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2016.10.19
荒木経惟、森山大道らが輩出。日本の写真史を切りひらいた男の生涯を追う。『写真をアートにした男 石原悦郎とツァイト・フォト・サロン』
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キーワード: 写真 アート 人物評伝
「パリに最初に紹介してくれたのは
悦郎さんだった。パリにもつれてってくれた。
サン・ドニもおしえてくれた。なんてったって
悦楽の悦郎だもんね。
ツァイト・フォトでビル・ブラントとの2人展を
してくれた。うれしかった。で、いま
ギメ美術館でARAKI展をやっている。
石原悦郎さんのおかげだ」(荒木経惟)
常に最先端写真の場だったツァイト・フォト
1978年に東京・日本橋室町に、日本で最初に誕生した写真のコマーシャル・ギャラリーである「ツァイト・フォト」を創設した男・石原悦郎(1941~2016)。
アンリ・カルティエ=ブレッソン、ブラッサイ、マン・レイ、アジェ・・・フランスの巨匠らの作品を持ち込み、オリジナル・プリントで展示! 誰もが一度は写真集などの印刷物で目にしたことのあるような圧巻のコレクションでした。
80年代に入ると国内の作家に目を向け、荒木経惟、森山大道の作品展を開催し話題に。
石原がフランスで世界的巨匠であるアンリ・カルティエ=ブレッソンやブラッサイらと交流し、その経験を国内作家にも伝えながら、独自に「アートとしての写真」を広めようとした活動は、結果的に植田正治を世界に発信し、荒木経惟、森山大道といった世界的写真家の輩出という大きな果実をもたらします。彼らがその後の日本写真界をリードしてきたのはいうまでもありません。
80年代半ば以降には、駆け出しだった柴田敏雄、畠山直哉、松江泰治らがデビューし、写真界の芥川賞とされる木村伊兵衛写真賞をはじめとした写真賞を次々に受賞! 彼らを束ねた「ツァイト・フォト」は、その最先端にいました。
一見すると、順風満帆に見えますが、石原が写真画廊をはじめたころは、写真がまだ雑誌のための印刷原稿の域にとどまり、オリジナル・プリントに対して、芸術的な価値はまったく認められていませんでした。
彼はいかにして、今日のように写真家がアーティストとして活動し、写真が芸術作品として社会に認められるような状況を作り出したのでしょうか。
‹‹本書では4年間にわたるインタビューから得られた彼の発言をもとに、その軌跡を可能な限り描写してきましたが、38年間に及んだ画廊のすべてを語りきることは到底むずかしく、石原さんが関わった展覧会の全記録を巻末のリストに添えることでその史実を補うことといたしました。リストを眺めていただければ、ツァイト・フォトがどれだけ多くの作家たちと関わりをもってきたかが見えてくると思います。今までそしてこれから生まれてくるあらゆる写真芸術は、源をたどると石原悦郎という人物の成した事柄の上に成り立つものだと、本文とリストを通じて感じていただけると思います。まさに写真界のパイオニア的存在です››
写真がアートになるために必要なことを総合的にプロデュースした石原悦郎。
日本写真史の影の立役者=石原の生涯を追うことで、日本写真史を立体的に描くことを試みた永久保存版の一冊です。
著/粟生田弓
友人作家が集う - 石原悦郎追悼展"Le bal"開催!
■日時:~11月12日(土)「scherzo」/
11月18日(金) ~12月22日(木)「adagio cantabile」
■会場:ツァイト・フォト・サロン
東京都中央区京橋3-5-3 京栄ビル1F
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