STORY
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森雪之丞

探し続けていたのか?
逃げ回っていたのか?
華氏77°の空港で虹を見つけた朝も
霞という町の路地で息を潜めた夜も
旅の途中だった

何処へ行こうとしたのか?
何処へ行っても其処がまた此処になる
その騙し絵の中で生きて死ぬのが
人だと言うのに
なぜ旅に憧れる?
晩秋の月はさめざめと青く
地面を濡らす寡黙な影が
男の背中に翼が生えたことを教える

翼…
何処にも行けない旅人を見兼ねて
神が与え給うた奇蹟
男は笑う
飛び方を知らずに翼を持つこと
そいつは
叶え方のわからない夢を
抱え込んできたことと
何が違うと言うんだ

無意味な分 翼は重い
囚人が引き摺る鉄球のように重い
歩き疲れ 其処が此処になり
十一月の闇が朝の気配に溶かされた頃
旅人は気づく
空は飛べなかったが
初めての町に 辿り着けたじゃないかと

光に震えて 翼が少し拡がる
役立たずのくせに
なぜか自慢気に








森雪之丞

見えない翼で飛べるのは
心の空だけです
流れ星が欲しくて
ビルの屋上からジャンプする行為は
危険ですのでお控えください
くれぐれも

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