潜りたいと、リスエストを出していた。この風向きならコンディションは良好のはずである。午後になって風向きが急変することもなさそうだ。››
この日の客は、「エルトゥールル号の沈没現場に行きたい」というトルコ人青年のギュスカン。
彼にとっての四世代前の祖先・ムスタファは、125年前の事故で救出されたひとりだという。
ふたりは昼と午後に一本ずつ潜って、船着き場に戻ってきた。
二日後、ギュスカンをもう一度船甲羅に案内した水輝。
当初は観光目的のダイビングだと思っていたが、彼の行動を見るかぎり違うようだ。
魚にも珊瑚にも目をくれず、ひたすら海底の砂地を棒でつついている。
潮の流れが速くなったことに気づいた水輝は、風景の変化を確認しようと上下左右に視線を巡らせたが、ギュスカンの姿が視界から消えていた。
水輝は彼の姿を必死で探すが・・・。
1世紀の時を経て、絡み合うふたりの運命。
それは偶然なのか、必然なのか。
1890年に起きた「エルトゥールル号遭難事故」に着想を得て、書き下ろした生命の根源を問う渾身の海洋小説。
1万8000マイルの航海歴を持つ著者ならではの海洋描写はリアルそのもの。
過去と現在がシンクロし、時代を超えた人と人とのつながりに胸が熱くなる感動巨編です。
解説は朝宮運河さん。
「本書がシンプルでありながら、壮大なスケールと奥行きを感じさせる物語になっているのは、太古から連綿と続いてきた生命(いのち)のリレーを、視野に収めているからだろう。希望の光に満ちた物語の幕切れは、この世界で生きて死んでゆく者たちに向けた、エールのようにも感じられた」
■ エルトゥールル号の遭難事故とは?
1890年9月、オスマン帝国の親善訪日使節団を乗せた軍艦「エルトゥールル号」は帰国の途中、和歌山県串本沖で台風に遭遇、遭難し、500名を超える犠牲者を出した。
この未曾有の大惨事の中、地元住民たちの献身的な救助活動により、69名の乗組員が奇跡的に母国トルコに生還した。
著/鈴木光司
★こちらもオススメ!
・鈴木光司が娘に伝える初の箴言集!『野人力 オヤジが娘に伝える「生きる原理」』
・スウェーデンの年間ベストセラー第2位。重厚でスリリングな超弩級の歴史ミステリー!『1793』
・やる気の出ないこの時期に・・・パッと靄が晴れる。『就職先はネジ屋です』
・ベストセラー「あん」の著者・ドリアン助川が描く新時代の感動長篇!『水辺のブッダ』
・日本がかつてない危機にさらされた!そう遠くない未来の一日の物語『小説 映画 空母いぶき』
関連リンク