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2016.5.20

コンビニ業界の不都合な真実。毎日ツラい・・・『コンビニ店長の残酷日記』

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コンビニ業界の不都合な真実。毎日ツラい・・・『コンビニ店長の残酷日記』

右肩上がりのコンビニ業界だけど、加盟店は過酷・・・

 

 日本全国にあるコンビニエンスストアの店舗数5万3,544店(一般社団法人フランチャイズチェーン協会の調べ、2015年12月末/以下同)。年間来店者数は167億3,089万人。年間売上高は10兆1927億円。百貨店の売上高6兆1,742億円を楽々超えています。すべて前年比プラスで、今、まさにコンビニ業界のひとり勝ち状態! さぞかしオーナーはウハウハな毎日を送っているかと思ったら、本著の著者・あるコンビニ店長の三宮さんによると、どうやらそうでもないようです。

 

 コンビニのフランチャイズ契約は、経営について素人であるオーナーが、本部からノウハウを有償で得るという仕組みです。ところが、本部とフランチャイズ契約を締結するまで、どれくらい売上が見込めるか、近隣にあるライバル店舗の売上はどれくらいかなどの情報が開示されることはありません。そして、加盟店になった途端、本部は無理難題をふっかけてきます。契約書には、加盟店の義務ばかりが記されており、独自の裁量はほとんど認められず・・・。すぐ近くに本部が直営店を出店(ドミナント=高密度多店舗出店方式)するというようなケースもあります。また、赤字が続いて契約解除を申し出ると、多額の違約金を支払わなければならないこともある。意外と知られていませんが、店頭で売っているおでんやコロッケなどの揚げ物などには「販売ノルマ」があり、その数字を達成するために自腹を切る店もあるんです。本部チェーンからやる気がないとみなされて「契約解除」を通告されるおそれがあるから。また、廃棄弁当などはすべて加盟店の負担です。だから本部は売れ残っても懐が痛むわけではないから過剰な発注を勧めます。通常ではありえない「コンビニ会計」がオーナーたちを苦しめているのです。

 

トンデモ客に頭を抱える毎日

 

 大変なのは、本部との軋轢だけじゃありません。いざコンビニ経営をはじめてみると、精神的負担のオンパレード。コンビニは原則24時間365日営業で、飲食料品はもちろん、日用品からペットのエサまで必要なものは大抵そろいます。けれども、便利になった分、従業員の負担は増えるばかり。新サービスや新メニューも次々と登場し、ただでさえ忙しいのに、マニュアルをおぼえるのは至難の業です。

 

 それにくわえて、社会の縮図であるコンビニには、さまざまな人たちが入れ替わり立ち替わり訪れ、暴言を吐かれることは日常茶飯事。何も買わずに「トイレ、ある?」はあたりまえ。「タクシー呼べ!」という酔客、エロ本からお目当ての付録DVDだけ抜き取る万引き犯、あたたかくなってくるとはじまる店先での宴会・・・トンデモ客に頭を抱える毎日です。アルバイトもなかなか集まらず、すぐに辞めてしまうことも多い。その分、店長が店に出る時間は長くなります。独立した経営者という立場のため、当然、残業代なんていうものは出ません。人件費を浮かせるために奥さんに頼み込んでシフトに入ってもらうのはあたりまえの状況です。

 

 本著では著者の三宮さんが、6年にわたる店長生活で起きたことを、日記形式でちりばめています。これがまさに、今、コンビニで起きている真実なのです。

 

小学館新書

『コンビニ店長の残酷日記』

著/三宮貞雄

 

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