物心がついたばかりの人間が大人になるまで。その、身近でありながら壮大な物語にとてつもなく心が震えました。
現実は容赦なく、必ず誰かが助けてくれるなんて事はない。その残酷さを描きながら、少しずつ登場人物たちが変わっていって、未来に希望があるんだと信じさせてくれるこの作品が、とても大切で大好きです。
やせ細ってしまった心へ栄養満点のごちそうをとどけてくれる小説です。
喜久屋書店 小樽店 渡邊裕子さんおいしくて、ほっこりゆるふわな本かと思ったら、自分でもびっくりするくらい、わんわん泣いてしまいました。これは、私の中の町田そのこ作品No.1です!
食べることは、生きること。これは町田そのこさんの作ってくれた、心のごはんだ。料理された言葉たちが、染み渡るように心に広がり、満たされて、生きる力が湧いてくる。なんて栄養満点なんだろう。そのあたたかさに、じんわりと心が浄化されていく。
心から想い、労るその気持ちがあれば、その人を包みこんでくれる料理をきっと作り出せる。想いの込もった料理は、空っぽのおなかの真ん中にじーんと広がり、心に栄養を届けてくれる。
あたたまった心から、「生きてゆける」そんな希望が生まれる物語。
誰かと食卓を囲んで食事をするって、みんなで一緒に生きていくことなんだなって、そんな風に思いました。本当に大好きな作品です。早く多くの方へ届けたいです。
「大人になる」ってどういうことだろう。
いくつになっても人は未熟だ。周りがみえてなかったり、自分のことでいっぱいいっぱいだったり。それでも人のために手を差し伸べてあげられる人、真撃に向き合える人、そして一緒になって正しい方向へ導いてくれる人。そういう「誰かの為にできること」が増えることが「大人になる」っていうことなのかもしれない。
子どもはもちろんたくさん未熟な大人が出てきてみんな悩んでる。困ってる。まずはしっかり食べて、体に栄養与えて、それから一緒に考えよう。やっちゃんの優しさは無限大で、まるで自分もその優しさに包まれているような感覚でした。心があったかくなる作品。
まず最初に、プルーフの表紙、章題、あらすじを読んで、勝手にほっこりな話が盛りだくさんと思っていましたが、完全にだまされました。
ボディにずどん!と打ち込まれるような重い話にやられたと思ってしまいました。しかし、
不器用でいびつな母と娘を書かせたら町田先生に敵う人はいないと断言します。さすがですね。宙の目線に立てば、なんで子どもばかり辛い目に遭わなきゃならんのか…と胸が苦しくなりました。
しかし、花野サイドに立ってみれば、大人だからってなんでも乗り越えられる訳じゃないよって分かるわけで、人生ってうまくいかないなって思ってしまうわけです。
この物語のキーマンは絶対的にやっちゃんで、食べることは生きる事で命なんだと実感させられました。
美味しいものを大切な人と食べるって正義なんだと思います。
素敵なお話、ありがとうございました。私の母としての誕生日(娘の誕生日です)に店頭に並ぶ不思議な縁をいただいたなと思います。
大人って子どもだなぁ、子どもって大人だなぁとしみじみ思いました。
こんなにも温かく胸がいっぱいになる作品を生み出してくれてありがとうございます。きっとこの作品は誰かの心も優しく包んでくれると思います。
※2022年単行本に刊行に際しての感想コメントです。