神保町シアター

これまでの特集企画

「本の街・神保町」文芸映画特集Vol.2
大映の女優たち

※「原作」表記のない作品はオリジナル脚本によるものです。
1. 流れる星は生きている

満州から3人の幼な子を連れて引揚げ、東京で夫の帰還を待った女性のベストセラー手記を、三益愛子の母ものとして映画化。決死の渡河シーンが泣ける。
※16mmで上映

2. 瀧の白糸

京マチ子と森雅之の名コンビによる新派劇決定版の映画化。監督の野淵昶は大学教授から転身し、戦前から女性映画に腕を振るった知られざる名匠である。
※16mmで上映

3. あにいもうと

身持ちの悪い妹と石工の兄の愛憎を、多摩川べりの風景の中で描いた成瀬巳喜男の名作。葛藤の果てに発露する肉親の情愛を、主演コンビが見事に演じている。
※16mmで上映

4. 川のある下町の話

王子の音無川付近を舞台に描く、幼い弟と2人で暮らす娘と医者の恋の物語。ミス日本からデビュー2年目の山本は、根上演じる医者を密かに慕う役どころ。
※16mmで上映

5. 夜の蝶

吉村公三郎の『夜の河』で一躍大スターとなった山本が、先輩である京マチ子と、夜の銀座を舞台に女の火花を散らした傑作。大ヒットした巨匠吉村の娯楽作。
※16mmで上映

6. 浮草

小津が大映で撮った唯一の作品で、小津の静的なイメージを覆す傑作。嫉妬に燃える京マチ子が、豪雨の中で鴈治郎と罵り合う名場面は、大映技術陣の面目躍如。
※16mmで上映

7. 私は二歳

若い夫婦の育児の日々をスケッチし、キネマ旬報ベストワンを獲得した秀作。育児書の映画化という企画は故市川崑ならでは。山本の若い母親ぶりがキュート。
※16mmで上映

8. 偽れる盛装

京都宮川町で、男を手玉にとって生きていく「肉体派」芸者を描く名作。熱演の京マチ子と、華麗なテクニックの限りを尽くした吉村の、ともに代表作である。

9. 夜の河

吉村の初のカラー作品で、京都の染物屋を切り盛りする女性の凛とした生き方を描いた恋愛映画の名作。山本富士子は本作で演技開眼し、名実ともにスターとなった。

10. 赤線地帯

洲崎遊廓を舞台に、娼婦たちの様々な境遇と生き方を見つめた巨匠溝口の遺作。豪華女優陣が一堂に会したアンサンブルの素晴らしさは映画黄金期を物語る。

11. 氷壁

前穂高岳北壁の転落事故に端を発する、サスペンスタッチの恋愛ドラマ。監督4作目の増村が放った大ヒット作品で、山本は美貌の人妻をしっとりと演じる。

12. 大阪の女

戦後の大阪の焼け残りにできた上方落語や漫才芸人たちの「芸人村」を舞台に描く、底抜けにお人よしの浪花女の一代記。大挙出演の関西喜劇人にも要注目の佳篇。

13. 白鷺

山本の十八番となった鏡花ものの代表作で、カンヌ映画祭特別表彰作品。芸者となった没落商家の娘の悲恋を描く。強さと儚さが同居する女性像の造形が見事。

14. 細雪

■「細雪」二度目の映画化で、京マチ子が次女幸子、山本富士子が三女雪子を演じた絢爛豪華な作品。時代設定は戦後だが、鉄砲水など原作の山場もキチンと踏襲。

15. 女の勲章

大阪の服飾業界を舞台に、洋裁学校を経営するデザイナーとその弟子たちの人間模様を華麗に描く秀作。オールスターの女優陣に伍した田宮の出世作でもある。

16. 越前竹人形

若尾の代表作のひとつで、身請けされた遊女の純愛を描いた名作。しっとりとした情話で、中村玉緒が毎日映画コンクール助演賞を受賞するなど演技陣も充実。

17. 女は二度生まれる

世評高い川島雄三の若尾文子三部作の一作目。靖国神社にほど近い、九段の芸者の男性遍歴を綴った傑作。若尾は初のキネマ旬報女優賞など各賞に輝いた。

18. 女系家族

三人の娘を残して主人が急死した船場の大店の遺産争いに、葬儀の日に現れた愛人までが絡む。欲に駆られた骨肉の争いが滅法おもしろい、名匠三隅の傑作。

19. 舞妓と暗殺者

長州の脱藩者たちで組織された暗殺集団の若者と、金で買われる運命の舞妓との刹那の恋の光芒を描く。小品ながら大映京都スタッフの確かな仕事にうなる。

20. なみだ川

江戸日本橋を舞台に、やくざな兄が悩みの種のしっかり者の娘を描く秀作。人情味あふれる山本周五郎の世界をさわやかに映画化し、今回最も泣ける映画です。

21. 古都憂愁 姉いもうと

父から受け継いだ老舗京料理屋の味を守る娘が、妹の許嫁に恋慕される。戦時中の京都を舞台に、テンポよく描かれた秀作メロドラマ。映像美も素晴らしい。

22. ひき裂かれた盛装

昨年末、惜しくも死去した田中徳三による瀟洒な犯罪映画。藤村がクールな悪女、安田が愛に生きる純情娘を演じたプログラム・ピクチャーの佳作。成田三樹夫も好演。

23. 怪談雪女郎

「雪女」伝説は小林正樹の『怪談』や黒澤明の『夢』などでも描かれたが、ドラマとして面白いものは本作だけだろう。藤村そして美術の素晴らしさも特筆もの。

24. 不信のとき

銀座のホステスに愛を告白された妻ある男が、請われるままに子供を作ってしまう。愛人役の若尾が3度目のキネ旬女優賞を得た、巨匠今井正による秀作風俗映画。

25. 清作の妻

日露戦争の時代、夫を出征させないために、その妻のしたこととは。国家権力に勝利した女の情念を描いた傑作で、若尾は二度目のキネ旬女優賞他各賞に輝いた。

26. 赤い天使

映画史に残る増村保造&若尾文子コンビの極北といえる反戦映画。戦争末期の天津の野戦病院を舞台に、極限状態におかれた従軍看護婦が見せる母性を描く。

27. 痴人の愛

増村の仮借ない演出のもと、谷崎文学の永遠のヒロイン、ナオミを演じた安田道代が清純派から大きく羽ばたいた作品。譲治役の小沢昭一は絶妙なおかしさ。

28. 遊び

増村保造の48本目の作品で、この年倒産した大映最後の秀作。貧しい家庭の少女とチンピラの少年が出会い、ここではないどこかへと旅立つ清新な青春映画。