2016.5.9
奇跡の発見! 「サザエさん」で知られる長谷川町子の戦中作品が、なんと小学館の地下資料室から発掘!? 『長谷川町子の漫畫大會(いわくいたわぐんま)』
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「サザエさん」の原点は、ここにある!?
70年以上の時を経ても色褪せない、長谷川町子幻の作品約100点。
たまたま手に取った古い学習雑誌に、「長谷川町子・畫」!?
2015年2月、ある大作家がむかし小学館の雑誌に書いた小説を捜そうと資料室に入った編集者が、気まぐれに手に取った『國民五年生』(昭和16年5月号)。
▲『國民五年生』昭和16年5月号表紙
その中に、NHKの『花子とアン』でお馴染みの村岡花子が翻訳した「カンタベリー物語」がありました。そこに添えられたモダンなイラストに驚いて手を止め、あらためてよーく見ると、カッコ付きで「長谷川町子・畫」との表記が・・・。
▲「カンタベリー物語」扉
それから数日後のこと、たまたま別の用件で、アニメ版「サザエさん」の制作会社である「エイケン」の取締役と会ったこの編集者は、ほんの世間話のつもりで、長谷川作品発見の顛末を話しました。するとこの話は、すぐさま長谷川町子美術館に伝えられます。
作品を見た美術館の学芸委員・橋本氏は、驚いてひと言、
「これは全部。美術館も知らなかった作品です!」
ここから、小学館資料室の大調査がスタート! 古い雑誌を片っ端からめくっていくという、まるで遺跡の発掘調査のような地道な作業が続けられました。
およそ半年間にわたる調査の結果、発見された作品は、イラスト約40点、漫画約70点、1ページの「メンタルテスト(なぞなぞ)」や「ワラヒバナシ」などの企画ものが約30点の計140点!
なかでも1ページの企画ものは、同時期のほかの出版社の作品にはみられないスタイルで、短いセンテンスで笑いに落とし込むテクニックは、「見事!」というほかはありません。すべて昭和14年~18年春、町子が19歳から23歳までの短い間に描かれたものですが、こんなところにも、後の「サザエさん」などの4コマ漫画に通じるセンスが感じられます。
▲見て、考えて楽しむ1ページの企画もの。
▲あの子たちによく似た3人が大活躍する4ページのコマ漫画「オルスヰブタイ」
あの一家のあの人、あの子が、ここに。
厳しいあの時代に、町子は、朗らかで穏やかな日常を描き続けました。そこには、「それでも世界は素晴らしい」「明日はきっと美しい」と語りかけるような輝きがあります。そういう町子の前向きな姿勢は、戦後も変わること無く、やがてあの、みんながよく知る愉快な家族が誕生します。
この本の中には、あの一家と同じ笑いと温もりがあり、あわてん坊のあの人や食いしん坊のあの子たちも隠れています。そして、もちろん、笑いとウイット、ちょっと斜に構えたシニカルな視点もまた、ここにあります。
フネさんを演じた女優・吉行和子さん、NHKの朝の連続テレビ小説『マー姉ちゃん』で長谷川町子を演じた女優・田中裕子さん。町子とその作品の本質を言い当てるかのような、お二人のしなやかで温かい言葉も収録!
著/長谷川町子
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