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2017.5.7

恋愛小説? ファンタジー? SF? ジャンル分け不能、ちょっと奇妙で愛しい18の物語の玉手箱。川上弘美『ぼくの死体をよろしくたのむ』

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恋愛小説? ファンタジー? SF? ジャンル分け不能、ちょっと奇妙で愛しい18の物語の玉手箱。川上弘美『ぼくの死体をよろしくたのむ』

川上マジック全開――不思議でちょっと奇妙、

でもなぜか心が温かくなる名短篇、18篇を収録。

 

物語の一部をご紹介 ――

 
右の掌にダンベルを持っている男の人。

その筋肉の美しさに私は恋をした‥‥‥「鍵」
 
家賃は格安で2万円。そのかわり一匹だけ

扶養義務を負うというのがこのアパートの決まり。

ぼくは名前も知らない不思議な一匹を選んだ‥‥‥「大聖堂」
 
知らない男の人と掌サイズの<小さい人>に出会った。

「猫にさらわれた恋人を助けてほしい」と

小さい人は言う‥‥‥「銀座 午後二時 歌舞伎座あたり」
 
私の部屋を訪ねてきたのは魔法を使って

時間の流れを変える男の子だった‥‥‥「二百十日」
 
「一晩、一緒に過して下さい。お金は払います」と

見知らぬ女性に言われて一晩中踊りつづけることになった〈僕〉‥‥‥「お金は大切」
 
少女は緑の缶に〈幾人もの死体〉を集めている‥‥‥「ルル秋桜」
 
人間を精神年齢に応じた外見にするための技術は

今世紀後半に発達した。

私は58歳だけれど精神年齢は18歳なので、

宿舎の中では18歳の姿ですごす‥‥‥「スミレ」
 
私と弟のとらお、そして母の恒子、父の新吉。

私たち四人家族は十年前に家族を解散した。

私は一年のうち十ヵ月は三人の元家族の家を泊り歩く‥‥‥「無人島から」
 
そして不思議な表題作――

《ぼくの死体と/晴美と/さくらを/よろしくたのむ/

いや/死体はどうでもいいから/晴美とさくらを/よろしく》

「なんですか、これ」

「あなたのお父さんが、

 死ぬ少し前に送ってきた手紙みたいなもの」‥‥‥「ぼくの死体をよろしくたのむ」

 
『ぼくの死体をよろしくたのむ』川上弘美
 

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