推薦者の言葉
- 高階秀爾氏
- 塩野七生氏
- 原田マハ氏
- 村上 隆氏
海外へ旅をして、日本へ帰り着いたとき、いつも感じることがある。この国は、なんという色彩に満ち溢れた国であることか。四季に彩られ、豊穣な自然に恵まれ、光と陰の強烈なコントラストがある。この美を、感動を、写し取るために、かつて絵師たちは筆を奮い、仏師たちは祈りをかたちにした。遙かな時代に創られたうつくしいものたちは、幾星霜を経てなお、私たちの目を愉しませ、心を躍らせる。私は、この国に遺された芸術品の数々を思うたび、旧知の友人を思うようになつかしく、また誇らしい気分になる。この国に暮らす友人たちは、誰もがユニークであり、たくましく、うつくしいのだ。
このたび、「日本美術全集」が発刊の運びとなった。手放しで、うれしい。縄文のヴィーナスにも、いつもはお堂の中にひっそりとおわす釈迦三尊像にも、一堂にはなかなか見られない若冲の「動植綵絵」にも、いつでも会える。そう思えば、心が弾む。友人たちが、新しい装いで、我が家に遊びにきてくれる。そんな思いで、全集の到着を待ちわびている。
※このページに含まれる文字「迦」は、オペレーティングシステムやブラウザなどの環境により表示が異なります。正しくは二点しんにょう。
原田マハ(はらだ まは)
作家、キュレーター。1962年東京生まれ。
関西学院大学文学部日本文学科、早稲田大学第二文学部美術史科卒業。伊藤忠商事株式会社、森ビル森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館勤務を経て、2002年フリーのキュレーター、カルチャーライターとなり、2006年より作家となる。2005年『カフーを待ちわびて』で、第一回日本ラブストーリー大賞受賞。2012年『楽園のカンヴァス』で、第二十五回山本周五郎賞受賞、第147回直木賞候補。