“人生に「もしも」はない。私たちの家族のひとりが「もしも…」と口にした時点で、きっと私たちの間で何かが壊れる。それが「何か」はわからないけれど、私たちの誰もが、この言葉を口にしたことがない。でも私は思ってしまう。もしも兄が帰国していなかったら?(本文より)”。総連幹部だった実父への複雑な愛を描いたドキュメンタリー映画『ディア・ピョンヤン』で数々の賞を受賞したヤン ヨンヒ監督。8月公開映画『かぞくのくに』(ベルリン国際映画祭国際アートシアター連盟賞受賞)では1970年代の帰国事業で北朝鮮に渡った兄を描いた。その「かぞくのくに」の原作本として、会えない兄たちへの愛を綴った本作。思想と国家によって引き裂かれていく人々の姿を通して「家族」とは何か、「国」とは何か、人生とは何かを問いかける感動作。
■この本の推薦者 映画監督 ヤン ヨンヒさん
1964年11月11日大阪府大阪市生まれ。在日コリアン2世。幼い頃、3人の兄が帰国事業で北朝鮮へと渡る。大阪朝鮮学校で国語教師を務めたのち、劇団女優、ラジオのパーソナリティを経て、ドキュメンタリーの映像作家に。テレビ朝日の「ニュースステーション」キャスターなど報道番組で活躍する。