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2019.2.26
忘れてしまいたい痛恨の記憶、リセットできるとしたらどうしますか?『戻る男』
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「ひなた弁当」「ひかりの魔女」の著者が送る、過去と現在と未来にまつわる謎解きミステリー
ある日、作家の新居航生のもとに一通の書状が届いた。
航生は、作家として5年前に出版した「もう一つの扉」が大ヒットを飛ばしたが、その後は小説を書いておらず、離婚して一人暮らしをしていた。
書状はタイムスリップを研究しているという、八木俊太郎という人物からだった。
それによれば、ある程度ならタイムスリップが可能だという。
‹‹まず結論から申し上げます。
タイムスリップは、ある程度なら可能な段階にまで研究が進んでおります。ある程度、とはどういう意味かと申しますと、おおまかには四つございます。
第一に、可能なのは過去へのタイムスリップのみで、未来に対しては不可能だ、ということです。理論の詳細をここに書く余裕はありませんし、またそれを明かすわけにはいかないのですが、タイムスリップは過去に対してのみ可能だということはほぼ間違いありません。想像力が豊かな作家の方々は、未来の世界をリアルに描くことができるのでしょうが、現実問題としては残念ながらそれが厳然たる事実なのです。
第二に、過去は過去でも、タイムスリップができる範囲は、当人が生きていた時代に限られる、ということです。さらなる過去へのタイムスリップは、理論的には可能だという有力説もあるのですが、仮に可能だとしても、実現にはかなり時間がかかるだろう、というのが我々の考えです。
第三に、タイムスリップといっても、過去の自分自身に会えるわけではない、ということです。
<中略>
第四に、過去にタイムスリップをしても、その後を大きく変えるようなことを実行するのは不可能、ということです。つまり、歴史を変えるような行動は不可能だ、ということです。››
50万円でタイムスリップを実際に体験してみませんか?
八木からそう切り出された航生は断るつもりでいたが、四六時中タイムスリップのことが頭から離れない。
でも、つまらない詐欺に引っかかったと世間から嘲笑われることを考えると、覚悟が決まらない。
思い悩んだ末に、実際に体験したことを雑誌に書くことにして、航生は八木の提案を受け入れタイムスリップを経験してみることにした。
自分が体験した小さな事実なら変えられる――――。
航生は中学生のときにいじめの標的にされたことがあり、この過去を変えようと思った。
目隠しとヘッドフォンを装着されて向かった施設で八木に過去の話をしていると、いつのまにか航生は、学生服姿で中二の文化祭会場にいた・・・・・・。
自分史を変える時空の旅から戻った航生は、これは〝本物〟だと確信。
けれども、タイムスリップの理屈や方法、組織の実態がわからないままでは、記事にできない。
‹‹知りたいことは多い。
タイムスリップはどういう理論に基づいて実現できたのか。
専用の装置があるのか、ないのか。あるとすればどのようなものなのか。専用の装置があるとして、自分の記憶からそれが欠落しているのはなぜなのか。
どの程度まで過去を変えることができるのか。研究がさらに進めばその範囲はさらに広がるのか。
研究には政府も関与しているのか。››
タイムスリップの謎について調べていくうちに、〝過去〟のあり方と真剣に向き合うようになる航生。
著者がタイムスリップを通じて伝えたかったメッセージとは?
一度読み始めたら止まらない、過去と現在と未来にまつわる謎解きミステリー。
著/山本甲士
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