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2016.8.29

「お父さんに怒られる」吉田沙保里を霊長類最強に育てた育成術! 『12歳の約束 そして世界の頂点へ』

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「お父さんに怒られる」吉田沙保里を霊長類最強に育てた育成術! 『12歳の約束 そして世界の頂点へ』

「天使と悪魔」父と母の役割分担!
 
‹‹「生まれたときから家にレスリングマットがあって、兄2人と私の3人で一緒にやっていました。自分では覚えていませんが、おむつをつけているときから母と一緒に練習を見ていたそうです。私の家では、レスリングが生活の一部でした」››
 
 リオデジャネイロ五輪の女子レスリングで、4連覇はならなかったものの、見事銀メダルを獲得した吉田沙保里選手。彼女の両親は、父・栄勝さんがレスリングの元全日本チャンピオン。母・幸代さんがテニスで全国大会に出場したことのある、バリバリの体育会系の家庭で育ちました。冒頭のレスリング道場は自宅の中にあり、気がついたら道場で体を動かしていたそうです。その後も学校が終わるとすぐに家に帰り、まずは水泳、書道などの習い事、夜7時からはレスリング教室の毎日・・・。
 
 ところが、小学校高学年になって塾にも通うようになると、それまでよりも友だちと遊ぶ時間が少なくなってしまい、母に「レスリングやめたいな」と弱音をはくようになります。しかし、実際にやめるわけではなく、そこで止まっていました。母から「やめたいの? じゃあ、お父さんに言いなさい」と返されると、何も言えなかったのです。
 
‹‹「父はとにかく怖かったんです。家では父が言うことは絶対でした。だから、父にはレスリングをやめたいとはとても言えませんでした」››
 
 吉田家では子育てに関して両親がきっちりと役割分担をしていたのです。お父さんは怖い。けれども、どんなにお父さんが厳しくても、お母さんはそんなお父さんをしっかり立ててる。「お父さんはあなたのために言っているんやで」。ときには厳しい父に叱られてションボリすることもあった沙保里選手でしたが、母に抱きしめられると気持ちが穏やかになっていました。
 
 
‹‹「自分もいつかはこういうお母さんになりたい」››
‹‹「怖いだんなさんはイヤですね。やはり、優しいだんなさんがいいです。自分はお母さんのように、だんなさんを大事に立てる奥さんになりたいです」››
 
 ロンドンオリンピックで3個目の金メダルを獲得してから1年半がすぎた2014年3月11日、沙保里選手を突然の悲しみが襲いました。父を病気で亡くしたのです。数日間は食事がのどを通りませんでした・・・。
 
 自身にとって4度目のオリンピックとなるリオデジャネイロでの戦いに向けて、「父と一緒に戦うつもりで臨みたい」と語っていた彼女。
 
 決勝で惜しくも敗れた沙保里選手は、母・幸代さんに抱きしめられながら、こう言いました。
 
 
「お父さんに怒られる」「金メダルを取れなくてごめんね」と。
 
 
 厳しさと優しさを兼ね備えた両親に見守られながら、彼女の終わりなき挑戦は続いていきます。
 
 
小学館ジュニア文庫
著/矢内由美子 著/寺野典子 イラスト/石野てん子

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