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2017.10.6

人気写真家・在本彌生が心底ほれ込んだ『熊を彫る人 木彫りの熊が誘うアイヌの森 命を紡ぐ彫刻家・藤戸竹喜の仕事』

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キーワード: 写真集 歴史 アイヌ 熊彫り 自然 文化

人気写真家・在本彌生が心底ほれ込んだ『熊を彫る人 木彫りの熊が誘うアイヌの森 命を紡ぐ彫刻家・藤戸竹喜の仕事』

芸術的な熊の彫刻×阿寒湖の大自然×アイヌの物語

2017年の秋から年明けにかけ札幌芸術の森美術館、国立民族学博物館で相次いで展覧会が予定されている彫刻家・藤戸竹喜さん。

熊、狼に代表される藤戸さんの作品は、動物の毛並み、体の線、表情など、まるでいまにも動き出しそうな生命力にあふれています。

その作品に魅了された人気写真家の在本彌生さんは、未来あるべき場所で撮影したいと阿寒湖に通い詰め、大自然の息吹の中でシャッターを押しました。

その情熱に、ほだされて筆を進めた村岡俊也さんは語ります。

 

「写真家の在本彌生さんに誘われて藤戸竹喜さんのアトリエを訪ねたのは、1月の終わり。マイナス20度をさらに下回るような、凍てついた阿寒湖だった。熊をはじめ木彫りの作品を自然の中に持ち出して撮りたいという彌生さんの申し出を、藤戸さんは当初から肯定的に捉えていたと思う。自分の作品が自然の中に置かれた時にどう見えるのか、ずっと試してみたかったようだった」

 

その写真は、まるで童話の一部のよう。

写真と写真の合間には、藤戸さんの口から語られるみずからの歩んだ人生、アイヌならではの考え方や哲学、自然との寄り添い方、佇まい、木彫りへの執着など、「大きな物語」が流れます。

 

「俺は年代によって作るものが変わっているから。若い頃に作ったヤツは全然違う。親父の系統を継いでいるけど、独立してからは親父ともまた違うものを作っている。修行時代は親父の熊が日本一だと思っているけど、それもだんだん変わってくる。職人時代のものは、手元に置いておこうなんていう発想はないよ。生活のために、売らなくちゃいけないから。欲しいと言われたら売るよ、職人だから。冬になると問屋に安く買い叩かれてね。冬は阿寒湖でも旭川でも不景気だから。子供の頃、親父に熊を売ってこいって言われて問屋に持っていったら、タバコ一つくれた。タバコを持って帰ったら、親父にぶん殴られて熊を取り返しに行った。

親父は三角彫りを初めてやった人だ。それまでみんな丸ノミで、親父が三角ノミで彫ったら高く売れたわけ。でも仕上げの時間は倍かかる。鮭負い熊、鮭食い熊、先輩たちが考えたんだ。変わり熊っていうのは、親父がやってたね。俺が考えたのは怒り熊っていうヤツだ。アイディアはすぐに真似される。

もう俺の他には熊彫りは少ないから。俺は最高齢だと思うよ、熊彫りの。八雲の熊も、旭川の熊もどちらも素晴らしいと思う。ただ、先輩たちを思い出しながら、まだまだ彫り続けたいんだよ」

 

熊のカワイイ姿は女性心をくすぐるでしょう。

阿寒湖の大自然の素晴らしさは旅情をかき立てるでしょう。

アイヌの歴史、文化の記述は資料的価値として、知的好奇心を満足させるでしょう。

まるで彫刻を思わせる装丁は、きっと書棚からあなたをアイヌの森へと誘うことでしょう。

 

『熊を彫る人

木彫りの熊が誘うアイヌの森 命を紡ぐ彫刻家・藤戸竹喜の仕事』

写真/在本彌生  文/村岡俊也

 

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