テツ編集長×テツ映画プロデューサー 夢の…暴走対談!! [超長尺バージョン]
ご注意!

鉄道ファンだったから見つけられたディティール、模型ファンだったから作れた映画──。映画『ALWAYS』の名プロデューサーが、映画への熱き・・・・・・もとい、鉄道への熱き思いを初めて打ち明ける。そして、最新作『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』に賭ける製作秘話とは!?
(聞き手 『月刊IKKI』編集長 江上英樹)


(鉄道)模型やってて、一番邪魔なのは異性だね(笑)

【阿部】 鉄道好きというのは”好きランク”があって、ABCDEにわけると、僕はB+ぐらいかな。

【江上】 僕はB−じゃないですかね。

【阿部】 おっ。Bマイナ・・・?

【江上】 ええ(ドキリ)。

【阿部】 話しているうちにだんだんわかる(笑)。僕は車両が好きなんです。

【江上】 じゃ、模型がお好きなんですね。自分でお作りになったりするんですか?

【阿部】 かつては作りましたよ。もう今は・・・・・・さすがにじっと部屋にこもってやるということは、あんまりないけど、気持ち的にはやりたいなと思うんですよ。

【江上】 いいですね。

【阿部】 「テツ」と言っては、鉄道ファンと鉄道ファンじゃない人を区別するんだけど、みんな子供の時はみんな好きじゃない? やっぱり男の子は、・・・・・・お人形さんをたまに好きになる男の子もいて、その先の道を誤っていく人もいるじゃないですか。

【江上】 はいはい、いますね。(笑)

【阿部】 でも、普通、男ってやっぱり、自動車にしても電車にしても乗り物好きのDNAっていうのはあって。小学校のクラスに35人の男がいるとすると、大体30人以上はそっちだと思うよ。でも、だんだんと年をとるに従って、「僕は大人なんだから」とか、「もうこういうことじゃなくて」とか言って、趣味が離れていって。“自分でふたをしていくんだ”と僕は思っているんだけど。鉄道ファンにとって、人生の一番のターニングポイントは異性です!!

【江上】 あー、問題になりますね!

【阿部】 異性っていうのがね、一番邪魔なもんだね、これは。模型やってて、一番邪魔なのは異性だね(笑)。

【江上】 やっぱそうすか・・・!?

【阿部】 彼女ができて、「趣味は何?」って聞かれたら、「ん? ドライブ」とかさ。ウソをついて(笑)。

【江上】 あ〜、わかりますよ!!

【阿部】 「趣味? 俺、ロックとか聞くんだよね」とかって言えばさ、「へえー、ロック聞くんだ」って話が盛り上がるんだけど、鉄道だと・・・・・・「鉄道? 何それ。どこがおもしろいの?」って。何か鉄道っていうのがさ・・・・・・何かこう・・・・・・何ていうのかな、何かすごく見られ方がさ・・・・・・。

【江上】 いや、わ・か・り・ま・す。

【阿部】 模型とか言うとさ、「何、子供なの?」みたいな扱いになって。ブラス(真鍮製)模型のことをプラモって言う女性がいますからね。「これ、プラモですか」って、プラモじゃねえだろ(笑)。“何でもプラモ女”がいるんですよ(笑)。

【江上】 ―”何でもプラモ女”!!!(笑) そこは僕も鉄道好きとして苦労しましたが(笑)、どうされていましたか?

【阿部】 模型をなんとなく持って帰ってもOKになるのは、関係が完全にコンクリートで固まった段階ですね。「実はさ・・・」と言えるのは。

【江上】 「実はさ・・・」! 言えるまでに相当かかりますよね!!

【阿部】 微動だにしない関係を作ってからじゃないと。なかなかカミングアウトはできないね(笑)。だからみんな「隠れテッちゃん」になるんですよ。今回の映画の『RAILWAYS』のセリフの中に、奥さんの高島礼子さんが、旦那の中井貴一さんに「私、知ってたわよ」というのがあって。「鉄道の本とか、このへんに隠してたの、知ってたわよ」。鉄道の本くらい隠したって、いいじゃんなぁ?(笑) ま、そんな感じよ。

【江上】 (爆笑)。

【阿部】 鉄道雑誌ってあるわけよ。で、買うじゃん。女房は全く同じに見えるんだよ。「よく毎月同じもの買うね」と言います。いやいやいや、違いますから。中は違いますから。それぐらい一般の人が見ると、何見ても同じに見えるんだよね。そういうことを、艱難辛苦を乗り越えて・・・・・・今があるわけですよ。

【江上】 そうなんです!



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HO車両はN(ゲージ)と違って、ポイントを渡る時に「ガチャ、ガチャン」とシズル感のある音がするよね!

【阿部】 で、ま、何とかちょっと自分の部屋に聖域を作ってさ(笑)・・・・・・これも最近、とやかく言われていて、「あれだけ占拠しているんだから、違うベッドルームにしたい」とか、女房はわけのわからないことを言っているわけですよ。それで今、うちに出入りしているリフォーム業者にそんな相談をしているらしくて、僕はその作業の人から「奥様からそんな話を聞いてますけど」みたいな。俺は聞いてねえな!みたいな(笑)。とにかく幅をとるのよ、鉄道趣味は。場所をね。

【江上】 とりますよね、幅問題。

【阿部】 やっぱつらいよね。

【江上】 ちなみに、阿部さんなら、時代的にはHOゲージですよね?

【阿部】 そう。だから、やっぱり大きさがないとね。

【江上】 家からはみ出すくらいに・・・・・・(笑)。

【阿部】 HOゲージは実際の大きさの80分の1。一方、今主流のNゲージは150分の1ということになってるんだよね。だから、HOなら面積でNの約4倍、体積で約16倍になるから、”塊”感としては全然違うよね。それとHOがNゲージと一番の違うのは走行音ですよ。Nは小さくて車体が軽いから、「シャーッ」という音がする。それと比べると、ブラス製のHO車両だと、ポイントを渡る時に「ガチャ、ガチャン」と音がするとか。そういうシズル感があるんですよね。

【江上】 あー。でも、僕も時代的にはHO主流でしたが、高くて買えなかったですよ。特に天賞堂製の蒸気機関車なんて、当時の小学生のお小遣いからしたら雲の上、大気圏外!ギリギリ届くかも?と思えるのが、宮沢製のC58か、カツミ製のダイヤモンドシリーズ・・・・・・6000円台くらいで。結局、僕自身はお年玉を貯めて1800円の自由形タンク機関車を買うのがやっとでした。

【阿部】 天賞堂ね。天賞堂ブランドというのがあって、やっぱり高いんだよね(笑)。

【江上】 しかし、阿部さんのように拘りを持ってHO車両を見ていくと、大問題にぶち当たりませんか?・・・つまり80分の1なのに、線路幅が16.5mm。

【阿部】 あ、痛いところを! そこをつかれると一番悲しいところになるわけですけど。

【江上】 HOゲージは、車体の縮尺と線路幅の縮尺が違う・・・・・・。

【阿部】 違うんだよ。

【江上】 国鉄〜JRが在来線で採用している線路幅は1067mm(狭軌)。これを80分の1の縮尺にしようと思うと、13mmが適正なゲージ幅になる。しかし、HOゲージの線路幅は16.5mmと決まっている。80分の1の車両が、16.5mmゲージを採用した結果、日本の鉄道模型は全部“がにまた”になっちゃった。そういうことですよね。

【阿部】 しょうがないよね、16.5mmはHOゲージの国際規格だから。でも、がにまたが嫌で3.5mm分、車輪の幅を狭める人もいますよ。改軌キットも売っているんで。手先が器用で工作力がある人で、我慢できない人、完璧主義者に関してはそういう人もいる(笑)。ヨーロッパのHOは87分の1で16.5mmの軌道を走るから、これはファインスケールなんだね。それが日本に入ってきたときは、16.5mmの軌道が最初に来ちゃったから、便宜上、合わせるために、レールの幅じゃなくて、車体を少し大きくしないといけないというんで、車両のほうが80分の1になってるわけ。じゃあ、80分の1の車両で16.5mmを履くと、レールばっかり広いから“がにまた”になっちゃう。そこは鉄道模型をやっているヤツの一番のウイークポイント!

【江上】 うーむ。・・・・・・ということでふと気づいたんですが、そろそろ映画の話に行かないと!(笑)

【阿部】 お、そうだった、そうだった(笑)。


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あれ、日立製の2号機ですよね。それをわざわざ川崎車輌製の22号機に化けさせて!

【江上】 今回プロデュースされた『RAILWAYS』のお話に行く前に、まず『ALWAYS 三丁目の夕日』のお話をお訊きしたいんですよ。あれ、鉄道映画としてすばらしすぎます! その意味でも画期的な映画でした。

【阿部】 あ、わかってくれましたか。

【江上】 そりゃわかります! これは相当鉄道好きな人が作った映画なんだなと。

【阿部】 そう! 日本映画って、これまで鉄道の撮り方がなってなかったの。

【江上】 ですよね!

【阿部】 映画関係者には、車両に入っている「モハ」とか「サハ」とか書いてあるのを、フィーリングで書いているんじゃないかって人もいるぐらいで。

【江上】 それ最悪ですね。

【阿部】 それで、僕が映画を作る時は「それは違うよね?」から始まって。鉄道の撮り方が非常に軽んじられているんですよ。

【江上】 そうなんです。かなりお金をかけた映画でも、鉄道の場面が出てくると急に冷める。

【阿部】 冷める! 日本の映画の鉄道シーンで一番の問題といえば、蒸気機関車の撮影。撮ろうと思った時に今も常に動かしているところはそんなにないんですね。撮影が非常にしやすいところとなると、もう大井川鐵道しかないんですよ。

【江上】 そうですね。ただし架線の下を、ですが。

【阿部】 知ってますねぇ〜(笑)。架線の下、それもC11というですね、人を運ぶような蒸気機関車ではない、スイッチャー用のもうちっちゃい機関車なんですよ。

【江上】 必ずあそこが使われますよね。

【阿部】 『ALWAYS』を撮る時も自動的にそこで、となっちゃって。僕が「何撮るの?」と聞いたら、ラインプロデューサーが「六ちゃんが上野駅に着くシーンを撮ります」と。「おまえはバカか!」と言いました。

【江上】 わー。

【阿部】 「蒸気機関車にも格があるんだ」と。C11は嫌いじゃないけど、遠く青森から集団就職の列車を、C11が引っぱってくるわけがない! 社長のクルマを用意するのに軽自動車を持ってきてどーすんだ! 蒸気機関車にも格があるんです、と。「じゃあ、どうすればいいんですか」と聞くから、「どうすればいい、じゃなくて、C62じゃなきゃだめです!」と。

【江上】 すばらしい!

【阿部】 じゃあC62にしましょう、どこにあるかといえば・・・・・・

【江上】 動態保存してるのは梅小路ですか?

【阿部】 そう! 「梅小路で撮りゃいいじゃんか!」と。

【江上】 僕、あの列車が上野駅に入ってくるシーンはほんっとにびっくりしたんですけど、それまでの日本映画のように、てっきりいい加減な保存蒸機のどれかが現れるんだと思ってましたから。そしたら、入ってきた機関車がC62! それも22号機!

【阿部】 そうだよ。上野駅には22と23しか入ってないんだから。

【江上】 尾久機関区所属の22号機!川崎車輌のメーカーズプレートもそのまんま!

【阿部】 でも、梅小路に実際にあったのは22号機じゃなくて2号機ですから。

【江上】 あれ、日立製の2号機ですよね! それをわざわざ川崎車輌製の22号機に化けさせて!

【阿部】 22号機のナンバープレートを貼って。しかも、2号機のシンボルでもあるスワローエンゼルを消していますから。

【江上】 消しているんですね、いやぁ〜、すごかったです。ROBOT制作と言うこともあって、すべてCGなのかとも思ったし。どうやって撮ったか全然わかんなかったですもん。

【阿部】 あそこは完璧に。「これ、見る人は絶対に見るから。見る人が見たら感激するに違いない」と。それでね、最後に一か所だけシャレで、「ニセコ」を牽いていたときの副灯だけ残したの。あれは本当は単灯なんだけどね。いや〜、がんばったね、俺も(笑)。

【江上】 あの場面は阿部さんが現場指揮、集中演出みたいな感じだったんですか?

【阿部】 いや演出したのはもちろん監督の山崎(貴)くんなんだけど。美術担当かな(笑)。上野駅も相当こだわったからね。

【江上】 上・野・駅!! すごかったですね〜。

【阿部】 看板ね。何時発のどこ行きの列車が何番線から発車するという看板が昔はあった。

【江上】 完全に再現してましたね。ちょっと感動しました。


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『ALWAYS 三丁目の夕日』を2本作って思ったのは、映画って1分の1の模型なんだよね、世界の。

【阿部】 でも、それがやりたかったわけじゃなくて、そういうディテイールが大事であるということで。

【江上】 そうです、そこをおざなりにしていないから、映画全体がちゃんとしている。

【阿部】 そう、ちゃんとしないとだめなんだよ。

【江上】 もうひとつ、スゴいなと思ったのは、都電の色ですよ。『ALWAYS』の『1』と『2』を見て・・・・・・西岸良平さんが原作漫画で描いていたのは、黄色に赤の都電じゃないですか。

【阿部】 通称:金太郎ね。

【江上】 でも『1』の時は緑とクリームの都電が走っていて、『2』では緑&クリームと金太郎カラーが混在して走っているでしょう? 都電の色分けが変わったときの過渡期がちょうど『2』の時代なんですよ。昭和33年はこっちで、昭和34年はこうだ、とやっている。ふつうはそこまでやらないですよね。

【阿部】 やりたかないよ(笑)。でも、「やる」というのはそういうことだからね。

【江上】 そこがもうスゴいなぁと思いまして。

【阿部】 でも、アメリカの映画を観てごらんよ。時代の再現は完璧ですからね。こんなことで大騒ぎしてないもん、普通だから(笑)。日本の映画をそれくらいにしたいんだよね。これくらいは普通にやっていかないとさ。

【江上】 ああ〜。

【阿部】 『ALWAYS』を2本作って思ったのは、『ALWAYS』って、実は1分の1の模型なんだよね、世界の。

【江上】 夢ですね、モデラーの。

【阿部】 だから模型の世界に入ってる感じがした。ところが、あの映画にはものすごいウソが一個あって。わかります?

【江上】 なんでしょう・・・?

【阿部】 あの映画を観て「昭和33年、懐かしいね」ってみんな言うじゃないですか。でも、当時、今から観た昭和33年のエージングをされているわけではない。

【江上】 あーっ!!

【阿部】 鈴木オートが、あの時代にあんなに古いわけないだろうと。新品だろう?と。看板に錆が出ているわけがないじゃん。昭和33年を再現して昭和33年を撮ったのであれば。そこが1分の1の模型、ってことなんです。リアルな昭和33年だったら、どこもかしこもみんな新品のはずなんですね、実際は。だからあれは全部ウソ。今から見た目線でやっている。

【江上】 あー、おもしろいですね。・・・・・・というところで、ようやく話は、”ここまで鉄道にこだわって作ってらっしゃるプロデューサー”の新作映画、『RAILWAYS』なんですが(笑)。

【阿部】 それです!


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いくら映画の撮影とはいえ、本線上を素人がほんとに運転するわけにはいかないのでは?

【江上】 今度はもう鉄道自体にぐっと寄ったお話ですね。

【阿部】 日本には、赤字路線で、国からの補助でなんとかやっている電車があって、それを題材に映画を作りたいとなった時に、一畑電車・・・通称バタデンという、島根のすごくいい風景を走っているものがあって。ここには、昭和3年にできて80年間走ってきた電車もあるんですよ。デハニ50形といって・・・・・・確か、去年で現役を終わったのかな。

【江上】 そうですね。

【阿部】 リストラされた人が故郷に帰って電車の運転士になったという、人生のポイントを切り替えるというテーマとしても、まさに映画的な実話があって、それを映画にしようということになったんです。それにしても、これは本当に電鉄会社が全面協力をしてくれないとできなかった企画なんですよ。鉄道というのは非常に緻密なダイヤの中で運行されているでしょう? そこに撮影用のダイヤを組み込むっていうところから始まるわけですよ。ダイヤを組み立ててくれる係の人がいて、前々日くらいに撮影するダイヤを作っていただいて。それが一番たいへんだったんじゃないかな。

【江上】 これはまた鉄道ファンにはたまらないシーンが数ある映画で・・・・・・特に、中井貴一さんが実際に電車を運転しているとしか見えないシーンはすごいですよね!いくら映画の撮影とはいえ、本線上を素人がほんとに運転するわけにはいかないのでは?と。

【阿部】 あれはCGじゃないか、と試写を観たある方に言われて、「ありがとうございます、うちの技術でやりました、CGです」と(笑)。いや、実際はCGじゃないんです。いろいろと想像してみてください(笑)。ダイヤを組みかえて、電車を実際に動かすこともやって、場所場所で撮影していったのですが、やっぱり鉄道なので非常に危険も伴いますしね。

【江上】 そうですよね。

【阿部】 デリケートな撮影をしてたんだけども、天候にも恵まれて、ほとんどきれいな絵が撮れた。

【江上】 そう、抜けがすごいきれいな映画なんですよね。

【阿部】 そうですね、きれいなんですよ。

【江上】 きれいといえば、最後の画面の奥に向かって走るバタデンを後ろから捉えたカメラがぐわーんと空へ上がっていくところ! 空撮だと思うんですが、あれは最初からラストにはあの感じでというのがあったんですか? テツ的には・・・・・・ああいう画面は自分じゃ撮れないじゃないですか、夢が叶ったみたいなアングルだったんですけれども。

【阿部】 あれは見事だね。CG合成に見えるでしょ? 

【江上】 CGじゃないんですか?

【阿部】 違うんだよなぁ〜。この映画はCG合成は一か所しか使ってないんですよ。どこかわかる?

【江上】 オープニングで車内に真横から光が入っているところ! 神々しいくらいにきれいでした。

【阿部】 違います。あれは千載一遇の奇跡のショット(笑)。正解は中井さんがですね、京王電鉄で車両点検の訓練する場面。

【江上】 え!? 「識別灯点灯異常なし」なんて指先確認の訓練をする場面ですよね?

【阿部】 あれ、季節的に冬なんですね、映画の中では。

【江上】 ああ、はいはい。

【阿部】 だけど撮影は真夏なんですよ。だから中井さんの口からCGで白い息だけ出してます。

【江上】 ぬおー、なんたるディティール!!!

【阿部】 あそこだけ!


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テツとしても、人としても、中井貴一さんの台詞にグッと胸をつかまれまして……

【江上】 その京王電鉄の訓練シーンですけれども・・・・・・京王電鉄はやっぱり撮影に協力的な会社なんですか。

【阿部】 うん、それに一畑電車と京王電鉄は非常に仲がいい。京王線の車両が一畑電車に行って使われていて。

【江上】 あ。でも、それこそ線路幅が違いますよね?

【阿部】 だから足回りだけは地下鉄から持ってきている。 

【江上】 最初に話した鉄道模型の“がにまた”の話みたいに?(笑)

【阿部】 それに近いものがあるんですね。京王電鉄というのは、標準軌(1435mm)でもなければいわゆる狭軌(1067mm)でもなく、ちょうど中間の1372mm幅なのね。それはなぜかというと・・・・・・都電の幅なんです。もともと本来が都電のレールの延長線上にあるので。

【江上】 はー、そうか!

【阿部】 バタデンはバタデンで、いわゆる国鉄〜JRと同じ1067mmってことだから、ゲージが同じ地下鉄日比谷線の台車を持ってきて、上とドッキングさせてると。

【江上】 あぁ、そうなんですね。勉強になります。バタデンは乗ったことがあるんですけど、そこまで考えませんでしたね。・・・・・・いやまた話が映画から脱線してる、幅の話に(笑)。そろそろうまく話を締めないといけないんですけど・・・・・・中井貴一さんが奥さんにいう、「やっと僕の電車に乗ってくれたんだね」というセリフ、あそこで一気にグッと胸をつかまれまして。テツとしても、人としても。

【阿部】 あれ、いいよね。実際、“俺の電車”じゃないんだけどね(笑)。俺のクルマって言うならわかるけど(笑)。でもまぁ、この映画を象徴するいいセリフができたなと思って。なんだかんだ鉄道映画といっても、鉄道映画じゃないですから。やっぱり人間ドラマじゃないですか。“俺の人生の終点まで乗っていってくれるよな”、みたいなところで。

【江上】 そうなんです! 我々、そういうことを声に出して言ってみたいわけで(笑)。テツ代表として中井貴一さんが言ってくれたみたいな気持ちになりました。一畑口駅のダブルクロスがカチャンというところもしびれるんですけど、一畑口駅をあまり大々的に使っているわけではなくて、意外とさり気にやっているじゃないですか。そこがまたうまいんですよね。だから、テツはテツで「俺だけわかった感」みたいな喜びがあり、テツじゃない人は物語に素直に感動し・・・・・・、

【阿部】 鉄道の魅力も持ち帰ってくれる?

【江上】 そんな映画だと思います。

【阿部】 そういえば、現場スタッフはとりたてテツってわけじゃなかったんだけど、やってるうちにどんどん鉄道好きになっていったもの。こっちは「へぇ〜」みたいな感じだったんだけど。

【江上】 さらには、女性(女房)にも鉄道の魅力が伝わっていく映画なんじゃないかと思います!

※この対談の別ヴァージョンがただいま発売中の『月刊IKKI』7月号に掲載されてます!

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1949年8月7日、東京都生まれ。1962年、ボンネット型の車両「とき」に乗ったことがきっかけで鉄道好きになる。子供の頃の夢は「寝台列車の運転士」。1974年、第一企画(現アサツー・ディー・ケイ)に入社。CMプランナーとして活躍。 1985年、36歳で退社し、映像クリエイティブ製作会社ROBOTを設立。1995年、『Love Letter』で映画界に進出。ROBOTは、『踊る大捜査線 THE MOVIE』『LIMIT OF LOVE 海猿』など日本映画の超大作を次々に産み出す。2005年、『ALWAYS 三丁目の夕日』が日本アカデミー賞を受賞。2006年、日本映画テレビプロデューサー協会が選ぶエランドール賞を受賞。2010年、この7月から映画企画製作会社、株式会社阿部秀司事務所を設立。


1958年12月5日、神奈川県生まれ。1963年頃、鉄道の町・大宮で過ごしたことをきっかけに鉄道好きになる。子供の頃の夢は「鉄道模型屋の店主」。1982年、小学館に入社。2003年、『月刊IKKI』の創刊編集長に。『月館の殺人』『鉄子の旅』『阿房列車』など、“テツ編集長”との別名を得て、趣味と実益をかねて鉄道漫画を次々に世に送り出している。2009年、鉄道写真界の最高峰、広田尚敬氏の60周年記念出版企画『Fの時代』を発刊。スイッチバックへの愛を綴るHP「I LOVE SWITCH BACK」も今や30万ヒットを超える。
 


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