神保町シアター

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「本の街・神保町」文芸映画特集Vol.12
浪花の映画の物語


1. 残菊物語

勘当され、大阪の舞台に立った歌舞伎役者と、彼を支えた女の物語。失意の地大阪に船乗り込みする終幕が素晴らしい。贅を尽くした傑作。

2. 夜の女たち

敗戦後の貧窮の時代、男に絶望した女が新世界裏の娼婦となる。焼け跡生々しい現地ロケを交えた、溝口らしい仮借ない演出が見もの。

3. 女殺し油地獄

天満の油屋の手のつけられない放蕩息子が周囲の善意を踏みつけ、破滅へと直進する。鴈治郎と扇雀の親子共演がスリリングな世話物の秀作。

4. 浪花の恋の物語

飛脚屋の養子忠兵衛と遊女梅川の熱愛を、作者近松を登場させながら描く野心作。人気絶頂の錦之助と有馬の初共演に魅了される世話物。

5. 新・夫婦善哉

前作の8年後に作られた後日談だが、森繁は、愛人と東京に出奔する相変わらずのダメ男。船場の時代の流れも巧みに押えた夫婦愛の物語。

6. 心中天網島

近松の“虚実の被膜”を映画表現に置き換えたかのように、特異な美術や黒衣の登場で世を驚かせた傑作。岩下志麻の美しさに圧倒される。

7. 曽根崎心中

意地を貫く女と男の道行きを、圧倒的な熱情で描いた増村最後の傑作。一途に燃えるヒロインを演じた梶芽衣子は演技賞を独占した。

8. 春琴物語

谷崎の名作の2度目の映画化で、船場の薬種問屋の盲目の娘で琴の名手お琴と、彼女にかしずく使用人佐助の特異な愛の物語を綴る芸道もの。

9. いとはん物語

器量の悪い大店の長女の縁談を通して、古き良き心性の美しさを愛おしむ。京の醜女メイクも見もの(写真は美女になる夢を見たシーン)。

10. 忘れじの人

船場の大店の娘の数奇な半生を、回想形式で綴る。岸恵子がにんじんくらぶ第一回企画作品として18歳から46歳までを演じた女性映画。

11. 女の勲章

勝ち気な船場のいとはんが起こした洋裁学校を舞台にした、女たちの打算と愛欲の物語。濃厚明晰な吉村演出が魅せるオールスター映画。

12. 女系家族

急死した大店の主人の葬儀に、愛人を名乗る女が現れたことから巻き起こる骨肉の遺産争い。こってりした人間絵巻が滅法おもしろい傑作。

13. 卍

船場の社長令嬢の魅力に引きずり込まれる有閑主婦とその夫。同性愛をテーマにした谷崎の原作を、若尾文子の妖しさ満開で描いた名作。

14. 細雪

谷崎の原作から天変地異をオミットし、船場の名家の美しい姉妹の日常を、三女の結婚問題を軸に優美に艶やかに映像化した市川崑の傑作。

15. 太陽の墓場

ヌーベル・バーグの頭目として、時代の寵児となった大島渚が、釜ヶ崎を描いた苛烈なドヤ街人間絵巻。はかなく苦い詩情が横溢する。

16. がめつい奴

三益愛子が釜ヶ崎の強欲婆さんを演じ、日本演劇史上のロングラン記録を樹立した大ヒット舞台の映画化。極彩色で描くコテコテ浪花気質。

17. 背徳のメス

安倍野の客筋のよくない病院でおきた堕胎手術の失敗が、やがて殺人未遂事件に発展する。場末を徘徊する漁色家の外科医を田村が好演。

18. 当りや大将

釜ヶ崎を舞台に、わざと車にひかれる当り屋稼業に精出すチンピラとその周囲の人間群像を、現地ロケ敢行で描いたヒューマンドラマ。

19. 現代インチキ物語 騙し屋

ドケチのペテン師たちの舌先三寸あの手この手の身過ぎ世過ぎを活写する喜劇。増村作品の中では異色の題材だが、好篇に仕上がっている。

20. 「エロ事師たち」より 人類学入門

ブルーフィルムの製作から売春斡旋まで、性をなりわいにする男の執着が、やがて求道の域にまで達していく様を綴った今村渾身の力作。

21. 泥の河

安治川河口の安食堂とその対岸に係留する宿舟の子供たちの交流を陰影深く描き、絶賛を博した秀作。敗戦後の諸相が残る昭和31年が舞台。

22. 王将

阪妻が実在の将棋指し坂田三吉を熱演した名作。三度の飯より将棋が好きな三吉と女房小春の献身を描く、巨匠伊藤大輔戦後の代表作。

23. 貸間あり

通天閣が見える丘の上のアパートを舞台に、超個性的な住人たちの人間模様を猥雑に綴った傑作。川島作品の中でも特に人気の高い一篇。

24. 猫と鰹節

口先三寸の詐欺師が4人の仲間を従えて、関西一円の詐欺師たちを相手に大芝居を打ち、最後の一儲けをたくらむ。芸達者勢揃いの本格喜劇。

25. 悪名

勝新&田宮の名コンビで、一世を風靡した人気シリーズの第一作。男気あふれる河内の暴れん坊朝吉と相棒モートルの貞の活躍を描く名作。

26. スチャラカ社員

関西の人気番組の映画化で、ビルの屋上に間借する倒産寸前の商事会社の面々の活躍を、大阪独立の夢想を交えて描いた、うれしい一作。

27. 横堀川

道楽者と結婚した昆布屋のいとはんが、やがて夫の趣味を活かす寄席経営に乗り出す。倍賞がしっかり者の浪花女をしなやかに演じる。

28. 白い巨塔

浪速大学医学部の次期教授の座をめぐる争いをスーパーヘビー級の迫力で描く。通天閣は出てきませんが、日本で一番面白い映画のひとつ。