
ポケモンが好きすぎて、絵本のオファーを最初は断った!?
———ポケモンのゲームの物語をなぞる絵本やアニメ絵本ではないので、今回のこの絵本はインパクトが強いですね。

株式会社ポケモンさんから「これまでのポケモン絵本とは違う新しい表現の絵本を」という企画でオファーをいただいたのですが、最初はお断りさせて頂いたんです。
そうそう、すっごいうれしかったんですけどね。ポケモンにはすでに世界がありますし、私たちは私たちの世界があるし、交われないんじゃないかな、と思ったんです。
一枚絵でポケモンのキャラクターを描く、という絵のコラボだったら、ぜひやりたい!と思ったんですけどね。ポケモンの世界にあるお話をぼくらがなぞって絵本を作るっていうのはちょっと違うんじゃないかな、と思って。
ポケモンが好きで知っているからこそ、できない、と思ったんです。2、3回断ってしまったのですが、それでも描いてほしいと言ってくださって。断りながらも、自分たちがやる意味があるようなポケモンの絵本ってどんなんだろう?ってずっと考えていました。
もともとぼくら、田尻智さんが好きで、本も読んでいたんです。本によると、田尻さんが子どものころ昆虫採集したときのことや、小さいときの感覚や記憶がゲームに生かされているそうなんですよね。ああ、だからぼくもポケモンのことを考えると子どものころを思い出しちゃうのかな、って思うんです。
そうそう。それで、もう、あのときの感覚には戻れない、大人になってしまった自分たち、というテーマだったら、今の私たちが描く意味があるな、と気づいたんです。
それは、実際にポケモンをやって子ども時代を過ごしてきたぼくらにしか描けないな、と。
子どものころに心底大好きだったポケモンの世界。でも大人になるにつれていつしか離れていく。でも、また再び、なつかしさと共に、自分たちの子どもと一緒にポケモンの世界を訪れる、というような。
ポケモンと遊んだ子どもの成長と、別れの切なさと、次世代に手渡す希望のようなものを描きたいと思ったんです。
———あのころの感覚を思い出しながら、いま『ポケモンのしま』を描いているんですね?
すごく、思い出します。伝わればいいですけどね。でも、個人的な想いが強いから、これがどう届くかは、正直分からないんです。
この絵本を読んで子ども達がどう思うかは、あんまり考えられていないかもしれない。自分たちの想いが強すぎる絵本です(笑)。
ぼくらと同じように、あのころポケモンが大好きだった子ども時代を送り、成長するにつれてポケモンから離れて、でも今また、お子さんができたりしてポケモンが身近になった大人の人たちにも、ぜひ手にとってほしいです。
(聞き手/小学館 田中明子) ※画稿は取材時、監修中のものです。

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