2014年9月27日(土)〜10月24日(金)
企画協力:劇団民藝、寺尾音楽事務所
映画人としての宇野重吉
その飄々(ひょうひょう)とした演技から「宇野重」と呼ばれ親しまれた名優・宇野重吉は1914年福井県に生まれ、東京の大学進学後、プロレタリア演劇の研究に没頭し、戦後滝沢修らと劇団民藝を創設する。一方で新藤兼人のデビュー作『愛妻物語』では主演をつとめ、以後日活映画を中心に、特に社会性の強い作品では、欠かすことのできない俳優として、大きな存在感を示している。
本年は宇野重吉の生誕百年にあたることから、数多い出演作の中から名作と呼ばれる作品や、劇団民藝が自主製作した貴重な作品を中心にリストアップした。これらの作品には、劇団民藝の仲間である多くの俳優が出演しており、その多彩な顔ぶれによる重厚な演技は感動を呼ぶだろう。また、宇野重吉は演出家としても手腕を発揮しており、今回はその監督二作品を味わうことができる。
民藝と日活
今から半世紀ほど前、私が日活撮影所に入って最初に付いた仕事が石原裕次郎の『青年の椅子』という映画だった。源氏鶏太原作の熱血サラリーマン物なのだが、なんとその映画に宇野重吉、滝沢修、芦田伸介という民藝の錚々たる名優が脇役として出演していた。
裕次郎映画に限らず、当時の日活映画には多勢の民藝の俳優達が出演している。松竹や東宝に比べ、日活は後発で脇役俳優が育っていなかった。その一方で、民藝の俳優達は、芝居は上手いけれども生活は楽ではなかった。そういった双方の利害が一致して、一種の業務提携をしていたのである。出演だけでなく、日活の若手俳優の演技訓練も民藝の演技研究所が請け負っており、後の大スター渡哲也も半年間民藝に通った後、期待の大型新人としてデビューしたのだった。
岡田裕(映画プロデューサー)
*この色は民藝の俳優
『愛妻物語』 昭和26年 白黒 監督:新藤兼人 出演:乙羽信子、宇野重吉、滝沢修、殿山泰司、菅井一郎
『あやに愛しき』 昭和31年 白黒 監督:宇野重吉 出演:田中絹代、信欣三、東野英治郎、山田五十鈴、奈良岡朋子、芥川比呂志 *16mm上映
『倖せは俺等のねがい』 昭和32年 白黒 監督:宇野重吉 出演:フランキー堺、左幸子、高野通子、草山英明、滝沢修 *16mm上映
『青年の椅子』 昭和37年 カラー 監督:西河克己 出演:石原裕次郎、芦川いづみ、水谷良重、山田吾一、藤村有弘、宇野重吉
『破戒』 昭和23年 白黒 監督:木下惠介 出演:池部良、桂木洋子、宇野重吉、滝沢修、菅井一郎 *16mm上映
『夜明け前』 昭和28年 白黒 監督:吉村公三郎 出演:滝沢修、乙羽信子、宇野重吉、清水将夫、細川ちか子
『ここに泉あり』 昭和30年 白黒 監督:今井正 出演:岸恵子、岡田英次、小林桂樹、加東大介、大滝秀治
『花荻先生と三太』 昭和27年 白黒 監督:鈴木英夫 出演:山田五十鈴、宇野重吉、清水将夫、細川ちか子、津村悠子
『夜あけ朝あけ』 昭和31年 白黒 監督:若杉光夫 出演:遠井慶子、吉田隆、有泉圭助、乙羽信子、北林谷栄、宇野重吉 *16mm上映
『サムライの子』 昭和38年 白黒 監督:若杉光夫 出演:田中鈴子、小沢昭一、南田洋子、新田昌玄、鶴丸睦彦 *16mm上映
『キクとイサム』 昭和34年 白黒 監督:今井正 出演:高橋恵美子、奥の山ジョー、北林谷栄、清村耕次、朝比奈愛子
『証人の椅子』 昭和40年 白黒 監督:山本薩夫 出演:奈良岡朋子、福田豊土、新田昌玄、吉行和子、浜田寅彦
『わが生涯のかゞやける日』 昭和23年 白黒 監督:吉村公三郎 出演:山口淑子、森雅之、滝沢修、宇野重吉、井上正夫
『地図のない町』 昭和35年 白黒 監督:中平康 出演:葉山良二、南田洋子、吉行和子、小沢昭一、宇野重吉
『金環蝕』 昭和50年 カラー 監督:山本薩夫 出演:仲代達矢、宇野重吉、三國連太郎、京マチ子、中村玉緒