北九州市郊外の山中で
一部が白骨化した遺体が発見された。
地元のタウン誌で
ライターとして働く飯塚みちるは、
元上司で週刊誌編集者の
堂本宗次郎の連絡で
そのニュースを知った。
遺体と一緒に
花束らしきものが埋めれられており、
死因は不明だが大きな外傷はなかった。
警察は、遺体を埋葬するお金のない者が
埋めたのではないか
と考えているという。
発見された遺体の背景を追い
記事にしないかと
仕事の依頼をしてきた宗次郎に、
みちるは「わたしはもう、
ライターで生きていくって
決めた」と答えた。
みちるには、ある事件の記事を
書いたことがきっかけで、
週刊誌の記者を
辞めた過去があった……。
人間のささやかな幸せに涙した。
心の中にレジスタンスを呼ぶ、
未来に繋がる作品だ。
幸せになりたいだけなのに、
もがけばもがくほど搾取される女性や、
何とか自分に折り合いをつけ
自分の気持ちを押し殺して生きる
マイノリティの方に
ぜひ届いてほしい作品です。
まるでノンフィクションと
思えるほどのリアリティ!
女性として生き方、
仕事への向き合い方など
考えさせられ、
心に重く響きました。
深く考える余韻が残る、
未来への糧となる
再生と成長の社会派ミステリー。
苦しくて悲しい話でしたが、
読後は、
よし、自分もなんとかやっていくか、
と不思議と背中を押されるような
気持ちになりました。
みちるは弱い。
最弱主人公と言ってもよい。
誰もが人生の主人公とやらであるなら、
私たちも同様にこんなに弱いのだと、
みちるを通して見せつけられている。
「自分の痛みにだけ敏感」
というところに、
ハッとさせられました。
「相手のことを知りたいと
いうときには、
自分の本音を誤魔化さずに
言うしかない、
相手と向かい合いながら
自分と向き合っているような
気迫を感じます。
事件を追う過程で、
ジェンダーだったり
家庭内での男女の格差、
愛とは、幸せとは。
と色々な要素が詰まった濃い作品。
サスペンス要素をちょっと足して、
なんて生ぬるいもんじゃなく、
ガッチガチのミステリなので、
コアなミステリー小説ファンにも
読んでもらいたい。
この作品から
「アマリリスの町田さん」
と変わる声もあるように思える。
最終章ではそんな凄みで
打ちのめされる衝撃がある。
「ひとはひとで歪む。
けれど、ひとはひとによって、
まっすぐになることもできる。」
今後の人生でバイブルとなる1冊。
主人公の書き続けなければ、
伝え続けなければという思いは
町田そのこさんの
決意そのものだ。
町田先生のサスペンス!!
というだけでも
期待値MAX。
今まで町田さんが
作中でずっと書き続けてきた
「生きづらい人」の
究極の姿やなと思いました。
辛さの先へと目を向けて
進んでいこうと
力を感じる結末に、
心震える思いです。
幸せになりたかっただけなのに、
運命の歯車が狂ってしまった
女性たちを深く抉るように描き切った
著者の新境地を開いた作品と言っても
過言ではない最高傑作。