STORY
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森雪之丞

やがて雨が雪に変わると
あなたは睫毛を街燈に向け微笑む
またひとつ
世界の秘密を見つけたように

そんなとき私は
空気として吸い込んでいた言葉が
感情の輪郭を現すのに気づく
あわく いびつに ずっしりと
それは二月の
文学
物語が舗道に降り積もる

そうだったものを
そうだと言い直したり
見えないものをあると
言い切ったり
言葉にならなかったものを
やはり言葉にできなかったり

いつしか私は
二月の文学にとじこめられる
凍った唇への驚きと共に

千あるものを一文字で
言いくるめたり
一つしかないものを
千の比喩で言い落したり
言葉にならなかったものを
もう一度言葉にしようとして
私はまだここにいるのだろう
あなたと この世に
この夜の隅に








森雪之丞

旅をしていると
きまって
家を思い出してしまうのは
どういうわけだろう
もう帰らないつもりなのに

わたしの旅は壮大で
すべてを奪い去って
しまうような青空と
惚れ惚れするほどの孤独が
いつもそばにいます

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