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2017.1.20

いきものがかりの未来はどこにある? リーダー・水野良樹が語る"J-POPのありか"(3/3) 『いきものがたり』

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キーワード: 音楽 エンタメ 自伝

いきものがかりの未来はどこにある? リーダー・水野良樹が語る"J-POPのありか"(3/3) 『いきものがたり』

2016年大晦日

「NHK紅白歌合戦」に

9年連続となる出場をはたした

いきものがかり。

彼らの"ものがたり"を語った

『いきものがたり』を刊行した

グループのリーダー、水野良樹さんに、

類いまれなる人気グループの誕生秘話から

デビューまでの苦悩、J-POPの未来を

直撃するインタビュー連載完結です!!

第1弾:いきものがかり結成、

そして、楽しい思い出として解散!

第2弾:再結成を阻んだもの。

3人を新たに結びつけたもの。

そして、今回の第3弾は、

デビュー曲の制作秘話、運命の人、

10年後の自分へ・・・。

 

長く、つらい育成期間・・・

 

SOL 再結成した3人は

迷いなく、音楽への道へと

突き進んでいきます。

成功する自信はあったんですか?

水野 根拠のない自信だけはありました(笑)。

大学に通いながら、就職をしないって

大きな決断のように感じられるのですが、

なんとかなるだろう、って感覚でした。

当時、僕と山下は20歳だったので、

とりあえず、30歳になるまで

活動できていたら成功だな、と思い、

「10年」を目標にしました。

SOL その後、いきものがかりは

芸能事務所「キューブ」との契約、

EPIC Recordsからのメジャーデビューを

勝ち取ります。傍からみると、

トントン拍子のように見えますが、

そこからが大変だったんですよね?

水野 長くつらい育成期間でした。

それだけ当時の僕らには足りない部分が

たくさんあったんです。

SOL 初代ディレクターがものすごく

厳しい人だったとか?

水野 厳しかったですけど、

それだけ本気で向き合ってくれたことに

感謝しています。

SOL 著書には、昼からスタジオに入って、

朝まで練習して、そのまま寝ないで

大学に行った日もあると書かれていましたが、

よく卒業できましたね?

水野 大変だったのは

覚えているんですけど、

そんなに勉強した記憶もあまりなくて、

元来、負けず嫌いな性格なので、

その気持ちだけで

くらいついていたんでしょうね。

SOL 同級生はデビューすることを

知っていたんですか?

水野 ほとんど知りませんでした。

周りのみんなが名の知れた会社や

きちんとした仕事についていくのを聞くと、

彼らに負けたくない!

そんな気持ちがわいてきました。

SOL 吉岡さんも、夜が深くなるまで

歌い続ける毎日だった事実にも驚きました。

水野さんがこの子じゃなきゃダメだ、と

こだわり続けたシンガーですし、

今の歌のうまさだけを見ていると、

ついつい才能だけに目がいってしまいますが、

努力に裏打ちされた実力なんだと思いました。

水野 傍から見ていても過酷そうでしたが、

あの期間があってよかったな、と思います。

 

デビュー曲「SAKURA」制作秘話

 

SOL 水野さんも、デビュー曲

「SAKURA」の歌詞をディレクターの指示で、

40回も書き直ししたんですよね?

(『いきものがたり』の中に、水野さん自筆

による「SAKURA」制作メモを掲載)

水野 野球でいう千本ノックみたいな

状況でした。

SOL 出版界でもそこまでつきあう

編集者はなかなかいないと思います(笑)。

水野 すごいですよね。最初から最後まで

いっさい手を抜かず、真剣でしたから。

途中、ケンカのように語気が

強くなってしまったこともありますが、

本当に感謝しています。

SOL 時間をかけた甲斐があって、

「SAKURA」はデビュー曲とは

思えない完成度で、長く歌い継がれる

名曲となりました。

水野 J-POPバンドと名乗る僕らが

すでに多くの名曲がある

「桜」というモチーフに対して

逃げずに戦ったことは、

10年たったいま、ふりかえっても、

いい選択だったな、と思います。

SOL 水野さんが「SAKURA」に

込めたメッセージは?

水野 あの「SAKURA」は歌詞のとおり

僕らの地元が舞台なんですが、

僕にとっては大学があった

国立の桜の記憶でもあるんです。

ちょうどデビューの時期が

大学の卒業式の頃だったので、

同級生に胸をはれるように頑張りたい!

という、思いも込められています。

 

運命の人は初代マネージャー

 

SOL この10年をふりかえって、

水野さんにとって、

運命の人って誰ですか?

水野 たくさんいます・・・。

山下、吉岡との出会いは当然なんですけど、

大本をたどればやっぱり、

僕らの初代のマネージャーさんです。

神奈川の片田舎でよくわからないことを

やっている大学生を面白そうだな、と

思ってくれなければ、

すべては、始まっていないですし、

そのあと訪れるたくさんの方との

出会いもなかったと思います。

SOL 本に登場された方ですね。

厳しさと優しさをもち合わされた方だ

と聞いています。

水野 おっしゃるとおりです!

いきものがかりの"母"的存在でした。

プロとしての視点、

客席のファンからの視点、

両方をもち合わせていて、

いつも的確な意見や

声をかけてくれました。

僕らの10周年の日に

感謝のメールを送ったら、

「みんなへの恩返しはたくさんしたから、

今度は自分たちひとりひとりのために

頑張りなさい」とメールをいただき、

涙がこぼれそうでした。

SOL あらためて「いきものがかり」の

J-POPってなんでしょう?

水野 「みんなが聴きたいと

思っているものを、適度な温度で伝える」

それは、ずっと大事にしています。

 

また本を書いてみたい!

 

SOL 自伝『いきものがたり』を

書いてみた感想はいかがですか?

水野 いやー、本って大変ですね。

でも、音楽とは違う刺激をもらいました。

本ができる過程も知られて新鮮でしたし。

「本づくり」という体験を、

この本の続きとして書きたいくらいです(笑)。

SOL 次回作の予定は?

水野 機会があったら書いてみたいです。

山下や吉岡の視点で書いた自伝も読んでみたいな。

SOL 読者からの感想は届いていますか?

水野 はい。どこのどの部分のエピソードが

よかったとか、あの言葉に感動したとか、

Mステに初めて出たときの描写がよかったとか

けっこう細かく言ってくれるんですよね(笑)。

音楽でBメロのベースがよかった、

みたいなことはめったに言われないので、

新鮮に感じました。

 

10年後の自分へ・・・

 

SOL これからも老若男女から愛される

バンドでいてください!

水野 ありがたいことに、老若男女とか

安心して聴ける、と言ってもらえますが、

そこで安心してしまうと、

自分たちも成長できないので、

そうじゃない自分も探していかなきゃ、

と思っています。

SOL あまりハラハラさせるようなことは

してほしくないバンドではあります(笑)。

水野 いやいや、そんな人に誇れるような

真っ当な人生は送ってないですよ。

曲のイメージがきれいだから、

そう思われますけど、

汚いところだってありますし、

勉強やらずに、バンドにのめりこんで

いたから浪人もしましたし。

SOL ここからさらに10年後に書いた

自伝も読んでみたいです。

今後のビジョンは何かありますか?

水野 10年を目標に頑張ってきたんですが、

もっと続いている先輩たちがいて、10年で

本を出したことが恥ずかしくなりました。

この前出たイベントで一緒だった

PUFFYさんは20年、

エレファントカシマシさんは30年ですよ。

本当、困っちゃいますよね。

それでも、10年後、この本を読んで

「なに、青臭いこと言ってたんだろう!」

って言える自分、そして、

いきものがかりに、なっていたいです。

 

『いきものがたり』

著/水野良樹

「いきものがかり」のリーダー・

水野良樹さんによる自伝的ノンフィクション。

一言一句、本人が書き下ろした作品です。

カバー、および本文中のイラストは、

コンドウアキ氏。デビュー前の

初公開秘蔵写真も多数収録しています。

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