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2016.9.30

名捕手なきプロ野球は滅びる。いま日本に必要なのは、捕手的人間だ!『野村の遺言』

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名捕手なきプロ野球は滅びる。いま日本に必要なのは、捕手的人間だ!『野村の遺言』

「キャッチャーの書く"脚本"がまずければ、すぐれた"作品"が生まれるはずがない」

 

 プロ野球に対する危機感が、野村克也氏に"捕手論"を書かせた。

 これはプロ野球界とプロ野球ファンに送る、名捕手からの遺言だ。

 野村氏はいまのプロ野球界に「名脚本家=名捕手」がいなくなってしまったと嘆く。

 

  ‹‹「キャッチャーは脚本家」――私はそう思っている。

 キャッチャーがサインを出し、それに従ってピッチャーをはじめとする選手が動き、試合が進行する。グラウンドという舞台で、どのような試合が繰り広げられるか、キャッチャーの指ひとつで決まると言っても過言ではない。

  「映画は脚本で決まる」という。

  「いい脚本からダメな映画が生まれることはあっても、ダメな脚本からいい映画が生まれることは絶対にない」

 映画界にはそういう名言があるそうだ。野球の試合も同じ。キャッチャーの書く"脚本"がまずければ、すぐれた"作品"が生まれるはずがない。いまのプロ野球のレベルが低下したのも道理なのである››

 

 では、なぜ名捕手はいなくなったのか。野村氏はふたつの理由を述べている。

 

  ‹‹第一の理由として「キャッチャーをやりたい」という子どもが少なくなったことがあげられる›› ‹‹いまの子どもはきついこと、縁の下の力持ち的な役割を嫌う。やりたいという子どもが減れば減るほど、レベルが下がっていくのは道理であろう››

  ‹‹キャッチャーのことを教えられる監督やコーチがいないことも無視できない。これが、名捕手がいなくなったふたつ目の理由だと私は考えている。せっかくキャッチャーをやりたいという子どもが出てきても、キャッチャーがなんたるかを教えられる指導者がいないのだ››

 

 名捕手がいなくなると、捕手出身の監督が少なくなり、プロ野球がますますつまらなくなるという野村氏。名捕手といわれた古田敦也や谷繁元信は、なぜ成功しなかったのだろうか?

 

  ‹‹古田にはがっかりさせられた。「いい監督になるのではないか」と大いに期待していたからだ。彼が失敗した理由はまず、プレーイング・マネージャーという選択をしたことにある。これは谷繁も同様だ。選手兼任で監督の仕事をするのは、想像以上に大変な重労働なのである›› ‹‹もうひとつ、古田は性格からしてキャッチャーではなかった。はっきり言って、彼は性格的にはピッチャーなのだ››

 

人間の最大の悪は、鈍感!

 

 本書ではキャッチャーという役割の重要性を説きつつ、配球やキャッチングなど実践的技術についても実例をまじえて紹介! さらには、野球だけにとどまらず、一流のビジネスマンにも通じるという名捕手の条件についても展開している。

 

  ‹‹「カン」には三つある。「感」と「勘」と「観」である。この三つをキャッチャーはそなえていなければならない。「感」とは豊かな感性。文字通り、感じる力である。目、耳、鼻、舌、皮膚の五感を通してもたらされる感覚のことだ。この五感を磨き、研ぎすますと、第六感と呼ばれる「勘」が得られる。そして、「感」と「勘」によって得られた経験をもとに、全体の流れのなかで物事を判断する能力が「観」である。この「感」「勘」「観」にすぐれていなければ、いいキャッチャーにはなれない。

 この三つの「カン」を持てると、おのずと「目配り」「気配り」「思いやり」ができるようになる。この三つの「り」もキャッチャーには非常に大切だ››

 

 名捕手が描く、すぐれた脚本によるハイレベルなプロ野球をこれからも観たい!

 いま日本に必要なのは、捕手的人間だ!

 野村氏による最初で最後の超本格捕手論。

 

『野村の遺言』

著/野村克也

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