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2021.5.17

暴力団経営の基礎知識を網羅した「反社会的ビジネス書」『職業としてのヤクザ』

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キーワード: 社会 ビジネス 暴力団

暴力団経営の基礎知識を網羅した「反社会的ビジネス書」『職業としてのヤクザ』

なぜ、ヤクザになるのか? そもそも、ヤクザとはなんなのか?

暴力団同士の抗争ではなく、ヤクザの生き方そのものにスポットライトを当てた映画「ヤクザと家族」「すばらしき世界」が、今注目を浴びている。

本の世界でも、暴力団が絡んだ抗争や事件について書かれたものはあっても、「ヤクザはどうやって生活しているのか?」という素朴な疑問に応えたものはなかった。

そこで本書では、暴力団取材のプロである2人が、そもそもヤクザとはなんなのか徹底解説する。

ヤクザの主な仕事と言えば「犯罪」、そうイメージする人が多いが、著者のひとり鈴木智彦氏によるとそうではない。

 

«ヤクザは職業ではない・・・・・・そういっても一面の正しさはあります。一般人の多くは誤解しています。暴力団は、犯罪を直接の業務にする組織ではないのです。会社のように利益を生み出すために一丸となって分業し、活動していません。そもそも組織に金を払っても、金はもらえません。

ヤクザの明確な組織犯罪は抗争です。直接利益を生み出さず、命さえ失いかねないマイナスのイベントですが、格闘技のファイト・マネーのごとく、その際のパフォーマンスによって格付けされます。よく戦えばファイト・マネーも上がるし、弱ければ堅気になるしかありません。山口組が日本最大の暴力団になったのは、過去、山口組がもっともたくさん殺し合ったからです。殺し殺された命の蓄積が、暴力団の時価総額なのです。»

(本書「序章」より)

 

「どうやって稼いでいるのか」に始まり、「なぜ暴力団に需要があるのか」「組長まで出世する条件はなにか」「ヤクザに定年はあるのか」といったビジネス的な観点からヤクザ社会を紐解いていく。

「シノギは負のサービス産業」「抗争は暴力団の必要経費」「喧嘩をすると金が湧き出す」といったヤクザの格言を理解することは、労働と対価という資本主義社会の本質について考えるきっかけとなるに違いない。

最後に、ヤクザという職業がなくなった後の日本社会について、溝口 敦氏が問題提起している。

 

«このまま進むとヤクザという職業は存在できず、ヤクザがそのときどきに行うシノギも遂行できない。ヤクザはヤクザから脱落し、半グレに加わり、半グレからも脱落して、単に常習的に犯罪を行う人たちへ零落するはずです。

ヤクザがなくなったおかげで犯罪のない平和な社会が実現するかといえば、単に悪事に手を染めるカタギが最近、増えたってことになるでしょう。半グレではなく、国民の大半が禁止法令を守らない。隙あらば、隣人の物さえ奪って恥じない国民ばかりとなったら、さぞかし日本は住みにくい国になるでしょう。倫理性のない後進国への後退です。»

(本書「終章」より)

 

読めば、日本経済の表も裏もわかる、〝反社会的ビジネス書〟!!

 

小学館新書

『職業としてのヤクザ』

著/溝口 敦 著/鈴木智彦

 

【著者プロフィール】

溝口 敦(みぞぐち・あつし)

1942年、東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業。ノンフィクション作家。『食肉の帝王』で2004年に講談社ノンフィクション賞を受賞。

 

鈴木智彦(すずき・ともひこ)

1966年、北海道生まれ。日本大学芸術学部写真学科除籍。ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーに。

 

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