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2016.1.15

『リング』『らせん』の鈴木光司が描く、複雑に絡まる“運命の糸”。 『ブルーアウト』

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『リング』『らせん』の鈴木光司が描く、複雑に絡まる“運命の糸”。 『ブルーアウト』

 和歌山県串本町のダイビングショップでガイドとして働く女性ダイバー高畑水輝。名古屋の私立大学を卒業後、東京のコンサルタント会社に就職し、職場の先輩と結婚したが、離婚、会社にいづらくなり、故郷に戻ってきた。迷いに迷った決断だったが、今はこの仕事が天職だと満足している。

 

 串本町といえば、1890年、沖合で遭難したエルトゥールル号の生存者を町民がもてなし、これをきっかけにトルコは親日となったことが有名だ。彼女の五世代前の先祖・勇吉は、日本における潜水士の草分け的存在だった。水輝は祖父・勇三から、エルトゥールル号の遭難事故が、勇吉が海に潜ることになった理由だと聞いていた。これ以来、高畑家とダイビングは切っても切れない関係になった。水輝が潜るようになったのも、ダイビングショップを営んでいた父・祐介の影響だった。

 

 ある日、「エルトゥールル号の沈没現場に行きたい」と水輝のダイビングショップを訪れたトルコ人青年・ギュスカン。彼にとっての五世代前の祖先・ムスタファは、125年前の事故で救出されたひとりだという。水輝は当初、観光目的のダイビングだと思っていたが、ギュスカンの行動を見るかぎり違うようだ。彼は魚にも珊瑚にも目をくれず、ひたすら海底の砂地を棒でつついている。ところが、水輝が海中の風景を確認した次の瞬間、ギュスカンが視界から消えていた。彼を必死で探す水輝。1世紀の時を経て、絡み合うふたりの宿命はいかに・・・?

 

 1万8000マイルの航海歴を持つ著者ならではの海底描写にハラハラドキドキ。本作は著者が得意とするホラーではなく、海洋サスペンス。しかし、根底にあるのは『リング』『らせん』と同じく“つながり”。過去と現在がシンクロし、時代を超えた人と人とのつながりにハッとさせられます。親から子へ、鈴木光司さんが伝えたかったメッセージに胸が熱くなる感動巨編です。

 

『ブルーアウト』

著/鈴木光司

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