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2019.10.6

【第回】䞖界䞭で読み継がれる名䜜『颚ず共に去りぬ』を林真理子が鮮やかにポップに、珟代甊らせた『私はスカヌレットⅠ』第章第章を無料公開䞭

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【第回】䞖界䞭で読み継がれる名䜜『颚ず共に去りぬ』を林真理子が鮮やかにポップに、珟代甊らせた『私はスカヌレットⅠ』第章第章を無料公開䞭

【第回】

 その埌、私は圌ず䜕床も䌚った。アシュレは私にいろいろな話をしおくれた。パリのオペラ座で聎く音楜がどれほど玠晎らしいか。フィレンツェで芋たノィヌナスのたなざし  。ちんぷんかんぷんでたるで面癜くなかったけど、私は䞀生懞呜に聞いた。それを熱心に語るアシュレの様子をじっず芋たかったからだ。

 そしお圌が貎族の末裔なのは本圓なのだず玍埗する。

 私たちの䜏むこのゞョヌゞアは、チャヌルストンあたりの人たちからは田舎ず思われおいた。たいおいがアむルランドやドむツなどから飢饉を逃れおやっおきた移民だ。最初は䞞倪小屋に䜏んでいた。私たちの祖父母や父が、すぐに綿花で財をなし、優雅な屋敷に䜏み瀟亀しおいるのを、

 ã€Œã‚¢ã‚€ãƒ«ãƒ©ãƒ³ãƒ‰ã®è²§ä¹äººã®å­å­«ãŒã€ã‚っずいう間に成り䞊がり、貎族ごっこをしおいる」

 ず嗀う人たちもいるらしい。

 けれども䞭には、政治亡呜した貎族の血をひくず噂されおいた人たちもいお、りィルクス家もそのひず぀だ。ここの䞀族は昔から倉わっおいるず蚀われおいた。銬を乗りたわすこずや狩りよりも、音楜や絵を奜むのだ。だからりィルクス家で行われるバヌベキュヌパヌティヌや舞螏䌚は、どこの家よりも緊匵を匷いられるものだった。着おいくドレスにも気を遣う。

 りィルクス家は、お父さんの代から買い求めたペヌロッパの家具や絵画がたくさん食られおいた。図曞宀も立掟で、りィルクス家の蔵曞は郡でいちばん、いいえ、南郚でいちばんず蚀われおいる。立掟な革衚玙を背にしお、アシュレはゲヌテに぀いお私に語る。

 ã€Œã‚²ãƒŒãƒ†ã£ãŠèª°ãªã®ïŒŸã€€æ™‚々チャヌルストンからやっおくる行商人だったかしら」

 なんお最初は茶化したこずを蚀っおいたけれど、この頃私はおずなしく聞く。ゆっくりず喋るアシュレに南郚蚛りはなく、やわらかく明瞭な発音だ。それはロンドンで受けたレッスンのせいだずいう。英語を習うなんお信じられない。私たちは生たれた時からふ぀うに喋っおいたんだから。

 りィルクス家の図曞宀では二人きりだ。だけどアシュレは他の男の子たちのように、キスをせがんだりはしない。告癜をしようずもしない。

 だけど私は圌の心を疑ったこずはない。アシュレは私に惹かれおいる。それは目を芋ればわかる。圌の瞳は私ぞの賛矎で溢れおいる。

 あたり前よ。私は緑色の瞳でじっずアシュレを芋぀める。他の男の子たちにするように、睫毛をしばたたかせたりはしない。そういうありきたりのこずは、圌には通じないだろうずわかっおいたから。

 ã€Œã­ãˆã€ã‚²ãƒŒãƒ†ã«ã€ã„お、もっず話しお頂戎」

 私は圌にねだる。するずアシュレは、ずおも矎しいロマンティックな蚀葉を口ずさむ。だけどそれは今、たるっきり憶えおいない。私は本を開く圌の暪顔が奜き。ペヌゞをめくる時の圌の指が奜き  。

 ずいっおもアシュレは、メラニヌの兄さんのチャヌルズのように、なよなよした男じゃない。乗銬だっお、賭けごずだっお、狩りも圌はひずずおりのこずはこなした。それもずおも䞊手に。そんなに倢䞭になっおいないくせに、乗銬なんかこのあたりいちばんの乗り手だ。だけど圌の望むもののほずんどは図曞宀の䞭にあり、もっず欲しいものはペヌロッパの土地にあるのだ。そしお私も圌の欲しいもののひず぀に決たっおる。私には確信があるもの。

 メラニヌず結婚するんですっお。ずんでもない。笑っおしたう。倧人はみんな圌女を誉める。南郚矎人の兞型だず。぀たり぀぀たしやかで賢く、いいコだずいうこず。でも私に蚀わせるず、ただおずなしい぀たらない女だ。顔だっお平凡でどうずいうこずもない。広い額の䞊に、髪を真䞭で分けおいる。お母さたず同じひっ぀め髪。だから幎よりもずっず老けお芋える。私よりひず぀䞊の十䞃歳だけど、二十歳過ぎたおばさんみたい。そう、私ず比べものにならないぐらいさえない女なのだ。あんな女ずアシュレが結婚するわけがない。絶察にあり埗ない。圌が愛しおるのは私なの。私にはわかる。でもなぜ、圌女ず婚玄しようずしおいるんだろう。ああ、意味がわからない。深く考えるのは苊手だ。だけどこれはちゃんず解決をしなきゃ。

 その時、床板を鳎らしおマミむが近づいおきた。私はあわおお組んだ脚ず、頬杖を぀いおいた手を元に戻した。なにしろマミむは、おそろしく勘がいいのだ。子どもの時から育おおいるから、私のこずをすべお知っおいる。私だけでなく、マミむは、オハラ家の人間はみんな自分が銖根っこを抌さえおいるず信じおいる。家族の秘密は自分の秘密。隠すなんおいうこずは蚱されなかった。もし隠したりしたら倧倉なこずになる。お母さたの前に匕き出されお、掗いざらい喋らなくおはいけなくなるのだ。

 マミむが近づいおきた。真黒い肌は、ぎかぎかしおいる。マミむの故郷のアフリカ象のように倧きい。䞀滎も癜人の血が混じっおいないからだ。ここ南郚にも混血の黒人は䜕人かいる。雇い䞻が女奎隷に手を぀けた結果で、お母さたは、

 ã€Œé›‡ã„䞻がそんなこずをするなんおずおもおぞたしいこず」

 ず怒っおいるけど。

 ああ、ずにかくマミむは、本圓に真黒で倧きくお、かなり嚁圧感があるずいうこず。昔はお母さたのお母さた、゜ランゞュお祖母さたの小間䜿いだった。゜ランゞュお祖母さたは生粋のフランス人で、そのこずをどれほど誇りに思っおいただろう。生涯フランス蚛りのヘタな英語を䜿っおいた。ずおも意地悪な人で、マミむにも぀らくあたったずいう。マミむは最初お母さたの小間䜿いずしお、サノァンナからやっおきた。お母さたがお父さたず結婚したからだ。そしお私が生たれたから、マミむにずっお私は孫のようなものだったのだろう。私のこずが可愛くおたたらないんだけど、その分厳しい。ガミガミ蚀う。

 ã€Œã‚¹ã‚«ãƒŒãƒ¬ãƒƒãƒˆã•たのようなはねっ返りは芋たこずがない。私がちゃんず抑え぀けおおかなければ」

 ずいうのが口癖だった。

 あれヌずマミむは倧きな声をあげた。

 ã€Œã‚¿ãƒŒãƒ«ãƒˆãƒ³å®¶ã®çŽ³å£«ã®æ–¹ã€…ã¯ãŠåž°ã‚Šã«ãªã£ãŸã®ã§ã™ã‹ã€‚ã©ã†ã—ãŠå€•é£Ÿã«ãŠèª˜ã„ã—ãªã‹ã£ãŸã®ã§ã™ã‹ã€‚ãŠäºŒäººã®åˆ†ã‚‚ç”šæ„ã™ã‚‹ã‚ˆã†ã«ã€ã¡ã‚ƒã‚“ãšãƒãƒŒã‚¯ã«èš€ã£ãŠã„ãŸã‚“ã§ã™ã‚ˆã€

 ポヌクずいうのは、お父さたの埓者で、執事のような圹割をしおいる。

 ã€Œã ã£ãŠäºŒäººãšã‚‚戊争の話ばかりで぀たらないんだもの。倕食の間䞭、あれをやられたらたたらないわ。二人が喋り出したら、お父さたたでリンカヌン倧統領がどうのこうの蚀い出すに決たっおるもの」

 ã€Œãã‚“なこずは、あなたが蚀うこずじゃないんですよ。それにたたショヌルもかけないで。倕方から冷えおくるっおあれほど蚀ったじゃありたせんか。肩を出しおいるず倜気にあたっお熱病をもらうんですよ。さあ、早く䞭にお入りください」

 だけど、そんな気分にはならない。このたたテヌブルに぀いお、スヌプず豚肉を食べるなんお。

 ã€Œã ã£ãŠå€•陜があんなに綺麗なのよ。もうちょっず芋おいおもいいでしょう」

 ã€Œå€•陜なんお毎日出おたすよ。さあ、家の䞭に入るか、それずもショヌルをかけるか」

 私は埌者を遞んだ。マミむは二階の召䜿いに、お嬢さたのショヌルを持っおくるようにず怒鳎った。

 その時私はずおも重芁なこずに気づいた。

 お父さたが今日どこから垰っおくるかだ。ポヌクの劻のディルシヌは、ずっずりィルクス家の女䞭頭をしおいる。お父さたは倫婊が離れおいるのを䞍憫がっお、今日圌女を買い取りに行ったのだ。そう、りィルクス家に。そうだわ。お父さたならわかる。アシュレずメラニヌが結婚するずいう話が本圓かどうか。真実を確かめなくおは。もしかするずあれは、タヌルトン兄匟のい぀もの軜いゞョヌクだったかもしれない。どうかそうあっおくれたすように。

 ã€Œç§ã¯ã‚‚う少しここにいるわ」

 マミむに告げた。

 ã€ŒãŠçˆ¶ã•たを埅぀の。お父さたはもうじき垰っおくるはずですもの」

 私はテラスの階段を降り、䞊朚道ぞ向けお歩き出した。二人きりの時間が欲しかったからだ。倕陜を芋るようなふりをしお、私は私の人生でいちばん倧切なこずを知ろうず心に決めた。

【】に続く

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