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2019.6.4
やる気の出ないこの時期に・・・パッと靄が晴れる。『就職先はネジ屋です』
この記事は掲載から10か月が経過しています。記事中の発売日、イベント日程等には十分ご注意ください。
こんなにも熱く働く人たちがいる。
新入女子社員のモノづくり小説
就活中のユウ(三輪勇)は、第一志望の商社を最終面接で落とされ、母親が社長を務めるミツワネジ(従業員130名)にエントリーした。
海外で働きたいと考えるユウにとって、ミツワネジにフィリピン支社があることが大きな志望動機になった。
一次、二次と通過し、最終面接は母親。
次々と投げかけられる鋭い質問に答え、最後に当てられたのは――――
「もしも、あなたが当社の社長に就くとしたなら、どんな経営者になりますか?」
ユウは自分の思うままを口にした。
「今ある会社を一度破壊します」
それまでにこりともしなかった社長が初めて面白そうな顔になった。
入社後、現場研修を経て、唯一の同期・辻と同じ営業に配属された。
営業の取引先は、ネジを扱う顔なじみの商社ばかりだった。
直接提案型の営業もしたいと考えたユウは、飛び込みでメーカーを回り始めるが、相手にされない。
ある日、荒川の河川敷で消波ブロックを作る現場を見たユウは、新しいボルトのアイディアを思いつく。
‹‹「工場長、ボルトを一本試作してもらいたいんです」
「ほう、どんなボルトだい?」
「簡単に締まるボルトです」
ユウの言葉に、青沼があんぐり口を開けていた。
「なんだそりゃ?」
ユウは先ほど荒川土手で目撃したことを話す。
「締まるのが簡単てこたあ、緩めるのも簡単てこったよな? すぐに緩んじまうボルトをつくってどうしようっていうんだ?」
まったく理解できないといった表情だった。ユウは待ってましたとばかりに反応する。
「締めるのも簡単、緩めるのも簡単、求められているのは、まさにそんなボルトです」
「求められてるって、どこからさ? その消波ブロックつくってる会社か? そういやユウちゃん、営業先の開拓を始めたんだってな。山田部長がこぼしてたぞ、勝手なことばかりしてるって」››
前例のないことを始めようと行動するユウは、幾度もしがらみと闘いながら、仲間や業界のスペシャリストとともに新しい世界を切り開いていく。
文庫版オリジナルの「読めばヤル気が出る!」新入女子社員のモノづくり小説。
ネジに関するかなり突っ込んだ深い知識も面白い!
解説は著者の本が「出会いをくれた」というモデル、エッセイストの華恵さんです。
‹‹今回の小説は、ネジの話だ。さすがに縁がない分野だろう。そう思って読み始めたが、ハッとするところがあった。
主人公の女の子、ユウと、同期の青年、辻が電車に乗っているシーン。辻がユウに、ネジについて語りだす。日本におけるネジの起源は、十六世紀。種子島にポルトガル人が火縄銃を持ち込んでからだという歴史を語り、電車のネジについても触れる。
「土足が行き来するこういう場所って、ネジの溝にも汚れが詰まるでしょ。掃除する時、プラスよりマイナスのほうが掻き出しやすいってわけ。ほかにも、風呂場なんかの水回りがそうだね。溝に水垢なんかの汚れが詰まって、それが原因で錆びついたりしないように」
へー! と、身を乗り出して読み進めた。自分が当たり前のように乗っている交通機関の細部に、こだわりがある。形がプラスかマイナスか、それだけのことが、突き詰めたら、人の命を守るため、ということにも繋がるだろう。職人や開発者の汗と知恵に、私は日々、守られているのだ。
やっぱり上野さんの作品は、日常にさりげない変化を与えてくれる。
そして、主人公が、悩みながらも仕事の困難に立ち向かっていく姿を読むと、自分自身の仕事の悩みにヒントを与えられることもある。››
著/上野 歩
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