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2017.1.19

伊藤若冲が寄り添わずにはいられなかった女とは? 若冲の素顔と秘密に迫った『遊戯神通 伊藤若冲』

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キーワード: 小説 美術 アート

伊藤若冲が寄り添わずにはいられなかった女とは? 若冲の素顔と秘密に迫った『遊戯神通 伊藤若冲』

あなたの知らない

若冲をお見せしましょう!

 

明治37年、セントルイス万博に

突如「若冲の間」という

パビリオンが出現する。

「なんで若冲はんを・・・」。

当時、没後100年のときを経て、

伊藤若冲の名は忘れ去られつつあった。

この時「Jakuchu」の名を世界に広めたのは

誰だったのか? 多くの美術関係者が疑問に

感じたのと同じく、京の人気図案家・

神坂雪佳(かみさかせっか)も

不思議に感じていた。

 

‹‹雪佳​はもちろん伊藤若冲という

〈絵描きはん〉の名は知っている。

作品も見ている。おそらく絵師として

雪佳​自身もどこかで影響を受けているだろう。

だが、その実像は身近な存在すぎて

改めて考えてみたこともなかった。

雪佳​にとって〈若冲はん〉は、

のっぺらぼうのようにぼんやりとした

はっきりしない存在で、それなのに気付けば

〈若冲はん〉の描き残したものだけが、

一人歩きして雪佳​の身の回りを浮遊している››

 

もやもやした思いでいた雪佳はある日、

「若冲の間」の仕掛け人のひとりである

三原繁吉から紹介された「若冲の末裔」という

芸者・玉菜から、「若冲の妹」と呼ばれた

美しい女性の話を聞く。

 

「気に入ったもんは

自分のものにせえへんのや」

 

宝暦13(1763)年、京都錦の青物問屋

「枡源(まずげん)」に、ひとりの少女が

やってきた。その名は美以(みい)。

不思議な芳香が漂う彼女に与えられた役目は

庭にいる鳥と草花の世話。

「枡源」の主・若冲は、作製中の

「動植綵絵(どうしょくさいえ)」を見せるなど、

美以のことを何かと気にかけていた。

ところが、若冲は彼女を自分の弟・

宗右衛門(そうえもん)に与えてしまう。

 

‹‹「あんたのことが気に入ったんやろ。

兄さんは、おかしなところがあってな、

気に入ったもんは自分のものにせえへんのや。

周囲を見回して一番似合いやと思う人に

やってしまう。昔からそうやった」

 そして、若冲は自らは何も持たない。

 何にも執着しようとしない。

 まるで修行僧のように頑なにそのことを

自分に課している。

 なぜなのか、誰にも分からなかった››

 

美以は若冲のことを想いながら、

宗右衛門と形だけの夫婦を続けていくが・・・。

 

ひとりの人間、ひとりの男、

若冲とはどんな人物だったのか?

「若冲の弟」の出生の秘密、

「若冲の妹」の匂いの由来とは?

時空を超え、魅了し続ける

その素顔と秘密に、江戸と明治

ふたつの時代軸で迫った

渾身の書き下ろし小説!!

 

『遊戯神通 伊藤若冲』

著/河治和香

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