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2021.10.19
「不健全なもの」に救われる人もいる。『やくざ映画入門』
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キーワード: エンタメ 映画 やくざ 社会
やくざ映画をエンターテインメントとして作るのはもう難しい?
コンプライアンス遵守が盛んに叫ばれる現代。
かつて全盛を極めた「やくざ映画」の命脈も風前の灯火だ。
最近では『孤狼の血』や『ヤクザと家族 The Family』が話題を呼んだが、そこにはかつてのやくざ映画と大きなスタンスの違いがある。
今後、やくざ映画はどうなっていくのだろうか。
映画史・時代劇研究家の春日太一氏が、『仁義なき戦い』『人生劇場 飛車角』『博奕打ち 総長賭博』『緋牡丹博徒』『県警対組織暴力』『極道の妻たち』『アウトレイジ』――日本映画史に燦然と輝く名作を体系的に紐解きながら、難解と思われがちなこのジャンルの「歴史」「全体像」「楽しみ方」をわかりやすく解説する。
«先の見えない鬱屈を抱えた心には、元気や感動を押しつけてくるエンターテインメントはかえってキツくありませんか? コンプライアンスを遵守し、道徳的な正しさで整備されたエンターテインメントに退屈さを感じていませんか? やくざ映画はそんなあなたの闇に寄り添い、そして明日を生きる活力を与えてくれます。
「やくざ映画でしか救われない魂がある」
それが、この本の基本精神です。
「ポスターやタイトルがなんだか恐い」「そもそも、やくざって嫌い」
そう思って避けてきた方も多いでしょう。あるいは、年を経るに従い遠ざかっていった方もいると思います。そんな方々がやくざ映画に自然と入っていけるよう心掛けて書きました。»
(本書「はじめに」より)
【本書の主な内容】
■ やくざ映画「用語」の基礎知識
■ スター・高倉健の「三大シリーズ」
■ 改革者「深作欣二」と「菅原文太」
■ 渡哲也を飛躍させたあの名作
■ スター・脇役・悪役「俳優名鑑」
■ ドラマ『半沢直樹』のルーツは仁侠映画だった!?
■ 北野武『アウトレイジ』の楽しみ方
■ 笠原和夫が「やくざ」に託した戦後史
なぜやくざ映画は、我々の心を掴んで離さないのか。
不健全な作品にしか、救えない魂があるからだ。
そして、やくざ映画には「組織論」「義理と人情」など、日本社会の本質を理解するカギがそこかしこに隠されている。
やくざ映画が大好きなマニアからビギナーまで楽しめる入門書。
«本書を読む上で最も注意していただきたい点があります。それは「やくざを美化している。けしからん」とは、くれぐれも思わないでいただきたい――ということです。本書で述べるのはあくまで「やくざ《映画》」という「創作物」であり、そこに出てくるのは「俳優が演じる、フィクションのキャラクターとしての《やくざ》」なのです。
「現実のやくざ」と「実際のやくざ」は――たとえ実話をベースにしていたとしても――全くの別物である。それが本書の大前提になります。ですので、くれぐれも本書を読んで「やくざは素晴らしい」と思わないでください。現実とフィクションは区別して考える。「やくざ映画」に限らず、映画全般を捉える上でそれが最も重要なスタンスです。»
(本文より)
〈目次〉
はじめに
第1章 やくざ映画概論
第2章 やくざ映画の歴史
第3章 やくざ映画俳優名鑑
第4章 作品の考察
著/春日太一
【著者プロフィール】
春日太一(かすが・たいち)
1977年東京都生まれ。時代劇・映画史研究家。日本大学大学院博士後期課程修了。
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