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2017.6.6
「人民元」は世界経済の主役に躍り出ることができるのか? 人民元全150年の物語をつづる。『人民元の興亡 毛沢東・鄧小平・習近平が見た夢』
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キーワード: 中国 国際 ノンフィクション
通貨人民元を追いかければ、中国という国が見えてくる。
計7年間にわたり、朝日新聞・中国(北京・上海)特派員を務めた著者が、通貨を通して国を、経済を、中国指導者を映した圧巻のノンフィクションが誕生しました!
‹‹国家の信用を背景に発行される通貨には主権が色濃く宿ります。国籍と国際がまじりあう場です。人民元を通じて、中国という国のありよう、そして、国を形づくる人々のありようを伝えたいと考えました››
毛沢東がお札の顔になることを何度も拒んでいたのはなぜか?
建国から十年も経ってから最後に人民元圏に組み込まれた地域はどこだったか?
鄧小平がゴーサインを出したのに、見送られた幻の人民元ってなんだろう?
習近平が人民元の顔になる日は来るのか?
取材期間20年、著者は何度も何度も泥沼にはまりながらも、その秘史に分け入ります。
‹‹人々の日々の営みや経済活動はもちろんのこと、歴史や政治、外交、日中関係も交差する通貨人民元を追いかければ、中国の全体像に少しでも近づけるかもしれない››
毛沢東が統一の「象徴」として産み落とし、鄧小平が「改革開放」のために育み、習近平が「世界制覇」の足がかりとした「人民元」。その正史をたどりつつ、戦前、「反日通貨」としてばらまかれ、戦後、「円」の盛衰を反面教師にしてきた裏面史もあきらかに。
人民元から歴代指導者たちの頭の中を覗きみる。
本書を読み進めると、ときに毛沢東、鄧小平、習近平ら歴代指導者たちの頭の中を覗きみるような感覚にとらわれます。たとえば、毛沢東がお札の顔になることを何度も拒んでいた理由について――。当時(共産中国発足直後の1949年)、今日の中国からは考えづらいですが、共産党のほか、中国民主同盟など民主党派や少数民族なども政府の会議に出席していました。つまりは、全中国の力を結集する必要があったのです。だから、「共産党のリーダーを紙幣の顔にはしないほうがよい、という判断があったのではないか」とする研究者の声を筆者は紹介しています。
毛がはじめて紙幣に登場したのは、1987年から発行された紙幣シリーズです。文革後の混乱がようやく収まり、毛らの政治的な評価がすでに定まった頃でした。一方で、このシリーズでは、毛以外にも、ウイグルやモンゴルなどの少数民族や、農民や工場労働者などの横顔が記された紙幣がありました。
階級や民族の「団結」が強く意識されるとともに、文革というトラウマを経て、そろそろ前に歩きだそうという意志を感じます。それから12年後の99年、紙幣を毛沢東に統一。国家としての自信を備えたからなのか、紙幣の顔には「世界中でもっとも知られている人がふさわしい」という意見が、党の要職を務めた長老たちから寄せられたといいます。現在、みなさんがよく知る紙幣です。この統一をきっかけに、強き中国は、反面、労働者や農民、少数民族を切り捨てた、といえなくもありません。
さて、次なる紙幣には、誰の顔が刻まれるのでしょうか。また、人民元は世界経済の主役に躍り出ることができるのでしょうか?
「物語」のように紡がれた通貨と権力の大河ドラマ!
人民元全150年史を描いた歴史書としても、中国経済の趨勢を描いたビジネス書としても、毛沢東から習近平に到る歴代指導者の人物列伝としても、本書は読むことができます。
『人民元の興亡 毛沢東・鄧小平・習近平が見た夢』 著/吉岡桂子
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