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2019.10.4

【第回】䞖界䞭で読み継がれる名䜜『颚ず共に去りぬ』を林真理子が鮮やかにポップに、珟代甊らせた『私はスカヌレットⅠ』第章第章を無料公開䞭

この蚘事は掲茉から10か月が経過しおいたす。蚘事䞭の発売日、むベント日皋等には十分ご泚意ください。

キヌワヌド 颚ずずもに去りぬ 林真理子

【第回】䞖界䞭で読み継がれる名䜜『颚ず共に去りぬ』を林真理子が鮮やかにポップに、珟代甊らせた『私はスカヌレットⅠ』第章第章を無料公開䞭

【第回】

第章

 私はいわゆる矎人、ずいうのではないかも。

 けれどもいったん私に倢䞭になるず、男の人たちはそんなこずにたるで気づかなくなる。そしおたいおいの男の人たちは私に倢䞭になるから、私はこのあたりのいちばんの矎人ずいうこずになっおいる。

 私の顔はちょっず゚ラが匵っおいるけれども、みんなそんなこずを気にしやしない。私の目の玠晎らしさを讃えるだけだ。

 姉効の䞭で私だけが深い緑の瞳を持っおいる。そのたわりを濃い睫毛が瞁どっおいるから。男の人の前では、時々たばたきすればよかった。そしお、埮笑んで゚クボを぀くる。するずたいおいの男の人が、あえぐようにささやくのだ。

 ã€Œã‚あ、スカヌレット、君はなんお矎しいんだろう」

 

 だけど今、目の前にいるタヌルトン家の双児だけは違う。ただ私に告癜しおはいない。理由は二぀あっお、双児はい぀も䞀緒に行動しおいたこず、そしお私たちは幌なじみで、じゃれ合っおいた時期が長すぎたずいうこず。

 埌から聞いた話だけれども、去幎の倏、ちょっずした集たりで私に出䌚った二人は、ずおも驚いたずいう。あのお転婆のスカヌレットが、い぀のたにかずおも魅力的なレディになっおいたからだ。それたで䌚っおいなかったわけではない。それなのにどうしおあの倏の日たで、自分たちはスカヌレットの玠晎らしさに気づかなかったのだろうかず兄匟はずおも䞍思議がったんだっお。

 理由は簡単だ。私が決めただけのこず。この双児も、私の賛矎者にしおみせるっお。だからい぀ものように笑いかけお、たばたきをした。するず兄のスチュワヌトも、匟のブレントも私にたずわり぀くようになったのだ。どちらかが出しぬかないために、い぀も二人で。

 䞀八六䞀幎、四月のその日のこずは䞀生忘れないず思う。私の人生が倧きく倉わった日だ。でも、私はそのこずに䜕も気づいおはいない。い぀ものように、タラのテラスの日陰でのんびりず座っおいた。遅い午埌の陜が斜めに庭に差し、新緑の䞭でいっせいに真癜い花を぀けた、ハナミズキの朚を照らしおいた。双児が乗っおきた銬は、屋敷に続く道に぀ながれおいお、その足元では䜕匹かの猟犬がたわむれおいた。平和で穏やかな、タラず呌ばれるうちの蟲園の昌䞋がりだった。

 私は新しいモスリンのドレスを着おいお、その花柄の緑色は、私の瞳ず同じ色だった。スカヌトをふくらたせるためのパニ゚の䞊には十二ダヌド十䞀メヌトルの裟がたっぷり波うっおいたから、双児は螏たないようにずおも気遣っおいおくれた。

 私のり゚ストは十䞃むンチ四十䞉センチだ。コルセットでき぀く締め぀けおいるずいっおも、このあたりの䞉郡の女たちの䞭でもいちばんの现さを誇っおいた。り゚ストをきゅっず締めおいるから、その分胞が匷調される。私は十六歳にしおはずおも豊かなふくらみを持っおいた。そしお腕も胞元もマグノリアの花のように癜い。

 こんな私に恋をしない男の人がいるず思う

 タヌルトン家の双児は、私の䞡脇に座り、私ぞの称賛に満ちた芖線を送っおいた。圌らもそう悪くない。このあたりでタヌルトン家の双児ずいえば、ハンサムなこずで知られおいた。身長は六フィヌト二むンチ癟八十八センチもあり、乗銬で鍛えたたくたしい䜓を持っおいた。陜気で傲慢なずころも私ずずおも気が合う。勉匷が倧嫌いで、あたりものごずを深く考えないずころも私ず同じだった。二人は私より䞉぀䞊の十九歳だ。

 圌らのママは、

 ã€Œã„぀かあの嚘をめぐっお、銃で射ち合うんじゃないか」

 ず心配しおいるらしい。あのママは、私のこずが倧嫌いなのだ。倧切な息子のどちらか䞀人が、私に奪われないかず心配しおいる。が、そんなこずはあるはずがない。私はただこの二人ずふざけ合うのが奜きなのだから。

 二人は昚日、ゞョヌゞア倧孊を攟校になったばかりで、そのこずをゞョヌクの皮にしおいた。倧孊を远い出されたのはこれで四床めだ。ノァヌゞニア倧孊、アラバマ倧孊、サりスカロラむナ倧孊も、圌らを芋攟したのだ。驚いたこずに、圌らの二人の兄も、匟たちを远い出した孊校にはいられないず、実家に垰っおきおしたった。タヌルトン家の息子たちは、揃いも揃っお勉匷が倧嫌いなのだ。笑っおしたうくらいに。

 そういう私も、䞀幎前に女孊校を卒業しおから本に觊れたこずはない。本なんか読んで䜕が楜しいんだろう。䞖の䞭はこんなに面癜いこずに満ちおいるのに。どうしお昔の人のこずを知らなくおはならないんだろう。

 私は圌らにちょっずお説教じみたこずを口にする。もちろん本気ではない。話の流れずいうもの。

 ã€Œã©ã“の倧孊も長続きしないなんお、どういうこず。これじゃあ䞀生卒業は無理ね」

 ã€Œå’業出来なくたっお、どうっおこずないよ」

 ブレントは蚀った。

 ã€Œã©ã£ã¡ã¿ã¡ã€å­ŠæœŸãŒçµ‚わる頃には、こっちに戻っおこなくちゃいけないしさ」

 ã€Œãˆã£ã€ã©ã†ã—お」

 ã€ŒæˆŠäº‰ã ã‚ˆã€‚決たっおるじゃないか」

 圌はその蚀葉をずおも楜しそうに発音した。

 ã€Œã„぀戊争が始たるかわからないっおいう時に、僕たち兄匟が倧孊にじっずしおいられるず思うかい」

 ã€ŒæˆŠäº‰ãªã‚“かあるわけないでしょう」

 私はすっかり腹を立おた。

 ã€Œã¿ã‚“な口で蚀っおるだけよ。もうじきワシントンに行っおる䜿節団がリンカヌンず話し合うのよ それから、えヌっず  」

 それ以䞊のこずはうたく説明出来ない。いずれにしおも私の倧嫌いな話題だった。

 ã€Œãƒªãƒ³ã‚«ãƒŒãƒ³ãšã¯åˆæ„ã™ã‚‹ã«æ±ºãŸã£ãŠã‚‹ã®ã‚ˆã€‚北郚人は私たちが怖くお仕方ないんだから、向かっおこられるはずがないじゃないの」

 そしお私は声を匵り䞊げ、こう宣蚀した。

 ã€ŒæˆŠäº‰ãªã‚“おありっこないし、私はもうその話にはあきあきしおるの。だからもうこれでおしたい」

 ずころが今日に限っお、双児は私に反抗した。男ずいうのは本圓に戊争が奜きで仕方ないのだ。

 ã€Œã‚¹ã‚«ãƒŒãƒ¬ãƒƒãƒˆã€ã‚‚ちろん戊争はあるんだよ」

 スチュワヌトがおごそかに蚀った。

 ã€Œã„くら北郚人たちが僕らを恐れおいるからっお、戊わないわけにはいかないさ。䞖界䞭から臆病者の烙印を抌されるからね。いいかい、僕ら南郚連合は  」

 私は぀いにかんしゃくを起こした。

 ã€Œä»ŠåºŠã€æˆŠäº‰ã£ãŠèš€è‘‰ã‚’口にしたら、私はもう家に入っおドアを閉めるわよ。この頃、うちに蚪ねおくる人たちもね、朝から晩たで、州の暩利がどうした、サムタヌ芁塞だ、リンカヌンだ、䜕だっお、もううるさくおむダになっちゃうわ。お父さたたちばっかりじゃなくお、男の子たちたで戊争ず階兵隊の話をするから、パヌティヌに行っおもちっずも楜しくないわ。本圓に、あず䞀ぺん、戊争っお口にしたら、私、本圓に家に入っちゃうからね」

 ずにかく私は、自分が䞭心になれない䌚話が倧嫌い。戊争なんお話題は、私がいちばん苊手ずするものだ。もうこれ以䞊、口にしないでほしい。

 双児は顔を芋合わせお、もうこれで戊争の話はやめようずいうように頷き合った。

 ã€Œãã‚Œã‚ˆã‚Šã‚‚、明日のりィルクス家のバヌベキュヌパヌティヌの話をしたしょうよ」

 りィルクス、ずいう名前を発音するたび、私の胞には甘やかなものがわき䞊がる。それは絶察に目の前の二人に気づかれおはならない。いや鈍感ずいうこずにかけお、この二人にかなう者はいないから倧䞈倫だろうけど。

 ã€Œæ˜Žæ—¥ã¯é›šãŒé™ã‚‰ãªã„ずいいわね。このずころ雚が倚いでしょう。バヌベキュヌをテラスの䞭でするぐらい぀たらないこずはないもの」

 ã€Œæ˜Žæ—¥ã¯çµ¶å¯Ÿã«ã„い倩気だよ。ほら、芋おごらん。あの倕陜。あんな赀いの芋たこずがないもの」

 スチュワヌトが指差し、私たち䞉人は赀く染たった地平線を眺めた。そこはどこたでも続く私のお父さたの綿畑だった。ゞョヌゞアのこのあたりは赀い倧地だ。もう畑の畝づくりは終わっおいお、皮を蒔くばかりになっおいた。

 怖いぐらいに赀い倧地。雚の埌は血のように赀くなるし、也燥するず煉瓊くずのように芋える。お父さたはい぀も蚀う。ここほど綿花づくりに適した土地はないのだ。この赀い土が、私たちに富ず幞犏をもたらしおくれるのだず。

 私たちはなぜかい぀たでも、その赀い土地に萜ちおいく赀い倕陜を芋぀めおいた。もしかするず私たちは、䜕かを予感しおいたのかもしれない。

 やがおテラスに座る私たちに、ひづめの音ず銬具の鎖が揺れる音、黒人たちの笑い声が届いた。䞀日の畑仕事を終え、垰っおきたのだ。お母さたの声がする。黒人の子どもを呌んでいるのだ。屋敷の䞭から、召䜿い頭が食噚を䞊べる音がする。

 私はお母さたから、

 ã€Œã‚‚しタヌルトン家の方々を倕食にお招きするなら、早めに蚀っお頂戎」

 ず蚀われおいたこずを思い出した。

 私はちょっず迷う。倕食の垭で圌らが、お父さたず戊争の話をしないずは保蚌出来ないからだ。

 ã€Œã­ãˆã€ã‚¹ã‚«ãƒŒãƒ¬ãƒƒãƒˆã€æ˜Žæ—¥ã®ã“ずだけど」

 ブレントが倕陜から目を離しお、私の方を向いた。

 ã€Œã„くら僕たちが家を離れおいお、バヌベキュヌずその埌の舞螏䌚のこずを知らなかったっおいっおも、ろくにダンスを螊っおもらえないなんおあんたりだよ。君だっお党郚の曲の玄束をしおるわけじゃないんだろ」

 このあたりの男の子が、私ず螊りたがっお競うこずずいったらあさたしいほどで、みんな䞀曲でもいいからず懇願する。

 ã€Œã‚ら、玄束しちゃった。あなたたちが垰っおくるなんお知らなかったんですもの。来るか来ないかわからない人を埅っお、壁の花になるなんおいやだもの」

 ã€Œå›ãŒå£ã®èŠ±ã ã£ãŠã€

 双児は声を合わせお、げらげらず笑った。

 ã€Œã‚¹ã‚«ãƒŒãƒ¬ãƒƒãƒˆã€ãŠé¡˜ã„だよ。最初のワルツは絶察に僕ず、最埌のワルツはスチュワヌトずね。それから倕食も僕たちず䞀緒にずっおくれよ」

 ずブレントが蚀った。

 随分図々しいわ、ず私は思った。それっおたるで私のフィアンセのようにふるたうこずじゃないの。だけど双児ずいうのは䟿利で、二人ず仲よくしおいれば、他の男の子たちの嫉劬も半分で枈む。噂も立たない。

 ã€Œè€ƒãˆãŠãŠãã‚ã€

 ぀んずしお私は答えた。

 ã€ŒçŽ„æŸã—ãŠãã‚ŒãŸã‚‰ã€ç§˜å¯†ã‚’æ•™ãˆãŠã‚ã’ã‚‹ã‚ˆã€

 スチュワヌトが意味ありげに笑いかける。

 ã€Œç§˜å¯†ã§ã™ã£ãŠïŒŸã€

 どうせこの二人の秘密なんおたいしたこずはないはず。しかし知らないのは癪にさわる。

 ã€Œã‚¹ãƒãƒ¥ãƒ¯ãƒŒãƒˆã€ãã‚Œã£ãŠæ˜šæ—¥ã‚¢ãƒˆãƒ©ãƒ³ã‚¿ã§èžã„た話だろ。誰にも蚀わないっお玄束しなかったかい」

 ã€ŒãŸã‚、そうだけど。どうせすぐにわかるこずだし」

 スチュワヌトの方は、喋りたくおうずうずしおいた。

 ã€Œæ˜šæ—¥ã€åƒ•らがアトランタで列車を埅っおいる時、ピティおばさんの銬車が通りかかっおさ。ほら、アシュレ・りィルクスのいずこのチャヌルズずメラニヌ兄効の叔母さんだよ」

 ã€Œã‚あ、あの人。私が今たで䌚った䞭で、いちばん頭の悪い人よね」

 小柄な、い぀もボンネットをかぶっおいる䞭幎の婊人を頭にうかべた。アシュレ・りィルクスずメラニヌの家ずは、芪戚が入り組んでいるのだ。

 ã€Œã‚のおばさんが教えおくれたんだ。明日りィルクス家のパヌティヌで、婚玄発衚があるっお」

 ã€Œãªã‚んだ」

 私は肩をすくめた。

 ã€Œãã‚“なの知っおるわ。メラニヌのお兄さんのチャヌルズ・ハミルトンず、アシュレの効のハニヌが結婚するんでしょう。あの二人が結婚するなんお、癟幎前からみんなが知っおるわよ。チャヌルズの方はあんたり乗り気じゃないらしいけど」

 くすっず笑った。ハニヌは平凡な顔立ちで背が䜎い。たるっきりサ゚おないうえに、ずおも意地が悪い女だ。私のこずが倧っ嫌いで、い぀もパヌティヌで無芖しようずする。もっずもチャヌルズの方も、色がやたら癜い女の子みたいな人だから、お䌌合いず蚀えないこずはないけれど。チャヌルズはこのずころ、私にご執心で、そのこずもハニヌが私を憎む原因なのだ。

 ã€Œé•うよ。明日発衚されるのは、チャヌルズの婚玄じゃないよ。アシュレ・りィルクスず、チャヌルズの効、メラニヌの婚玄だよ」

 その瞬間、あたりの颚景が倉わった。癜く音のしないものになったのだ。䜕も聞こえおこない。聞きたくないず耳が拒吊しおいるのだ。

 ã€Œãƒ”ティおばさんの話じゃ、本圓は来幎たで発衚を埅぀はずだったんだっお。メラニヌの䜓調がよくないんで。だけど戊争がい぀始たるかわからない、早くしようずいうこずで䞡家の意芋がたずたったらしい。さあ、スカヌレット。秘密を教えたんだ。明日は僕たちず䞀緒に倕食をずるっお玄束しおくれよ」

 ã€Œãˆãˆã€ã‚‚ちろん」

 私ではない誰かが答えおいた。

 ã€Œãƒ¯ãƒ«ãƒ„も党曲」

 ã€Œãˆãˆã€

 ã€Œãã‚Œã¯ã™ã”いや。他の男たちが地団駄螏んで悔しがるぞ」

 双児は䜕か蚀った。え、私は䜕か玄束したんだろうか。よくわからない。

 私はもう䞀床地平線を眺めた。倕陜は既に萜ち、川向こうの背の高い朚々が圱絵のようだった。ツバメが庭を暪切り、ニワトリず䞃面鳥、アヒルがぺたぺたずねぐらに垰ろうずしおいた。

 ã€Œã‚¢ã‚·ãƒ¥ãƒ¬ãŒå©šçŽ„ã™ã‚‹ã€

 その蚀葉が甊る。嘘だ。私は心の䞭で叫んだ。そんなこずが起こるはずはない。なぜならアシュレは、この䞖でただ䞀人、私に愛されおいるのだから。

【】に続く

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