お知らせ

2023.1.1

生まれてこないほうがよかった「生」などあるのか?『だれも私たちに「失格の烙印」を押すことはできない』

この記事は掲載から10か月が経過しています。記事中の発売日、イベント日程等には十分ご注意ください。

キーワード: 時事 社会 人権 尊厳 不当な生 障害者 マイノリティ ダイバーシティ ベストセラー

生まれてこないほうがよかった「生」などあるのか?『だれも私たちに「失格の烙印」を押すことはできない』

2018年「今年の人権書」に選ばれたベストセラー!

著者のキム・ウォニョン氏は作家・パフォーマー・弁護士としてマルチに活躍する一方、骨形成不全症という障害をもち、車いすで生活をしている。

本書では、社会的マイノリティであった著者が、「すべての人に尊厳があるとしたらその根拠はなにか?」を深く思索し、古今東西の事例や書物からひも解いていく。

 

«「人生は必ずしも悪いものではないんじゃないか?」

人間の尊厳は憲法をはじめ国際法上でも認められている普遍的な価値だ。しかし、すべての人間に尊厳や存在価値があると主張するのは容易ではない。私たち障害者は時に、自分が非常にみじめで、価値がなく、醜いと思うからだ。私は長い間、自分自身の尊厳と魅力を論証しようとしてきたけれど、コーヒーを片手にもったまま優雅に直立歩行ができない自分の足を目の当たりにすると、いまでもため息が出る。

だからといって、こんな身体を補える高潔な人格や明晰な頭脳をもっているわけでもない。障害について文章を書くこと、そして障害を抱える自分の存在が差別と排除の対象にはならないことについて文章を書くことが、思っていた以上に難しく疲れ果ててしまった。私もほかの人たちのように人工知能や不動産投資、ドローンの飛行原理について学び、文章を書けたらいいのにと思った。

しかし、この先、私がどんな人生の道を歩むとしても、「不当な生」について一度はありのままに語りたいという思いをあきらめることはできなかった。»

(本書「まえがき」より)

 

韓国の大学生が合コンで「JM」という障害者のマネをした自己紹介がSNSで非難されたこと、障害を抱えた子どもが、生まれてこない方がよかったという考えのもと、親が子どもを代理して、医師に対して損害賠償を請求する「ロングフルライフ(不当な生)」訴訟、聴覚障害者のレズビアンカップルが、自分たちと同じ聴覚障害のある男性の精子提供を受けて、あえて聴覚障害のある子を出産したことは過ちか? 一部が欠損した身体や車いすそのものに魅力を感じる「ディーボディ」という存在・・・マイノリティに対する社会の矛盾を、自身の経験を交えながら語り尽くす。

 

«著者は障害や病気のある人をはじめ、マイノリティの人々が社会から阻害される理由について、哲学や社会学、法学、精神医学、障害者運動の歴史など様々な面からアプローチした。日常に潜んでいる様々な差別が、社会の慣行や構造によって生み出されていること、それに人々が無意識、無自覚になってしまっていることに、読者は気づかされる。また、自分の障害と真正面から向き合い、これまでの人生について赤裸々に書いた著者の文章力には説得力がある。訳者自身、想像すらできていなかったマイノリティの人々が置かれている状況について、力強い著者の文章を訳しながら、想像を発展させることができた。»

(本書「訳者あとがき」より)

 

すべての生には価値があって美しい! 読み終えたとき人生観がガラリと変わる、画期的な人文書!

 

本書は、アクセシビリティに配慮した本です。

通常の書籍のほか「電子書籍(リフロー型)」「オーディオブック版」「テキストデータ版」(※1)、また日本点字図書館(※2)の協力を得て、「テキストDAISY版」「音声DAISY版」「点字版」計7つの形態で刊行。

特に、2022年新語・流行語大賞にノミネートされた記憶も新しい「オーディオブック」は、移動時間や家事中の読書体験として注目される一方、文字を追うことに困難のある方が本を楽しめる新しい読書体験としても大変注目されています。

また、通常長い時間をかけて、必要に応じて提供される「テキストデータ版」「テキストDAISY版」「音声DAISY版」「点字版」の制作が発売時から発表されるのは極めて異例で、今まで新刊を読むことが難しかった、視聴覚障害者などの読書困難者の方々にも変わらない読書体験を目指しました。

※1 本書をご購入いただきました障害当事者(視聴障害・肢体不自由などの理由のある方)で、ご希望される方にはテキストデータを提供しています。提供方法は、購入書籍の巻末をご確認ください。

※2 点字版・音声DAISY版・テキストDAISY版のご利用につきましては、社会福祉法人日本点字図書館にお問い合わせください。

社会福祉法人日本点字図書館 https://www.nittento.or.jp/ TEL 03‐3209‐0241 mail:nitten@nittento.or.jp

 

〈目次〉

まえがき

第1章 障害の熟練者

第2章 品格と尊厳のパフォーマンス

第3章 私たちは愛と正義を否定する

第4章 ロングフルライフ――不当な生

第5章 喜ばしい責任

第6章 立ちはだかる法の前で

第7章 権利を発明する

第8章 魅力不平等の問題

第9章 怪物になる必要はない

謝辞

訳者あとがき

参考文献

 

『だれも私たちに「失格の烙印」を押すことはできない』

著/キム・ウォニョン  訳/五十嵐真希 

 

【著者プロフィール】

キム・ウォニョン

ソウル大学社会科学部社会学科、同大学ロースクール卒業。作家。パフォーマー、弁護士として活動中。骨形成不全症のため車いすユーザー。著書に『希望ではなく欲望―閉じ込められていた世界を飛び出すー』、キム・チョヨプとの共著『サイボーグになるーテクノロジーと障害、わたしたちの不完全さについて』がある。

 

★ こちらもオススメ!

落合信彦×落合陽一 異能の親子が語る「近未来の生き方」『予言された世界』

 

命がけの荒行を達成した「現代の生き仏」 光永圓道が説く「心の整え方」『比叡山大阿闍梨 心を掃除する』 発売たちまち重版決定!

 

口を塞がれたアフガンの女性たちが危険を承知でペンを執った『わたしのペンは鳥の翼』

 

2021年豪州ベストセラー第1位!名もなき女性たちのことばを集めた感動作!『小さなことばたちの辞書』

 

異例の大反響! 岸田奈美の爆笑&号泣エッセイ第2弾!!『傘のさし方がわからない』

関連リンク