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2020.12.8

「悪の爽快感」溢れる世界は圧巻! 花村時代小説の到達点。『くちばみ』

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キーワード: 芥川賞作家 時代小説 戦国大河小説

「悪の爽快感」溢れる世界は圧巻! 花村時代小説の到達点。『くちばみ』

父と子の、血で骨を洗う愛惜憎悪の宿命!!

戦国大河小説の最高傑作、ついに誕生!

「美濃の蝮(まむし)」と畏(おそ)れられた乱世の巨魁・斎藤道三が息子・義龍(よしたつ)に命を絶たれるまでの「父子の相克」を、芥川賞作家・花村萬月が描ききる。

 

«そもそもが現時点でもっとも信憑性が高い資料とされる六角承禎条書(ろっかくじょうていじょうしょ)その他によれば、これから語るお話のほとんどが厳密な史実からは外れたところがあるのだが、これはあくまでも小説であり虚構であるとお断りして頰被りさせていただく。

図に乗って言い訳じみた注釈を加えるが、この作品では作者がいちいち口を差しはさむという自由気儘な小説作法に則(のっと)って、事績と感情の坩堝(るつぼ)をとことん描いていこうと考える。だから言葉の用い方においても自由気儘をある程度許してほしい。

たとえば〈思う〉に含まれる情緒的な部分を削って、より知的な思弁作用をさす語としての〈考える〉という言葉が成立したのは十一世紀前後とされるが、以降の文献にも考えるという言葉はあまりみられない。時代小説に用いるにはちいさな引っかかりを覚える言葉だ。

地の文はともかく科白において「拙者はそう考える」は「拙者はそう思う」としたほうがしっくりくるということだ。とはいえ、もちろん文章として〈思う〉よりも〈考える〉のほうがわかりやすい場合は遠慮なく使わせていただく。安易な原理主義を採用しないということだ。

あえて時代設定にずれのある福笑いを冒頭に置いた理由も、このあたりにあると御賢察いただき、基宗と道三、そして道三と義龍、二代にわたる根深い父と子の物語を愉しんでいただきたい。»

(本文より)

 

古く蝮をくちばみと呼んだ。

鋭い毒牙を持つその長虫は、親の腹を食い破って生まれてくるという――。

時は戦国、下剋上の世。

母に見捨てられ、父の油売りを手伝い、どん底から這い上がった峯丸は、いつしか国盗りの野望を抱くようになる。

狙うは天下の要・美濃国。

調略と誑(たぶら)かしで政敵を次々に抹殺し、主君の土岐頼芸(とき・よりのり)をも追放する。

だが、その頃、義龍の胸中には、父への嫉妬と憎悪が渦巻いていた・・・。

 

〝暴力〟と〝情愛〟の筆運びはますます磨かれ、〝悪の爽快感〟に溢れる物語世界は圧巻!

「骨髄異形成症候群にて骨髄移植を受け、無菌室に三ヶ月ほど入院」していた中で書き上げた、花村時代小説の到達点と言える作品です。

 

『くちばみ』

著/花村萬月

 

【著者プロフィール】

花村萬月(はなむら・まんげつ)

1955年、東京生まれ。1989年、『ゴッド・ブレイス物語』で第2回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。98年、『皆月』で第19回吉川栄治文学新人賞、『ゲルマニウムの夜』で第119回芥川賞、2017年、『日蝕えつきる』で第30回柴田錬三郎賞を受賞。『ブルース』『笑う山崎』『セラフィムの夜』『私の庭』『王国記』『ワルツ』『武蔵』『信長私記』『弾正星』など著書多数。

 

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