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2016.9.2

商業登山隊、現地ポーターとの確執・・・エベレスト登山の真実とは? 『エベレスト・ファイル シェルパたちの山』

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キーワード: 冒険小説 シェルパ エベレスト ヤングアダルト マット・ディキンソン 登山

商業登山隊、現地ポーターとの確執・・・エベレスト登山の真実とは?   『エベレスト・ファイル シェルパたちの山』

華々しいエベレスト登頂を支える「シェルパ」の存在

 

 ネパールの僻地に衣料品を届けるボランティアをしているイギリス人青年のライアン。彼はそこで出会った少女の頼みにより、彼女の恋人だったカミという少年の消息を訪ねる旅に出る。ようやく探し出したカミは、ある事件のあらましを語り出す・・・。

 

 幼い頃に親が決めた結婚を解消して、好きな相手と結ばれたいと願うシェルパの少年カミ。そのためには、すでに支払われている花嫁持参金の3倍額を返さねばならない。そんな彼に「エベレスト登山のポーターにならないか」という、願ってもない申し出がやってくる。ポーターは地元の少年のあいだでもあこがれの職業で、みごと登頂に成功すれば莫大な報酬が約束される。しかも今回の雇い主は、次期アメリカ大統領選の有力候補・アレックス・ブレナン。鳴りもの入りではじまったエベレスト登山に、ポーターとして意気揚々と挑戦するカミだったが・・・。

 

  「シェルパ」とは、エベレスト登山には欠かせない荷物運びをする人たちのこと。もとはエベレスト南麓に暮らす少数民族の名称でしたが、今では、標高の高い土地で育った身体能力をいかして高地登山をサポートする人たちのことを指します。エドモンド・ヒラリーのエベレスト初登頂成功にシェルパのテンジン・ノルゲイが重要な存在だったように、エベレスト登山にはシェルパの存在が欠かせません。貧しさゆえに、命がけの登山を生業にしている彼らと登山家たちの人間模様を描いた冒険小説です。

 

綿密な取材をもとにしたリアルな冒険小説!

 

 作者マット・ディッキンソンは、映画監督(もっとも有名な作品は『サミット・フィーバー』)であり、ナショナルジオグラフィックテレビのプロデューサーという経歴柄、綿密な取材をもとに、本作を創作。彼自身、映画撮影の中で、北壁ルートからエベレスト登頂に成功しています。

 

 本書では、その経験を生かしてエベレストをとりまくさまざまなドラマや、美しくも厳しい自然をリアルに描写。ハラハラドキドキ! 人間の夢と野望を鮮烈に描いた迫力満点のエンターテインメント作品です。

 

 また、外国人の商業登山家とシェルパのあいだで起きるトラブルもストーリーに取り込み、社会派ドラマの側面もあります。

 

『エベレスト・ファイル シェルパたちの山』

作/マット・ディキンソン  訳/原田 勝

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