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2019.10.8

【第回】䞖界䞭で読み継がれる名䜜『颚ず共に去りぬ』を林真理子が鮮やかにポップに、珟代甊らせた『私はスカヌレットⅠ』第章第章を無料公開䞭

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【第回】䞖界䞭で読み継がれる名䜜『颚ず共に去りぬ』を林真理子が鮮やかにポップに、珟代甊らせた『私はスカヌレットⅠ』第章第章を無料公開䞭

【第回】

 私は自分の腕をお父さたの腕にからめる。こんな颚に恋人のようなしぐさをするず、お父さたがヘナヘナになるのを知っおいるからだ。

 ã€Œãƒ‡ã‚£ãƒ«ã‚·ãƒŒã®ã“ずはどうなったの」

 圌女はお父さたの倧切な埓僕、ポヌクず結婚をしお嚘を䞀人産んでいる。

 ã€Œã‚あ、買った。ずんだ散財だった。ディルシヌず嚘のプリシヌずで䞉千ドルもしたよ」

 ã€ŒãŸã‚、䞉千ドルですっお」

 ã€Œã‚žãƒ§ãƒ³ãƒ»ã‚Šã‚£ãƒ«ã‚¯ã‚¹ã¯ã‚¿ãƒ€åŒç„¶ã§ã„いず蚀ったのだが、そんなこずをしたら、わしがゞョンの友情に぀け蟌んだようだからな」

 ゞョン・りィルクスは、アシュレの父芪だ。たるで性栌が違っおいるのに、お父さたず仲がいい。ああ、奎隷の売買じゃなくお、私の結婚のための話し合いだったら、どんなによかっただろう。

 ã€Œãƒ—リシヌたで買う必芁はなかったのよ」

 プリシヌならよく知っおいる。頭の悪い小ずるい嚘である。うちに連れおきたっお、䜕の圹にも立たないだろう。たさか小間䜿いをしおいた嚘を、蟲䜜業に䜿うわけにもいかないし。

 ã€ŒãŠçˆ¶ã•たがあの子を買った理由はただひず぀。ディルシヌに頌たれたんでしょう」

 お父さたはすっかりうろたえおしたった。図星だったからだ。笑っおしたう。

 ã€Œã ã£ãŸã‚‰äœ•だっおいうんだ」

 居盎っおきた。

 ã€Œãƒ‡ã‚£ãƒ«ã‚·ãƒŒã‚’買ったずころで、わが子恋しさに毎日泣かれたらたたったもんじゃない。党くもう二床ずよその奎隷ずの結婚は認めんぞ。金がかかっお仕方ない」

 機嫌が悪いふりをしたお父さたは、私の腕をぐいずひいた。

 ã€Œã•あ、スカヌレット、倕食だ」

 だけど私はぐずぐずしおいた。いちばん肝心なこずを䜕も聞いおいないのだ。

 ã€Œã‚ªãƒŒã‚¯ã‚¹å±‹æ•·ã®çš†ã•んは、元気だった」

 遠たわしにアシュレのこずを尋ねたのだが、お父さたに通じるはずがない。

 ã€Œãƒ‡ã‚£ãƒ«ã‚·ãƒŒã®ä»¶ãŒãŸãšãŸã£ãŸåŸŒã€ãƒ™ãƒ©ãƒ³ãƒ€ã§ã¿ã‚“なでラム酒を飲もうずいうこずになったんだ。ちょうどアトランタから垰っおきたばかりの客が来おいた。あちらは、戊争がい぀始たるかず倧倉な隒ぎだそうだ」

 たた始たったず、私はため息を぀く。お父さたはこの話題が倧奜きなのだ。このたた続くず、本圓に倧切なこずが聞けなくなっおしたう。

 ã€Œãã‚Œã‚ˆã‚Šã‚‚、明日のバヌベキュヌパヌティヌのこず、䜕か蚀っおなかった」

 ã€Œãã†ã„えば、䜕か蚀っおいた。えヌず、名前をなんず蚀っただろうか。昚幎パヌティヌに来おいた、あの優しい嚘  アシュレの埓効の  おお、そうだ、ミス・メラニヌ・ハミルトンだ。圌女ず兄さんのチャヌルズがもうアトランタから来おいたぞ」

 ã€Œãƒ¡ãƒ©ãƒ‹ãƒŒã€ã‚„っぱり来おいたの!?」

 心臓が音をたおる。さっきタヌルトン兄匟が口にした情報、

 ã€Œæ˜Žæ—¥ã®ãƒ‘ヌティヌで、アシュレずメラニヌの婚玄が発衚される」

 が実珟に近づいたこずになる。

 ã€Œã‚あ、メラニヌはしずやかで本圓にいい嚘さんだ。さあ、早く行こう。母さんが探しに来るぞ」

 私はずおもそんな気分にはなれない。このたた倕食の垭に぀くなんお。そしお私は、いちばん肝心なこずを口にした。

 ã€Œã‚¢ã‚·ãƒ¥ãƒ¬ã‚‚いたの」

 そのずたん、お父さたは腕をふりほどいお私の顔をたっすぐに芋た。こういう時、お父さたの目は鋭さを増す。

 ã€ŒãŠå‰ã¯ãã‚Œã‚’聞きたくお埅っおいたんだな。だったらどうしおそんなにたわりくどい聞き方をするんだ」

 今床は恥ずかしさで私は泣きたくなる。お父さたにこのこずを知られたくなかった。だけど心のどこかで、お父さたに打ち明ければどうにかしおくれるずいう、甘えた気持ちがあったのも事実だ。アシュレのお父さんず私のお父さたずは、隣り同士でずおも仲よしなのだもの。

 昔、お父さたがこのタラにやっおきた時、りィルクス家はもう倧きな屋敷を構える名家だった。けれども䜕の差別もなくお父さたを受け入れおくれたのだ。

 ã€ŒãŠå‰ã¯ã‚¢ã‚·ãƒ¥ãƒ¬ã«ã‚‚おあそばれたのか。結婚しよう、ずでも蚀われたのか。え」

 お父さたは私を睚むように芋る。

 ã€Œã„いえ」

 ず私はかがそい声で答えた。

 ã€Œãã†ã ã‚ã†ãªã€‚この先も絶察にあり埗んな」

 ひどい、いくらお父さたでもひどい。慰めおくれるかず思ったのに。私はそれが癖の、盞手の胞をどんどんず叩こうず手を䞊げた。しかしお父さたの方がはるかに力が匷い。私の手は空で぀かたれる。

 ã€Œã‚‚う䜕も蚀うな。さっきゞョン・りィルクスから聞いた。アシュレはメラニヌず結婚する。明日発衚するそうだ」

 ああ、やっぱりず、私はその堎にくずれおちそうになった。十六幎生きおきお、これほど衝撃的な぀らいこずは初めおだった。それなのにお父さたは倧声で怒鳎る。私は叱られるこずは䜕もしおいないのに。

 ã€ŒãŸã•かお前は、自分が笑い者になるようなこずをしおいないな。どんな男だっお手に入れられるずいうのに、奜きになっおもくれない男を远いたわしたりしおいないな」

 私はほんの少しだけれど誇りを取り戻すこずが出来た。

 ã€Œè¿œã„たわしおなんかいない。ただ、ちょっず驚いただけ」

 ã€Œå˜˜ã€ãã‚“じゃない」

 お父さたの顔が元に戻った。そしお私の顎をいずおしそうに぀たむ。

 ã€ŒãŠå‰ã¯ãŸã å­ã©ã‚‚なんだ。男の䜕たるかが䜕もわかっおいない」

 ã€Œç§ã¯åå…­ã‚ˆã€‚子どもなんかじゃない。お母さたがお父さたず結婚した時は十五歳だったじゃないの」

 ã€ŒãŠå‰ã¯æ¯ã•んずは違う」

 確かにそうだ。お母さたは完璧だ。この倧蟲園の女䞻人ずしおも母芪ずしおもだ。でも私だっお結婚すれば、きっずうたくやっおみせる。みんなが考えおいるような、ただの我儘嚘ではない。

 ã€Œã‚¿ãƒŒãƒ«ãƒˆãƒ³ã®å®¶ã®æ¯å­ã®ã€ã©ã£ã¡ã‹ãšçµå©šã—ろ」

 突然お父さたが蚀った。

 ã€ŒåŒå…ã ã‹ã‚‰ã©ã£ã¡ã§ã‚‚構わないだろう。二぀の蟲園が䞀緒になったらたいしたもんだ。あそこの父芪ずわしずで、倧きな屋敷を建おおやろう」

 ã€Œã‚¿ãƒŒãƒ«ãƒˆãƒ³ã®åŒå…ãªã‚“おたるっきり興味ないわ」

 腹が立っおきた。銖を倧きく暪に振る。

 ã€Œå®¶ãªã‚“か欲しくないし、蟲堎なんお関係ないもの。私はただ  」

 ã€Œã‚¢ã‚·ãƒ¥ãƒ¬ãšçµå©šã—たいんだろ」

 お父さたは埮笑んでいた。優しい悲し気な埮笑み。

 ã€Œã ã‘どアシュレずでは幞せにはなれん」

 ã€Œãã‚“なこず、わかんないじゃないのッ」

 ã€Œã‚¹ã‚«ãƒŒãƒ¬ãƒƒãƒˆã€çµå©šã£ãŠã„うのは、䌌た者同士がしお、初めお幞せになるんだ。わしらずりィルクス家の人たちずは違う」

 ã€Œé•わないもの」

 ã€Œã„や、お前だっおずうに気づいおいるはずだ。連䞭は倉わっおる。生たれ぀いおの倉わり者だ。ニュヌペヌクやボストンたで、オペラだの絵を芋に行く。オペラなんお、お前知っおるのか。知らないだろう。それからお前が倧嫌いな本が、連䞭は倧奜物だ。フランスやドむツから本を取り寄せお読みふける。毎日静かに座っお、本を読んで倢を芋おるんだ。ここらの男が、狩りやポヌカヌをしおいる時にね」

 ã€Œã‚¢ã‚·ãƒ¥ãƒ¬ã ã£ãŠç‹©ã‚Šã‚’するわ。乗銬だっお埗意よ」

 私は必死だ。お父さたを味方に぀けようず決めおいたから。

 ã€Œã‚あ、あい぀は䜕でも出来る。ポヌカヌもうたい。しかし心はそこにはないんだ」

 ã€Œå¿ƒãŒãªããŠã‚‚いい。アシュレは私が倉えおみせる。きっず倉えおみせるもの」

 ã€Œç„¡ç†ã ã€

 お父さたは私の腕を自分の腕に再びからめた。

 ã€ŒãŠå‰ã¯æ³£ã„おるじゃないか。さあ、珟実をちゃんず芋぀めろ。アシュレをお前は到底理解出来ない。諊めるんだ。代わりに別の男ず結婚しろ。そうしたらこの土地は、お前ずその男のものになるんだ」

 ã€Œç§ã€ã„らない。土地なんおいらないの」

 私はお父さたの腕をふりほどいた。こんな赀っちゃけた土地なんお、私にずっお䜕の䟡倀もない。それなのにお父さたは私に継がせようずしおいるんだ。

 ã€ŒãŠå‰ã€æœ¬æ°—で蚀っおいるのか」

 お父さたの声があたりにも䜎く静かで、私はい぀ものように「そうよ」ず返すこずが出来ない。

 ã€Œã“の䞖でただひず぀。䟡倀あるものは土地だけなんだ」

 ああ、お父さたは根っからのアむルランド人なんだず思う。

 ã€Œã„いか忘れるな。土地だけが汗を流す䟡倀があり、戊う䟡倀があるものなんだ」

 お父さたの蚀葉をもう私は聞いおいない。私は決心する。

 アシュレだけが、本圓にアシュレだけが、この䞖でただひず぀戊う䟡倀があるもの。もうお父さたはあおにならない。私は䞀人で戊う。そしお必ず圌を手に入れおみせるのだ。

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