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2022.8.9
この世界は本当にひとつなのだろうか。白石一文著『道』
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キーワード: 小説 タイムリープ 家族 白石一文
人生を書き換えた男の物語。
男は、どん詰まりの場所にいた。
二年半前の大学生だった娘の交通事故死。
そこから精神の変調を来たし、二度の自殺未遂の隘路から抜け出せない妻。
あれを試すしかないのか――。
«あれのことは、美雨を失った後、何度か思い立ち、そのたびに所詮は馬鹿げた妄想だと退けてきたのだった。しかし、渚の二度目の自殺未遂によって未来への希望がすっかり遠のいてしまったいま、たとえ馬鹿げた妄想に過ぎないとしても、もはやあれにすがるほか道はないのではないか?
――しかも……。
どういう偶然かは知らないが、来週二十三日の天皇誕生日、功一郎は、講演のために久々に故郷の福岡に帰る予定になっていた。講演先は黒崎の食品工場だが、その日は小倉のホテルに一泊の予定なので、翌日、生まれ育った博多の街に足を延ばすのは造作もない。
たった一度の経験ではあったが、少なくとも四十年前はうまくいった。
意図してやったわけではなかったが、あれによって功一郎の人生は決定的に変化した。
万が一、もう一度同じことができれば、このがんじがらめの苦境から一気に抜け出すことができる。»
(本文より)
かつて、高校受験に失敗した直後、失意のうちに目にした「道」というタイトルの一枚の絵。
そして、そのあとに訪れた名状しがたい不思議な出来事。
40年ぶりにその絵を目にした男は、気が付けば、交通事故が愛娘に起こる直前の三軒茶屋の交差点にいた。
構想10年。
満を持して放つ、アンストッパブル巨編。
ページをめくるたび、じわじわと深い沼に引き込まれていく。
後半から着地点までは、息をつく間もない加速度。
タイムリープの先に、主人公が見る条理とは――。
「僕は10代のとき電車内で、一度タイムリープを経験しています。あれは錯覚でも、思い違いでもない。たしかに現実の出来事でした。『道』の功一郎のような体験は、突飛なフィクションではないし、あり得ない話だとは思っていません。
僕はどの小説でも、嘘は書かないと自負しています。できるだけ面白くするよう努力はしますが、身についた本当の実感だけを書いています。『道』も、嘘はひとつも書いてない。作り物だという先入観を捨てて、是非読んでほしいですね」(著者)
『道』ついての著者インタビューはこちら▶▶▶https://shosetsu-maru.com/interviews/authors/kshiraishi_michi
「ひとことでいえば、本作はタイムリープのジャンルに入るはずですが、『もしも、あの時』というこの一点を突き詰められるだけ突き詰めて、ここまで細密に、リアルに、シミュレーションをなし得ているエンタメ小説を寡聞にして私は読んだことがありません」(担当編集)
『道』ついての編集者コラムはこちら▶▶▶https://shosetsu-maru.com/column_editors/2022-06-07
著/白石一文
【著者プロフィール】
白石一文(しらいし・かずふみ)
1958年福岡県生まれ。2000年『一瞬の光』でデビュー。09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞、10年『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。『不自由な心』『すぐそばの彼方』『私という運命について』『神秘』『愛なんて嘘』『ここは私たちのいない場所』『光のない海』『記憶の渚にて』『プラスチックの祈り』『君がいないと小説は書けない』『ファウンテンブルーの魔人たち』など著作多数。
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