とある大家の旦那が義太夫に凝って、長屋の店子たちや店の者たちに聞かせようと準備をした。ところが、あまりにも下手なので理由をつけて誰も来ようとしない。怒った旦那が、長屋は全員店立て、店の者はクビだと言って不貞寝してしまう。それでは困る面々がやってきて、機嫌を直した旦那は再び義太夫を語ることになったのだが・・・。
枝雀落語のベスト3といえば、『宿替え』『代書』、そしてこの『寝床』です。1972年まだ「小米」時代に初演して以来進化し続けたネタで、今回の映像は、アクション、表情とも「これぞ枝雀」といえる高座になっています。
町の若い衆が寄り集まって、それぞれ嫌いなもの、怖いものを言い合っている。「へび」「くも」などと言い合うなか、「別にない」とうそぶく光っつぁん。本当にないのか、と迫られて「実は・・・」としぶしぶ「饅頭」が怖い、と白状する。饅頭と言っただけで気分が悪くなった、と奥の部屋に入って寝てしまった光っつぁん。残った男たちは、気にくわないから懲らしめてやろう、と饅頭を山のように買ってきて寝ている部屋へ投げ込んだところ・・・。
東京でもおなじみの演目ですが、上方の「まんこわ」は間に怪談噺が入ったりして、ひと味違う長編になっています! 襲名後3年足らずという若い枝雀の高座です。
『不動坊』は、明治の噺家・二代目林家菊丸作の上方落語ですが、東京でもおなじみ。ただし、東京では幽霊ものということで、夏の噺として掛けられることが多くなっています。上方では圧倒的に冬の噺。バックに流れる「雪の合方」というお囃子や「雪の音」という太鼓も入ります。歌舞伎の下座から来ている演出で、登場人物とともに雪の夜が目の前に現れるようです。
『猫の忠信』の「忠信」とは、源義経の家来・佐藤忠信。文楽や歌舞伎でよく上演される『義経千本桜』の狐忠信として知られています。落語の方では、浄瑠璃の発表会で、どの役を誰がやるかでもめるところが発端の一席。至るところに『義経千本桜』の趣向が散りばめられているのが、歌舞伎好きにも楽しい演目です。正体がばれてからの枝雀師匠がしゃべる「狐詞(きつねことば)」も義太夫から来ている演出で、大きな見どころのひとつです。
『船弁慶』は、上方では夏の代表的な噺で、五代目桂文枝師匠の十八番ネタでした。本来の型とちがう枝雀ならではの、いきなり主人公・喜六のセリフから噺に入る演出。イラチ(せっかち)な枝雀らしい導入をお楽しみください。夏の夕の風情を醸し出すところには、歌舞伎の『夏祭浪花鑑』の仕草を取り入れたり、橋の上にさしかかったところで涼しい川風が吹いてくるような描写も見事。最後は、喜六とおかみさんのドタバタですが、それが能の『船弁慶』の一節を演じての喧嘩というのも、面白くも教養深い演目です。
『延陽伯』は、関東では『たらちね』。妙に言葉遣いの丁寧なお嫁さんが来ることになったことからの騒動。やもめが新婚生活を空想して一人で盛り上がるところも、大きな見せ場、聞かせ場です。関東の『たらちね』では、お嫁さんの名前は「千代女」なのですが、「延陽伯」という名の意味は? 小佐田定雄氏の演目解説にその謎が繙かれています。高座とともに、解説の謎解きもお楽しみです!
『住吉駕籠』は、客待ちをしている駕籠屋さんコンビに降りかかる災難を描いた一席です。値段を決める符丁や酔っ払い客との遣り取りは抱腹絶倒。
『道具屋』は、小遣い稼ぎの夜店の道具屋で繰り広げられる、個性豊かな冷やかし客との丁々発止が見どころで、収録映像のサゲは桂枝雀のオリジナル。必見です。
巻頭エッセイ「枝雀と私」は、子どもの頃から枝雀落語を聴き、大好きで完全コピーをしていたという俳優の生瀬勝久が登場します。
「枝雀師匠は、とにかく持てる武器をすべて使って、まず、“みんなでここで笑いましょうよ"というところから攻めてくる・・・“リーサル・ウェポン"ですよ」と、熱く語ります。
放送日●1993年9月10日 収録時間●26分22秒
シリーズ累計10万部を超えた大人気シリーズの第3弾。最終巻の二演目はどちらも夏の噺の傑作で、桂枝雀の十八番。笑いの中に悲哀とモノの価値とは?を考えさせる『千両みかん』と、灼熱の暑さを「お日ぃさんがカーッ!」の名台詞と仕草でわかせる『夏の医者』。
巻頭エッセイは、いま大ブレイク中の星野源による書き下ろし「枝雀と私」。20歳頃に枝雀に出会い「初めてDVDを観て、それまで落語で笑ったことのない自分が手を叩き、爆笑していた」と、そのときの衝撃を記しています。
◆全5巻ご購入の方には、「枝雀寄席」から、桂ざこばとの兄弟弟子対談と、ワケありで絶対に商品として世に出ることのない大傑作の高座映像を収録した特典映像DVDをプレゼント!!