これまでの特集企画
「本の街・神保町」文芸映画特集Vol.2
大映の女優たち
1. 流れる星は生きている
-
監督:小石栄一
原作:藤原てい
S24('49) 大映東京
白黒
スタンダード
1時間24分
脚本:館岡謙之助
撮影:姫田真佐久
音楽:斎藤一郎
美術:柴田篤二
出演:三益愛子、三條美紀、羽鳥敏子、徳川夢声、大久保進、佐藤勝彦
満州から3人の幼な子を連れて引揚げ、東京で夫の帰還を待った女性のベストセラー手記を、三益愛子の母ものとして映画化。決死の渡河シーンが泣ける。
※16mmで上映
2. 瀧の白糸
-
監督:野淵昶
原作:泉鏡花「義血侠血」
S27('52) 大映京都
白黒
スタンダード
1時間37分
脚本:依田義賢
撮影:宮川一夫
音楽:早坂文雄
美術:小池一美
出演:京マチ子、森雅之、浪花千栄子、羅門光三郎、進藤英太郎、殿山泰司
京マチ子と森雅之の名コンビによる新派劇決定版の映画化。監督の野淵昶は大学教授から転身し、戦前から女性映画に腕を振るった知られざる名匠である。
※16mmで上映
3. あにいもうと
-
監督:成瀬巳喜男
原作:室生犀星
S28('53) 大映東京
白黒
スタンダード
1時間27分
脚本:水木洋子
撮影:峰重義
音楽:斎藤一郎
美術:仲美喜雄
出演:京マチ子、森雅之、久我美子、浦辺粂子、山本礼三郎、船越英二、本間文子
身持ちの悪い妹と石工の兄の愛憎を、多摩川べりの風景の中で描いた成瀬巳喜男の名作。葛藤の果てに発露する肉親の情愛を、主演コンビが見事に演じている。
※16mmで上映
4. 川のある下町の話
-
監督:衣笠貞之助
原作:川端康成
S30('55) 大映東京
白黒
スタンダード
1時間48分
脚本:衣笠貞之助
撮影:渡辺公夫
音楽:斎藤一郎
美術:柴田篤二
出演:有馬稲子、山本富士子、根上淳、川上康子、細川ちか子
王子の音無川付近を舞台に描く、幼い弟と2人で暮らす娘と医者の恋の物語。ミス日本からデビュー2年目の山本は、根上演じる医者を密かに慕う役どころ。
※16mmで上映
5. 夜の蝶
-
監督:吉村公三郎
原作:川口松太郎
S32('57) 大映東京
カラー
スタンダード
1時間30分
脚本:田中澄江
撮影:宮川一夫
音楽:池野成
美術:間野重雄
出演:京マチ子、山本富士子、船越英二、山村聡、芥川比呂志、小沢栄太郎
吉村公三郎の『夜の河』で一躍大スターとなった山本が、先輩である京マチ子と、夜の銀座を舞台に女の火花を散らした傑作。大ヒットした巨匠吉村の娯楽作。
※16mmで上映
6. 浮草
-
監督:小津安二郎
S34('59) 大映東京
カラー
スタンダード
1時間59分
脚本:野田高梧、小津安二郎
撮影:宮川一夫
音楽:斎藤高順
美術:下河原友雄
出演:京マチ子、若尾文子、野添ひとみ、杉村春子、中村鴈治郎、川口浩、笠智衆
小津が大映で撮った唯一の作品で、小津の静的なイメージを覆す傑作。嫉妬に燃える京マチ子が、豪雨の中で鴈治郎と罵り合う名場面は、大映技術陣の面目躍如。
※16mmで上映
7. 私は二歳
-
監督:市川崑
原作:松田道雄
S37('62) 大映東京
カラー
スタンダード
1時間28分
脚本:和田夏十
撮影:小林節雄
音楽:芥川也寸志
美術:千田隆
出演:山本富士子、船越英二、浦辺粂子、渡辺美佐子、岸田今日子、鈴木博雄
若い夫婦の育児の日々をスケッチし、キネマ旬報ベストワンを獲得した秀作。育児書の映画化という企画は故市川崑ならでは。山本の若い母親ぶりがキュート。
※16mmで上映
8. 偽れる盛装
-
監督:吉村公三郎
S26('51) 大映京都
白黒
スタンダード
1時間43分
脚本:新藤兼人
撮影:中井朝一
音楽:伊福部昭
美術:水谷浩
出演:京マチ子、藤田泰子、小林桂樹、進藤英太郎、菅井一郎、村田知英子、滝花久子
京都宮川町で、男を手玉にとって生きていく「肉体派」芸者を描く名作。熱演の京マチ子と、華麗なテクニックの限りを尽くした吉村の、ともに代表作である。
9. 夜の河
-
監督:吉村公三郎
原作:沢野久雄
S31('56) 大映京都
カラー
スタンダード
1時間44分
脚本:田中澄江
撮影:宮川一夫
音楽:池野成
美術:内藤昭
出演:山本富士子、上原謙、川崎敬三、東野英治郎、小野道子、阿井美千子
吉村の初のカラー作品で、京都の染物屋を切り盛りする女性の凛とした生き方を描いた恋愛映画の名作。山本富士子は本作で演技開眼し、名実ともにスターとなった。
10. 赤線地帯
-
監督:溝口健二
S31('56) 大映東京
白黒
スタンダード
1時間26分
脚本:成沢昌茂
撮影:宮川一夫
音楽:黛敏郎
美術:水谷浩
出演:京マチ子、若尾文子、三益愛子、木暮実千代、進藤英太郎、沢村貞子
洲崎遊廓を舞台に、娼婦たちの様々な境遇と生き方を見つめた巨匠溝口の遺作。豪華女優陣が一堂に会したアンサンブルの素晴らしさは映画黄金期を物語る。
11. 氷壁
-
監督:増村保造
原作:井上靖
S33('58) 大映東京
カラー
ビスタ
1時間37分
脚本:新藤兼人
撮影:村井博
音楽:伊福部昭
美術:下河原友雄
出演:山本富士子、野添ひとみ、菅原謙二、川崎敬三、上原謙、浦辺粂子
前穂高岳北壁の転落事故に端を発する、サスペンスタッチの恋愛ドラマ。監督4作目の増村が放った大ヒット作品で、山本は美貌の人妻をしっとりと演じる。
12. 大阪の女
-
監督:衣笠貞之助
原作:八住利雄「女神誕生」(TV)
S33('58) 大映東京
カラー
スタンダード
1時間44分
脚本:衣笠貞之助、相良準
撮影:渡辺公夫
音楽:斎藤一郎
美術:柴田篤二
出演:京マチ子、中村鴈治郎、船越英二、高松英郎、小野道子、山茶花究
戦後の大阪の焼け残りにできた上方落語や漫才芸人たちの「芸人村」を舞台に描く、底抜けにお人よしの浪花女の一代記。大挙出演の関西喜劇人にも要注目の佳篇。
13. 白鷺
-
監督:衣笠貞之助
原作:泉鏡花
S33('58) 大映東京
カラー
シネスコ
1時間37分
脚本:衣笠貞之助、相良準
撮影:渡辺公夫
音楽:斎藤一郎
美術:柴田篤二
出演:山本富士子、野添ひとみ、川崎敬三、佐野周二、賀原夏子、角梨枝子
山本の十八番となった鏡花ものの代表作で、カンヌ映画祭特別表彰作品。芸者となった没落商家の娘の悲恋を描く。強さと儚さが同居する女性像の造形が見事。
14. 細雪
-
監督:島耕二
原作:谷崎潤一郎
S34('59) 大映東京
カラー
シネスコ
1時間45分
脚本:八住利雄
撮影:小原譲治
音楽:大森盛太郎
美術:柴田篤二
出演:京マチ子、山本富士子、叶順子、轟夕起子、川崎敬三、根上淳
■「細雪」二度目の映画化で、京マチ子が次女幸子、山本富士子が三女雪子を演じた絢爛豪華な作品。時代設定は戦後だが、鉄砲水など原作の山場もキチンと踏襲。
15. 女の勲章
-
監督:吉村公三郎
原作:山崎豊子
S36('61) 大映東京
カラー
シネスコ
1時間50分
脚本:新藤兼人
撮影:小原譲治
音楽:池野成
美術:間野重雄
出演:京マチ子、若尾文子、中村玉緒、叶順子、田宮二郎、森雅之
大阪の服飾業界を舞台に、洋裁学校を経営するデザイナーとその弟子たちの人間模様を華麗に描く秀作。オールスターの女優陣に伍した田宮の出世作でもある。
16. 越前竹人形
-
監督:吉村公三郎
原作:水上勉
S38('63) 大映京都
白黒
シネスコ
1時間43分
脚本:笠原良三
撮影:宮川一夫
音楽:池野成
美術:西岡善信
出演:若尾文子、山下洵一郎、中村玉緒、中村鴈治郎、西村晃、殿山泰司
若尾の代表作のひとつで、身請けされた遊女の純愛を描いた名作。しっとりとした情話で、中村玉緒が毎日映画コンクール助演賞を受賞するなど演技陣も充実。
17. 女は二度生まれる
-
監督:川島雄三
原作:富田常雄「小えん日記」
S36('61) 大映東京
カラー
シネスコ
1時間39分
脚本:井手俊郎、川島雄三
撮影:村井博
音楽:池野成
美術:井上章
出演:若尾文子、藤巻潤、山村聡、山茶花究、フランキー堺、江波杏子
世評高い川島雄三の若尾文子三部作の一作目。靖国神社にほど近い、九段の芸者の男性遍歴を綴った傑作。若尾は初のキネマ旬報女優賞など各賞に輝いた。
18. 女系家族
-
監督:三隅研次
原作:山崎豊子
S38('63) 大映京都
カラー
シネスコ
1時間51分
脚本:依田義賢
撮影:宮川一夫
音楽:斎藤一郎
美術:内藤昭
出演:若尾文子、京マチ子、高田美和、鳳八千代、浪花千栄子、中村鴈治郎
三人の娘を残して主人が急死した船場の大店の遺産争いに、葬儀の日に現れた愛人までが絡む。欲に駆られた骨肉の争いが滅法おもしろい、名匠三隅の傑作。
19. 舞妓と暗殺者
-
監督:三隅研次
S38('63) 大映京都
白黒
シネスコ
1時間15分
脚本:新藤兼人
撮影:本多省三
音楽:小杉太一郎
美術:内藤昭
出演:高田美和、津川雅彦、城健三朗(=若山富三郎)、山本耕一、成田純一郎
長州の脱藩者たちで組織された暗殺集団の若者と、金で買われる運命の舞妓との刹那の恋の光芒を描く。小品ながら大映京都スタッフの確かな仕事にうなる。
20. なみだ川
-
監督:三隅研次
原作:山本周五郎「おたふく物語」
S42('67) 大映京都
カラー
シネスコ
1時間19分
脚本:依田義賢
撮影:牧浦地志
音楽:小杉太一郎
美術:内藤昭
出演:藤村志保、若柳菊、細川俊之、戸浦六宏、藤原釜足、玉川良一、安部徹
江戸日本橋を舞台に、やくざな兄が悩みの種のしっかり者の娘を描く秀作。人情味あふれる山本周五郎の世界をさわやかに映画化し、今回最も泣ける映画です。
21. 古都憂愁 姉いもうと
-
監督:三隅研次
原作:川口松太郎「古都憂愁」
S42('67) 大映京都
カラー
シネスコ
1時間30分
脚本:依田義賢
撮影:武田千吉郎
音楽:小杉太一郎
美術:内藤昭
出演:藤村志保、若柳菊、八千草薫、船越英二、藤岡琢也、長谷川明男
父から受け継いだ老舗京料理屋の味を守る娘が、妹の許嫁に恋慕される。戦時中の京都を舞台に、テンポよく描かれた秀作メロドラマ。映像美も素晴らしい。
22. ひき裂かれた盛装
-
監督:田中徳三
原作:黒岩重吾「夜間飛行」
S42('67) 大映京都
カラー
シネスコ
1時間29分
脚本:池田一朗
撮影:森田富士郎
音楽:鏑木創
美術:内藤昭
出演:藤村志保、安田道代、成田三樹夫、小沢栄太郎、小松方正、山下洵一郎
昨年末、惜しくも死去した田中徳三による瀟洒な犯罪映画。藤村がクールな悪女、安田が愛に生きる純情娘を演じたプログラム・ピクチャーの佳作。成田三樹夫も好演。
23. 怪談雪女郎
-
監督:田中徳三
S43('68) 大映京都
カラー
シネスコ
1時間20分
脚本:八尋不二
撮影:牧浦地志
音楽:伊福部昭
美術:内藤昭
出演:藤村志保、石浜朗、村瀬幸子、原泉、須賀不二男、内藤武敏、長谷川待子
「雪女」伝説は小林正樹の『怪談』や黒澤明の『夢』などでも描かれたが、ドラマとして面白いものは本作だけだろう。藤村そして美術の素晴らしさも特筆もの。
24. 不信のとき
-
監督:今井正
原作:有吉佐和子
S43('68) 大映東京
カラー
シネスコ
2時間
脚本:井手俊郎
撮影:小林節雄
音楽:富田勲
美術:渡辺竹三郎
出演:若尾文子、岡田茉莉子、田宮二郎、加賀まりこ、岸田今日子、三島雅夫、原泉
銀座のホステスに愛を告白された妻ある男が、請われるままに子供を作ってしまう。愛人役の若尾が3度目のキネ旬女優賞を得た、巨匠今井正による秀作風俗映画。
25. 清作の妻
-
監督:増村保造
原作:吉田絃二郎
S40('65) 大映東京
白黒
シネスコ
1時間33分
脚本:新藤兼人
撮影:秋野友宏
音楽:山内正
美術:下河原友雄
出演:若尾文子、田村高広、殿山泰司、成田三樹夫、清川玉枝、佐々木孝丸
日露戦争の時代、夫を出征させないために、その妻のしたこととは。国家権力に勝利した女の情念を描いた傑作で、若尾は二度目のキネ旬女優賞他各賞に輝いた。
26. 赤い天使
-
監督:増村保造
原作:有馬頼義
S41('66) 大映東京
白黒
シネスコ
1時間35分
脚本:笠原良三
撮影:小林節雄
音楽:池野成
美術:下河原友雄
出演:若尾文子、芦田伸介、川津祐介、赤木蘭子、池上綾子、千波丈太郎
映画史に残る増村保造&若尾文子コンビの極北といえる反戦映画。戦争末期の天津の野戦病院を舞台に、極限状態におかれた従軍看護婦が見せる母性を描く。
27. 痴人の愛
-
監督:増村保造
原作:谷崎潤一郎
S42('67) 大映東京
カラー
シネスコ
1時間33分
脚本:池田一朗
撮影:小林節雄
音楽:山本直純
美術:間野重雄
出演:安田(大楠)道代、小沢昭一、田村正和、倉石功、村瀬幸子、清川玉枝、内田朝雄
増村の仮借ない演出のもと、谷崎文学の永遠のヒロイン、ナオミを演じた安田道代が清純派から大きく羽ばたいた作品。譲治役の小沢昭一は絶妙なおかしさ。
28. 遊び
-
監督:増村保造
原作:野坂昭如「心中弁天島」
S46('71) 大映東京
カラー
シネスコ
1時間30分
脚本:今子正義、伊藤昌洋、増村保造
撮影:小林節雄
音楽:渡辺岳夫
美術:間野重雄
出演:関根(高橋)恵子、大門正明、根岸明美、蟹江敬三、平泉征
増村保造の48本目の作品で、この年倒産した大映最後の秀作。貧しい家庭の少女とチンピラの少年が出会い、ここではないどこかへと旅立つ清新な青春映画。
|