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2016.8.30

じつは昭和天皇も「生前退位」について言及していた!? 『昭和天皇は何と戦っていたのか』

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じつは昭和天皇も「生前退位」について言及していた!?   『昭和天皇は何と戦っていたのか』

戦後、昭和天皇の葛藤

 

 宮内庁は今月8日、天皇が「象徴としてのお務め」についてのお気持ちを示したビデオメッセージを公表。天皇自身が82歳になったことをふまえ、「次第に進む身体の衰えを考慮するとき、全身全霊をもって象徴の務めをはたしていくことが難しくなるのではないか」と将来的な退位の願いを強くにじませました。

 

 じつは「退位問題」については、昭和天皇も戦後に言及したことがありました。

 

 宮内庁が24年余りの歳月をかけて作成した「昭和天皇実録」。全61巻、1万2137ページにもおよぶ一大歴史資料です。この難解な資料を丹念に読み解き、平易な言葉とダイアリー(日記)方式でつづったのが『昭和天皇は何と戦っていたのか』。

 

 著者の井上亮氏は、昭和天皇に仕えた宮内庁長官・富田朝彦氏が付けていたメモ――いわゆる「富田メモ」を発掘し、2006年度の新聞協会賞を受賞した日経新聞記者です。

 

 本書によると、敗戦後の1945年8月29日、木戸幸一内大臣に「自らの退位により、戦争責任者の連合国への引き渡しを取りやめることができるや否や」と質問していました。

 

 それから、戦後20年をすぎた1967年4月5日、突如、昭和天皇が退位問題について語り出します。

 

 ‹‹きっかけは、この年の元日から始まった読売新聞の連載「昭和史の天皇」だと記されています。『実録』で初めて明らかにされた事実です››

 

 なぜ、このタイミングに、どんなお気持ちで退位問題について語ったのでしょうか。

 

 本書で大きく取り上げられているテーマのひとつが、「戦後の昭和天皇を苦しめていたもの」です。戦前の軍部と昭和天皇が対立していたことは、すでにさまざまな資料で知られていますが、戦後の昭和天皇の葛藤について論じられることは、そう多くはありませんでした。著者は「実録」をもとに、戦後の昭和天皇の心象風景を描きます。

 

 21世紀の我々が、昭和天皇の喜び、怒り、悲しみ、苦悩を知ることは、「激動の20世紀」を"追体験"することにほかなりません。

 

 戦後、昭和天皇を苦しめたものとは・・・? 激動の時代を、昭和天皇の人生をともに歩んだかのような体験ができるのと同時に、「実録」の全体像がすべてわかる貴重な一冊です。

 

「昭和天皇は何と戦っていたのか

『実録』で読む87年の生涯」

著/井上 亮

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