お知らせ
2018.8.22
日本人が知らない終戦間近の謀略事件をモチーフにした人間ドラマ『赤道 星降る夜』
この記事は掲載から10か月が経過しています。記事中の発売日、イベント日程等には十分ご注意ください。
死んだはずの祖父が孫に託した戦争の真実とは・・・・・・
雑居ビルの屋上から飛び降り自殺をした達希(27歳)は、いつの間にか自宅に戻っていた。
自分の命があることに驚く達希。
隣にいたのは、15年前に死んだはずの祖父・勉だった。
‹‹「で、なんだってあんなことになったんだ?」
「言ったって、じいちゃんには分からないよ」
「原因はあれか」
指さされたほうに視線をやり、ハッと息を吞んだ。
入り口の郵便受けから、「督促状」と書かれた赤い封筒が溢れ出てしまっている。
「金か・・・・・・。随分、分かりやすい理由だな」
せせら笑い、勉はゆっくり腕を組んだ。
「だが、それなら話は簡単だ。どうだ。取引しようじゃないか」
「取引?」
「俺とて、理由もなく現世を彷徨っていたわけじゃない。要は心残りというやつだ」
勉は思わせぶりに達希の顔を覗き込む。
「実はな、俺には、隠し口座がある」
「隠し口座?」
「おお、そうともよ。そこに、当面遊んで暮らせる額が眠っている。どうだ。俺の頼みを聞いてくれれば、お前にその口座のありかを教えてやるぞ」
「頼みって?」
「探してもらいたい人がいる。若いお前なら、適任だ。死人がのこのこ出ていって、人探しするわけにはいかないからな」››
ブラック企業に追い詰められ、借金をして売上を補填し続けた達希は、しぶしぶ祖父の提案を受け入れる。
向かったのは、若き日の勉が従軍していたボルネオ島。
そこには、この旅に祖父が託した本当の目的が隠されていた。
今まで決して口にすることのなかった、「知られざる謀略事件」とは・・・・・・。
そして、そこに隠された、祖父の過去にまつわる真実とは・・・・・・。
この物語のモチーフにはなったのは終戦間近のボルネオで実際に起こった「ポンティアナック事件」。
戦時中、勉がボルネオで体験した悲惨な戦闘と、現代の達希がブラック企業から受けた不条理が、交互に描かれます。
一部の上層部の利益や保身のために、力のない若者や立場の弱い人間ばかりが犠牲になる。
その図式は、今も昔も変わりません。
解説は堀口ミイナさん(キャスター・タレント)。
「色々なことを考えるきっかけとなった本だった。結論として、出合えてよかった、と思える一冊だった。
最後に。この物語を読んで、私がいちばん心に残っているのは、インドネシアの美しい描写だった。特に勉が過ごしたまだ平和なころのボルネオ島の、ピンク色のブーゲンビリアや真紅のハイビスカスが咲き乱れる南国らしい風景や、甘いチョコレートとコーヒーの香り。かと思えば、達希が旅した、色とりどりの果物が並ぶ市場のようなターミナルや、彼が思わずスケッチした熱帯の木々と雄大な大河。
情景がそのまま目に浮かび、いつかここを旅してみたい! と心から思った。達希が、勉と旅する中でさまざまな人に出会い、戦争のことを知ったように、私も、物語の舞台となった地を自分の足で歩き、その空気を肌で感じたい。旅から帰ってきたら、またあらためてこの本を読んでみようと思っている」
心に沁みる反戦と命の賛歌。
感涙必至の人間ドラマです。
著/古内一絵
★こちらもオススメ!
・藤田菜七子騎手も共感! 女性ジョッキーの苦悩と葛藤を描く『蒼のファンファーレ』
・3月10日東京大空襲の日「病院は1000人をこす負傷者であふれかえっていた」。故・日野原重明著『戦争といのちと聖路加国際病院ものがたり』
・23人の戦争体験談に元「敵国」の詩人が耳をすませた『知らなかった、ぼくらの戦争』が売れ続けています!
・世界に向けて「人種平等」を初めて訴えた日本は欧米から嫌われた?『東京裁判をゼロからやり直す』
・戦後日本人はなぜこの男の存在を忘れてしまったのか――。知られざる“良識派"軍人の初めての本格評伝『多田駿伝』
関連リンク