お知らせ

2022.9.12

「後悔は一切ない」彼女たちが大金をホストに捧げるワケ。『ホス狂い』

この記事は掲載から10か月が経過しています。記事中の発売日、イベント日程等には十分ご注意ください。

キーワード: 社会 時事 ホスト 恋愛 マネー お金 歌舞伎町 ルポルタージュ

「後悔は一切ない」彼女たちが大金をホストに捧げるワケ。『ホス狂い』

借金、殺傷、自殺未遂・・・「ホスト」に〝狂った〟それぞれの物語。

身を粉にして稼いだお金を、ホストに捧げる女性たちがいる。

通称=〝ホス狂い〟。

新型コロナが到来する以前も、未知のウイルスだと騒がれた頃も、第7派が到来している現在も、その情動は変わらない。

彼女たちは何を求めて夜な夜なホストクラブに通うのか。

興味を引かれた筆者は、歌舞伎町に住み込み、〝ホス狂い〟たちに取材を重ねた。

そこには、全てを投げ打つだけの「理由」が存在した・・・。

 

«「この人が〝私の王子〟です」

ここは歌舞伎町の有名ホストクラブだ。

漆黒で固められたインテリアの中央には、宇宙をテーマにデザインされた豪華なシャンデリアが煌めき、その下には、「日本一」とも言われる店名のロゴが輝いている。

2021年9月末、私は「ホス狂い」ねねさんとともに、同店を訪れていた。

「ホス狂い」とは、文字通り「ホスト」に「狂う」こと。歌舞伎町のホストクラブで大金を使う彼女たちは、「私、ホス狂いなんで」と自嘲的にも、またどこか誇らしげににも「ホス狂い」を自称する。25歳という年齢のわりに大人びているねねさんだが、指名する「王子」の前では、カレの一言一句に耳を傾け、小さな顔をちょこんとカレの肩にのせる。普段の様子から一転、「恋する女のコ」に〝豹変〟するのだ。»

(本書「プロローグ」より)

 

【本書に登場するホス狂い】

■ ホストの腹部をメッタ刺しにしたガールズバーの元店長

警察に連行される被告がうっすらと笑みを浮かべていたことや、ぐったりと横たわる被害者のそばで、両足を血に染めた被告が平然とたばこをくゆらす写真がSNSで拡散されたことから大きな話題になった事件。容疑者の女性は動機について「好きで好きでしょうがなかった」と供述するとともに、被害者ホストへの謝罪文には「2か月という短い間でしたが、夢のように幸せな時間をありがとうございました」と綴られていた。

 

■ ホスト遊びをコントロールしていたはずが、夫婦で貯めていた金に手をつけて・・・

「夫は、私の使い込みや、歌舞伎町でのホスト遊びをすべて知った上で、それでも夫婦生活を続けていこうと言います。でも、私はもう無理です。

歌舞伎町やホストと関わらなければ、私自身、人生を見直すこともなく、くすぶった生活を送っていたと思う。そう考えると、辛い思いもしたけれど、みんなと出会えてよかった。これからは歌舞伎町で生活していこうと思います」

 

■ 1年半で100軒以上の店舗を制覇した「ホス狂いユーチューバー」

ゴミ屋敷、虐待、いじめ・・・壮絶な半生を過ごして福井を飛び出し東京へ。歌舞伎町が唯一の〝居場所〟となり、ホス狂いユーチューバーとして活動。「今ではもう〝ホス狂い〟はひとつのジャンルであり、ブランドになっていると思う。歌舞伎町でお金を稼いで、お金を使う。この町ではお金を回すことが、正義であり、〝仕事〟なんです。〝ホス狂い〟はまず、どんな形であれ稼いでいて、お店でお金を使っていなければ名乗れない」

 

■ シャンパンタワー代は母のカンパ。何度自殺未遂をしても〝担当〟しか愛せない。

「カレとの問題は、すべて、お店で私がお金を払えば解決する。支払った分の〝見返り〟があるのは当然でしょう? 昔からの地元の友人から『どうして彼氏にお金を払うの? 2人の間に大金が介在したら、それは〝恋人同士〟とは言わないんじゃないの?』と言われたことがありますが、〝ホスト〟と〝姫〟の関係であれば、お金を払えば、すべての問題は解決するんです」

 

 

■ 圧倒的な美貌と財力を武器に人気ホストの〝彼女〟の座を手にした売れっ子AV女優

「正直、億は使ったと思います。でも、後悔は一切していません」ホストに一目惚れし、初対面で交際に発展。彼を応援するため、AV、パパ活、デリヘルを掛け持ちして働いた。「でも、〝結婚する〟って話していたのに、じゃあ、入籍は? とか式はいつ、どこでとか、具体的な話が彼の口から出ることは、最後までありませんでした」

 

お金も時間も労力も体も、人生のすべてを賭けてホストクラブに通う女性たちは何を得ようとしたのか。

そして行き着く先はどこなのか。

渾身の歌舞伎町ノンフィクション。

ホス狂いたちの生態のみならず、日本イチの歓楽街を根城にしたリアルな生活や、シャンパンタワー職人のルポも一読の価値あり。

 

小学館新書

『ホス狂い

~歌舞伎町ネバーランドで女たちは今日も踊る~』

著/宇都宮直子 

 

【著者プロフィール】

宇都宮直子(うつのみや・なおこ)

1977年千葉県生まれ。多摩美術大学美術学部卒業後、出版社勤務などを経て、フリーランス記者に。「女性セブン」「週刊ポスト」などで事件や芸能スクープを中心に取材を行う。

 

★ こちらもオススメ!

アルバイトは正社員を「アマゾン様」と呼ぶ。『潜入ルポ アマゾン帝国の闇』

 

思春期の脳は制御不能、マニュアルなしでは【取り扱い要注意】『思春期のトリセツ』

 

作家・道尾秀介がその取材力に涙した「逃走犯たちのリアル」『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』

 

人はなぜ騙されるのか?『フェイク ~ウソ、ニセに惑わされる人たちへ~』

 

ドヤ街の希望と理想だった男が教えてくれたこと。『マイホーム山谷』

関連リンク